Eランクダンジョンボス「バブルマン・クラブ」 前編
「ヒーリング!」
「す、すまない、桃ちゃん」
(こんなゴミ回復しなきゃいけないなんて、めんどくさ……)
五十嵐の回復魔法により、長谷川パーティーを回復していく。
ヒーリング 消費MP6
味方1人のHPを回復。クールタイム3秒。詠唱時間3秒
空中に漂う泡が、五十嵐へ吸い込まれるように迫る。当たった瞬間、ぱしんっ! と大きな音と共に弾け、周囲へ水属性のダメージを与える。
「っ、すーくんのスーパーアーマーが……」
スーパーアーマーによって守られているとはいえ、被弾すると詠唱がキャンセルさせる。中々に面倒な攻撃であった。
泡という弱弱しい見た目とは裏腹に、それなりのダメージ量が入っている。
HP689/689
スーパーアーマー 127/172
バブルマン・クラブ――その名前の由来ともなる厄介な技「バブルトラップ」は口から泡を吐き、ダンジョンフロア内へ大量の泡を撒く。この泡はなにかに当たると、水属性によるダメージを周囲へ与える。武器で破壊すれば大抵はその攻撃範囲に巻き込まれるため、攻撃による破壊は遠距離攻撃のみ有効だ。
そしてこの泡は動きこそ遅いものの、しっかりと近くの敵へと接近する。それでいて数が多いため、距離をとって逃げていても泡に追われる。この戦いにくさがバブルトラップの強みだ。
さらに泡はバブルマン・クラブに対してはノーダメージである。
工藤救出のため、前へ駆ける武宮へ2つの泡が立ち塞がった。
武宮は速度を緩めないまま、左腕を前へ突き出す。
「これが噂のバブルトラップ……けど、今の俺には遠距離攻撃がある! トレースアーツ、起動――ホーリーツインバレット!」
2つの魔法陣から素早く放たれた、光の弾丸が2つの泡を撃ち抜く。ぱちんっ! と泡は弾けて消えていった。
そして工藤の元へと駆けつけ、リザレクト・ポーションをかける。透明感のある魔力の水は工藤の体に落ち、すっと彼の体内へ吸い込まれていった。
中身が空になり、工藤の光が一瞬だけ緑色に光る。
「――げほっ、がはっ! っ、武宮か……?」
「生きているみたいだな。回復しながら、下がってくれ。桃を守ってほしい」
「けど、お前は」
2人の元へ近づいたバブルマン・クラブが、右腕の畳んだハサミをハンマーのように振り下ろす。
武宮は両手で支えた斧の真ん中でそれを受け止めた。どごおおおおっ!!! と、周囲へ凄まじい衝撃が走る。
ぎぎぎぎぎ、と、踏ん張る力と押し込む力がせめぎ合った。どっしりとした重み。バブルマン・クラブは武宮を潰そうと、真正面から力で対抗した。
「す、すげぇ、あのバブルマン・クラブとパワーが互角……!?」
「早く!」
「あ、ああ! ……クソ、今のオレじゃ、足手纏いか」
工藤が泡を避けながら、後退していく。
そこへ長谷川が、大声を上げて武宮へ警告した。
「武宮 昴! 君には無理だ! その動きを見る限り、思ったよりはやるようだが、工藤と同じようにすぐ限界を迎える! バブルマン・クラブはとにかくパワーが高いんだ! 工藤はハサミに挟まれて身動きが取れなくなり、すぐにやられた!」
(ハサミ……なるほどな!)
ものすごい重量感のある右腕に押し込まれながらも――斧を思いっきり振り上げた。
「うらぁ!」
押し合いは武宮が制し、バブルマン・クラブがよろめいた。前へ踏み出し、距離を詰めようとする。しかしその瞬間、空中から漂った泡が行く手を阻んだ。
「邪魔だ!」
トレースアーツ、ホーリーツインバレットで撃ち抜く。しかしその間にすぐさまバブルマン・クラブが体勢を立て直し、距離を詰めてきた。リーチに入り込まれる前に、さらにトレースアーツを起動させる。
「――ステルス!」
「っ!?」
突然姿を消した武宮に、バブルマン・クラブが困惑したようにその場でキョロキョロする。武宮はバブルマン・クラブの右側へ周り、その右肩へ向けて斧を振り下ろした。
「くらえ!」
がぎぃんっ! と重い一撃が右肩へ入る。バブルマン・クラブはくぐもった悲鳴を上げながら、左腕を前へ突き出した。ハサミが開かれている。
「げっ……やべ!」
後方へ素早く跳躍。お腹のすぐ前のところを、ハサミの刃がちょきん! とするどく横切った。あと少し飛ぶタイミングが遅れていたら、捕まっていただろう。
そしてもう一つ、気になることがある。
残りのMPが、早くも72しかないのだ。せっかく習得したステルスは消費MP50なので、あと1回しか扱えない。
(MPがカツカツだな……! どっかで回復したいけど、マジック・ポーション飲んでいる隙も与えてくれなそうだ……!)
バブルマン・クラブは完全に武宮へ標的を向けている。
「グブブブブっ!!!」
湿った鳴き声を上げながら、重い右腕を振り下ろしてくる。戦いは互角であった。武宮の斧とバブルマン・クラブの腕が交じり合い、がきぃん! がきぃん! と、激戦を繰り広げる。
「……武宮」
工藤が五十嵐を泡から守りながら、戦いを見守る。回復役の五十嵐を守る……という役割は、体の良い話なんだと、自分を責めていた。
(お前に二度も助けられて、役立たずかよ……! くそ。同じ男として、情けなさすぎるっつーの!)
対して、長谷川パーティーの3人は茫然としていた。目前に迫った死が奇跡的に遠ざけられたかと思いきや、突如現れた武宮が1人でバブルマン・クラブと激闘を繰り広げたからだ。泡から身を守らなければいけないのだが「あぁ……」「私達の今までの旅は……一体……」「嘘だ……俺達が、チートのはずじゃ……」と、なにやら嘆いている。
そんな中、長谷川だけは違っていた。
「そうか……そうだったのか……!」
爛々と輝く瞳で、武宮の戦いを見た。
「あいつは、こちら側だったのか。あれは……いつか僕がなるべく姿! ふっ、なんと良い刺激! 有益な時間なのだ!」
そんな中、五十嵐だけが首を横に振った。
「ダメ。このままじゃ……」
工藤が近づいて来る泡を警戒しつつ、歯ぎしりをした。
「バブル・トラップか……オレもあれで怯んで……」
「戦っている間にも、泡が迫っている。これ以上の余裕は、すーくんにはない……」
互角かと思われた戦い。泡はある程度バブルマン・クラブの意志によって動かせるのか、露骨に武宮の元へ集まっている。そして五十嵐の懸念通り、泡ダメージによって武宮の動きが鈍る。
「うっ!」
そこへすかさず、右腕による強烈な払いが入る。武宮の体はボールのように吹き飛び、ボスフロアの壁に激突した。スーパーアーマーが弾け、転がっている間にも泡へ襲われ、大きなダメージが入る。
「がっ、はぁっ!」
五十嵐がすぐさま回復魔法を唱え、HPを回復。しかしそこへ畳みかけるため、バブルマン・クラブが距離を詰めて来た。
床へ落ちた体勢を整え、斧を持ち瞬時に立ち上がる。だが、動作がほんの少し遅れたことにより――バブルマン・クラブが真っ直ぐに伸ばした左腕に、対応が遅れた。ハサミは開かれている。
「うおっ!? くうううっ! そんな簡単に捕まってたまるかよ!!!」
武宮は両腕を広げ、迫るハサミの刃を手で受け止める。しかしその閉じるパワーは凄まじく、ぎぎぎぎぎ、と少しずつ狭まっていった。
タイトル変更しました。
また変わるかもしれません。
迷走中です。
読者様増やしたいので(直球)。




