供物はほうじ茶が望ましい
「久しぶりですね女神様。前回会った時より背筋が立っていて喜ばしい限りです。で、一緒に坐りたいから呼んだのでしょう?」
「違います!」
違うのか。
「……では先にお茶でも飲みながら話しますか」
道安は懐からほうじ茶(仮)を取り出す。
ある農夫と山に入ったことで見つけたチャノキのような茶葉を干して炒ってみたら、そこそこ似たものができたのだ。
このほうじ茶(仮)を嗜んでから比較的経つが、とりあえず私も農夫もピンピンしているので、女神に振る舞っても問題なかろう。
「ホージチャ!」
先程までプリプリ怒っていた女神が目を輝かせて駆け寄ってくる。
神を名乗っておきながら俗だな。しかも趣味が渋い。道安は、内心苦笑したものの、素直に嬉しかった。
最初に会った頃、女神はほうじ茶を喜んで飲んでいた。
それを覚えていた道安は、いつ呼び出されてもいいように、ほうじ茶を常に袖の中へ入れておいたのだ。
「供物のごちそうに文句はないんですけど、女神教の飲み物って基本的に真水が推奨されるから、他の飲み物がこないんですよー」
「私の宗派でもお水を供えますが、お茶もよくお供えしますね。個人的にお供物が相手に届くかは疑問視する立場ですが、そりゃおいしい飲み物を飲みたいですよね」
「うらやましーです!」
「あ、でもお肉やお魚、匂いの強い野菜はダメですよ。せっかく仏様のお弟子になったのに、修行の妨げになっては悪いですから」
「あ、やっぱり結構です……」
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「話が逸れましたが、勇者としての使命、お疲れ様です」
「私はただ坐っているだけですが。異教徒の教えでも、間違った方向ではないようでなによりです」
「はい。私たちの教えは少なくとも異教徒を排除するようなものではありませんから……でも先日教団から、本格的にあなたの調査をするとの連絡がありました」
「連絡……案外きっちりとした縦社会なんですね」
典型的社長椅子に座る女神の姿を想像する。似合わない。間違いなく、豪華な椅子より畳がふさわしいだろう。
「祈りの形で私に届くのですよ。『こういうことをするから、見守ってください神様』みたいな願掛けをすることはあなたの世界でもあるでしょう?」
「確かに私たちも誓願といって、実行を伴う誓いをたてることがありますね」
「同じです。私が直接会話できるのは勇者だけですが、祈りを通して女神教徒の動きはある程度分かるのですよ」
思っていたより外部から入ってくる情報が限られていそうだ。退屈ではなかろうか。
「退屈ならいつでも私を呼んでくださいね。退屈とはもともと仏教用語で、修行の苦しさに屈して教えから退くことを指します。修行は一人より二人のほうが望ましい。とりあえず、是非一緒に」
「ハイ、坐りましょうはストップ。気持ちは嬉しいですが、話を逸らさないでください」
冗談ではないのに。
「……現在の女神教を、危険とは言いません。でも正直、女神である私の向いている方向と、現在の女神教の向いている方向は違うのです。今回は特にそのことについてお伝えしたいのです」




