表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界禅僧はとりあえず坐る  作者: ホゲファイブ
教皇編 ― 超越か実存か
PR
36/94

第36話 思考が読めない

「方法は違いますが、女神様にお祈りしたときと同じような清々しさを感じます。こういった小さい感情のプラス効果は、積み重なれば無視できないことです。きっとあなたの信仰する神も、このようなささやかな恩恵を恵んでくださるのでしょうな」


「いえ、我々の持つ仏法では特定の神を信仰することはありません」


「……『神』、という名で呼ばれていない、ということですかな?」


「釈尊や、釈迦牟尼仏しゃかむにぶつと呼ぶ対象を信仰します。しかし、絶対的に従う対象というより、我々の教えを最初に開いた師、として尊敬する対象です」


「……ではあなたは何にひざまずき、赦しと救いを得ているのでしょうか?」


「ひざまずくというニュアンスとはやや違いますが、拠り所にするという意味であればなんらかの存在ではなく、あくまで『法』ということになるでしょう」


……それは宗教なのか? 私はこの男を宗教家、もしくは詐欺師だと判断していたが、法を拠り所にするということは、法律家か裁判官のような者なのだろうか?


「法に依る、ですか。それでは、我々の祝詞のりととは比べものにならないほど、大量の書を勉強しなくてはなりませんね」


「確かに経典は大量にあります。私の世界における他宗教よりも種類は膨大でしょうね。しかし、我が宗派では、なにより坐ることを重視します」


法に依るのに最も重んじるのが坐るだけ……? 真逆ではないか。それともこの男、私の理解に追いつかない超越の先が見えているのか?


「いやはや……私の不勉強が原因で、なかなかに理解が難しいようだ。より詳しく説いていただければ、分かるのかもしれないが」


「言葉や経典で語る立場はありますし、否定しません。しかし我々の宗派では、言葉で説明できることに限界がある、といった立場です。だから坐るのです」


……「交渉」するまでいかずとも、三代目勇者が何を考え、どのように二代目勇者を動かすのか、今日掴むつもりだった。


われわれ教団にとって問題ない方向であれば、無理に事を荒立てる必要はなし。


問題があっても、我々がとりこめるようなら、思想を誘導して教化。それが叶わず、神託が『純粋すぎる』場合は――最も過激な選択肢を取らざるを得ないだろう。


そのためにも、彼の「思想」はぜひとも明らかにしておきたかった。しかし、思ったより「読めない」。


思い切って最も過激な選択肢をとるか? いや、リスクを冒すには早い。急がず、今日は一旦引くか――


そんな思いを巡らせていると、彼が突然言った。


「ところで、あなたがたは『人間による統治と繁栄』に重きを置いていると女神から聞きました。これは女神教として間違っている、とは本人の弁ですが、部外者たる私にどうこう言えることではありません。しかし、それが『反するものを屠る』ことに繋がるのであれば、それは少なくとも仏法とは相容れないものです」


――どうやら、穏便な選択肢は取り難いようだ。私は貼り付けた笑顔を崩さぬよう、彼に続きをうながした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ