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異世界禅僧はとりあえず坐る  作者: ホゲファイブ
幕間 — 「喝ァツ!!」
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私は嬉しかった。彼らの明るくなった顔を見て、やはり仏法は人を救うものだと確信した。


彼らは人を殺す仕事をしていた。彼らのほとんどは「命令」によって動いているとはいえ、彼らの目的は確かに人を殺すということだった。


女神にこの世は戦の世だと説明され、王に導いてほしいのは軍だと明言され、兵が持つ矛を何度も見たのに、それに気が付いたのは実際に動いている軍を見てからだった。


私は耐えきれない後悔に襲われた。一人一人は救えたとは言わずとも、確かに良い方向に向かっている。しかし、全体が向かう先は戦争だ。一個人ではない、集団としての欲の象徴だ。


その晩、私は軍全員を集めて大声で伝えた。


「明朝、私は諸君らを連れて山へ登る! そこで山門を築き、僧堂を築き、 『本当の修行』を行う! 諸君らが本当に戦うべきは諸君らの中に巣食う執着だ! まずは友を捨て、家族を捨て、国を捨ててもらう! 独立して国へケンカを売るわけではないんだ、武器は全て捨ていけ! 着いてくる気のあるやつは全員頭を剃ってこい! 以上! 喝ァツ!!」


そうは言っても、ついてきてくれるな、と思う心もあった。真に導くのであれば出家した方が良いのは事実だが、正直に言えば、私は逃げ出したかったのだ。


王に話を通してはいない。独立を企てたとして殺されてもおかしくない。一人で逃げればいいものを。でも、なぜか私は募ってしまった。あれだけ自分を丸裸にする修行をしてきたのに、なぜだかは分からなかった。


しかし、明日、予想よりも遥かに多い、頭を剃った兵士が私の目の前に現れた。私に縁を感じたのか、仏法が自身の信じていたものより尊いものと理解してくれたか、私と同じく何かから逃げ出したかったのか――


彼らとともに、王に何も言わず、勝手に山へと登った。追手は来なかった。理由は分からないが、とりあえず山門を築き始めた。


チリリン。

チリリン。

チリリン。


本日も通過した者はいない。理屈で語る者、経験で語る者、あてずっぽうな者、なにも考えていない者。しかし程度の差はあれ、今の私ほどぐにゃぐにゃな者はおらず、皆まっすぐに思えた。


「喝ァツ!!」


誰も居ない部屋で一人叫ぶ。


これで良かったのか。過去を振り返ることは禅で戒められる。今この瞬間に最善を尽くす当下が大切だ。


私がなにもしなくても、戦争は止まらないだろう。私の力で戦争を止められると思いあがるなどおこがましい。でも、あのとき……こうしていれば……


「喝ァツ!!」


誰も居ない部屋で一人叫ぶ。


「今ここ」に引き戻すために。


形は彼らの師なのかもしれないが、まだ私は修行僧のようだった。

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