おっぱい大好きゴブリンくん
室内は青い壁と床、天井が広がる無機質な遺跡であった。武宮達の背後には壁が広がり、目の前には一本の通路が道として伸びている。
メニュー画面を開くと、制限時間の1時間が精密なペースでカウントされ、数字が減っていく。
「俺が前に出るから、桃は少し下がり気味でついて来てくれ」
「うん」
通路を進んでいく、途中でY字に分岐している。
地図の類はないので、直感で右に曲がり進む。
するとその先で、待ち構えていたかのように、4体のゴブリンが現れた。
「ゴブゥゥゥゥッ!!!」
痰が絡んだかのような、湿った声。
細めの体格で体長は1メートルほど。下半身が特徴的で、四つ足であった。肌の色がそれぞれ違い、赤、青、黄色、ピンクと四色である。右手には短い金属の棍棒が握られている。
「うわぁ……4つも足あるなんて、気持ち悪さ倍増……」
ゴブリン系列が苦手な五十嵐は、嫌そうな声を上げた。
しかもこの四つ足ゴブリン……というか、ゴブリン系列は時折そういった方向性のタイプがあるのだが。人間の女性……それも、この四つ足ゴブリンは「胸の大きい女性」を好むというアホみたいなネタ性質が備わっている。
ゴブリン達の視線が、五十嵐の胸へスライド。
ぼよよよーん! と、Hカップという彼ら好みの巨乳が視界に飛び込んだ。
「「「「ゴブブブぅぅぅ~~~~~~♥」」」」
たちまち四つ足ゴブリンの目がハートマークになり、五十嵐目掛け……というか、五十嵐のおっぱい目掛け、その4つ足をバタバタバタっ!!! と、元気よく前へと運んだ。
心なしか……4つ足ゴブリンは、股の部分を隠している黒いブーメランパンツの形をした布を穿いているのだが、もっこりしているように見えた。
ナニが盛り上がっているのか。それは誰にもワカラナイ。
五十嵐は顔を青くして、戦慄した。
「ひいいいいいいいいいっ!? すすすすす、すーくん!」
「あ、ああ……任せろ……」
反応に困る事態に苦笑いをしつつ、武宮が前へ。
「ゴブっゴブっ!!!」
邪魔すんな! おっぱい揉ませろ! 〇〇〇〇〇〇!(※自主規制)
などと言っているかのように、ゴブリンは怒った様子で武宮へ棍棒を振るう。
中々に素早い動きであったが、武宮の俊敏は36(+145)とさらに素早く、それでいてパワーも段違いのため、ゴブリン達は為す術もなく、斧の一閃によりやられていった。
全員、斧でワンパンである。
攻撃、守り、スピード。全てにおいて武宮が大きく勝った。
五十嵐が攻撃魔法で少しサポートしたが、ほぼ必要ない状態だ。
「よし。食べよう」
「ちゃ、ちゃんと死んでるよね……うううっ、やだもう、盛り上がっている部分はなんなの!?」
「し、死んでるって。死んでもモッコリなのは、びっくりだけどな。泣くなって、桃」
「ぐすっ……だって、キモすぎる……」
女性にとっては、身の危険を感じるモンスターのようだ。
五十嵐はぐすぐす涙目になりながら、4体のゴブリンの肉を切り、焼いて武宮へ与える。
『――グルメリストに四つ足レッドゴブリンが追加されました。初喫食ボーナス、攻撃力+5、俊敏が+5加算されます』
『――グルメリストに四つ足ブルーゴブリンが追加されました。初喫食ボーナス、攻撃力+5、俊敏が+5加算されます』
『――グルメリストに四つ足イエローゴブリンが追加されました。初喫食ボーナス、攻撃力+5、俊敏が+5加算されます』
『――グルメリストに四つ足ピンクゴブリンが追加されました。初喫食ボーナス、攻撃力+5、俊敏が+5加算されます』
さらに進むと、やはり四つ足ゴブリンが現れる。討伐には苦労しないものの、五十嵐が若干トラウマになり、涙目になったが、武宮が「俺が絶対に守るからさ。だから大丈夫だ」と励ますと「すーくん……!」と、今度は五十嵐がハート目になったのであった。
そんな感じで、攻略の出だしは順調に進む。
しかしその時、進路方向から青年の絶叫が聞こえてきた。
「ぎゃああああああっ!? 死ぬ、死ぬ、さすがにこの量を1人は無理だっつーの!!!」
「……この声、工藤だな」
長谷川パーティーに馴染めない普通の青年こと、工藤 文也の声であることに気がつき、武宮が足を止める。五十嵐もそれに倣って足を止めた。
遠い曲がり角から、顔を青くした工藤が飛び出す。その背後には、4体の四つ足ゴブリンが彼を追っていた。
素早い四つ足ゴブリンから距離を詰められないのは、中々の俊敏であるものの、逃げれる決定打にはないっていないようだ。
工藤が遠くにいる、武宮達に気がついた。
「武宮と五十嵐か!? 頼む! レスキュー、レスキュー!!!」
叫ばれてしまう。
「なんでこんなところで、1人なんだ? 自称成功者達はどこへ……?」
武宮が疑問を口にすると、五十嵐がため息をついた。
「私達も逃げる?」
「いやいや、助けるぞ。そんな冷たいこと言うなって。工藤がどのくらいの実力者かわからないが、あの様子じゃソロ攻略出来るほどのレベルじゃないんだろ。いくぞ」
「はーい。すーくんが、そう言うなら」
武宮が前に出て、五十嵐が攻撃魔法を唱える。
瞬く間に四つ足ゴブリンのところへ距離を詰めると、斧の一閃で1体が即死した。
工藤が振り返った。
「助かる! ……つーか、一撃!? レベル高いんだな、武宮!」
「そんなところ、だ!」
続く一振りで、2体目も撃破。
工藤はスキル「格闘技能」を取得しており、両手には赤いガントレットをはめていた。四つ足ゴブリンと格闘で攻防を繰り広げる。
「ファイアボール!」
工藤が足止めしていた四つ足ゴブリンを、五十嵐の攻撃魔法がトドメを刺す。
最後の四つ足ゴブリンは、武宮が仕留めた。
工藤が武宮と五十嵐に、ぺこりと頭を下げた。
「助かったぜ! あざっす!!!」
「それはいいんだが……この状況は、どういう事情なんだ?」
武宮が問いかける。
工藤は随分と明るくふるまっているが、正直、普通じゃない。
このEランクダンジョン、クラブ・コーンには戦力分断をするようなトラップがある、という情報は乗っていなかった。
よほどのことがない限り、はぐれた……なんて事態にはならないはずだ。
だとすると、自ずと穏やかではない答えが候補に挙がってくる。
「あ~……まぁ、それは、その、なんつーか……」
工藤は誤魔化すかのように頭を掻くが、すぐに白状した。
「追放されちまったんだよ。このダンジョンの中で、な」
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