Eランクダンジョン
ゴーストを撃破したこともあり、今日はEランクダンジョンへ挑む予定だ。
しかしEランクダンジョンは初級冒険者の最初の関門だと言われるほど、危険な場所である。低ランク冒険者が命を落とす者のほとんどは、このEランクダンジョンが原因だと言われている。
冒険者協会は、Eランクダンジョンの攻略はレベル10以上を推薦している。
ちょうど、あのゴーストぐらいの敵がわんさかいる、というところだろう。
今日、さらにステータスが100上がる武宮は適応出来そうだが、五十嵐のレベル不足が否めない。
いくら後衛専念といえど、リスクがあるだろう。下準備が必要だ。
なので、今日の朝は協会支部ではなく、その近くにある装備品やアイテムなどが販売されている冒険者用の大型ショッピング施設「トレジャー・マーケット」へと寄った。ここで互いの装備を強化し、安全性を高めるのが狙いである。
ホームセンターのような広々としたレイアウトで、装備はレベル帯ごとにエリアが設けられている。
2人はまず、装飾品を探した。
細工スキルによって作られた、特殊な力が宿る装飾品は2つまで装備することが出来る。
高性能なものはレベル制限があるため、まずは初期レベル向けの物になる。
「後衛専念になるだろうから、魔力アップがいいかな?」
五十嵐の意見。
魔力が上がれば回復の効率と、攻撃魔法の威力が上がる。
だが、武宮はうーん、と唸った。
「ツインコカトリスみたいなパターンを想定するなら、被ダメに備えて耐久上げた方がいいと思うぞ」
「えっと、じゃあ……これかな。黒の腕輪」
2段になっている棚の中から、黒い魔石が埋め込まれた腕輪を取り出した。
ちなみに魔石は、モンスターから採取出来る。
黒の腕輪 装飾品 HP+50
「それ2つ買っていくか」
黒の腕輪は1つにつき1万円であった。
「すーくんは?」
「赤の腕輪」
赤の腕輪 装飾品 攻撃力+15
「あ、うん。知ってた……」
「攻撃力こそ全てだ。攻撃力は全てを解決する」
「でも実際、早く敵を倒せることは色んなことの解決策になるから、潤沢なステータスの振り方は攻撃特化で正解かもね。今まで倒したモンスター達、2人パーティーなのに長引いたことないし」
「そうだろ、そうだろ。高火力良いだろ」
赤の腕輪も2つ購入する。
そして剣術LV2になった五十嵐のため、剣のコーナーへと移動する。様々な剣が壁にかけられ、展示されていた。
フレイムサーベル 攻撃力+60 魔力+10 炎属性付与
ブロンズソード 攻撃力+70
ブルー・エッジ 攻撃力+50 魔力+20
「わ~。ズラリと並んでいるの、かっこいい~」
意外とこういうのに心躍るタイプなのか、少しだけテンションの上がった様子で五十嵐は剣を見ていった。
今回の方針は防御力の強化。五十嵐で装備出来て、なおかつ耐久面で貢献できる1本が欲しい。
「これ、いいんじゃないか?」
武宮が1本の剣を見つける。90センチほどの長さに、やや太めの剣。刃の側面の部分には灰色の平らな面が根本から先端近くまで伸びていた。
エナジーブレード 攻撃力+40 HP+100 要求 剣術LV2以上
現在の武器 ロングソード 攻撃力+20 要求 剣術LV1以上
「攻撃力は普通だけど、HP100アップだし。スーパーアーマーの値は装備後の数値を参照ならしいから、HPに余裕が出来る」
「わかった。すーくんがそう言うなら、これにする」
試しに持ってみて、違和感もないため、五十嵐も気に入った様子であった。
ちなみに、斧術がレベル1のままのため、武宮は武器を新調しない。
剣の購入を済ませ、会計し、次はアイテムのコーナーへ行く。
まずは協会からダンジョンには必須と言われている「エスケープストーン」を購入した。
エスケープストーン 消費アイテム
ダンジョンから脱出する。ディレイ時間は60秒。
ディレイ時間の長さから本当の緊急事態で効果を発揮させるのは難しいが、いざという時の逃げの手段として有効なアイテムだ。こちらを2個購入する。
ダンジョンのモンスターが思ったより強かったり、レベル不足の五十嵐に危険がありそうだったら、これを使って一旦撤退する作戦だ。
そして縁起でもないので想定はしたくないが、戦闘不能になるレベルの重傷を負った時に備え、「リザレクト・ポーション」を購入。
元々、五十嵐が1つ持っていたが、今回は武宮も1つ購入。
状態によっては効果を発揮しないので、これがあれば確実に蘇生出来るというわけではないが、死亡から手早い使用であれば復活するし、四肢の欠損も元通り修復出来るという優れものだ。万が一の時の命綱になる。
ちなみに、これは回復魔法や他の回復アイテムと共通して言えることなのだが、人間・生命の体から発生する病に対しては、効果を発揮しない。
その他の回復アイテムなども購入し、外へと出る。
準備は万端。
2人は冒険者協会支部へ向けて、足を運んだ。
☆
ゲートを潜り、フィールドへ出た武宮と五十嵐は目的のEランクダンジョン――「クラブ・コーン」へと到着した。
名前の通り三角錐、ピラミッドのような形をした、青い外装のダンジョンだ。100メートルを超えるであろう高さで、ダンジョンの前には空間の歪み、青いゲートが生まれている。このゲートを潜れば、ダンジョンの中へ入れるというわけだ。
複数あるEランクダンジョンの1つである、このクラブ・コーンは初級者向けのエリアに設置されているだけあり、大抵の冒険者が最初に挑むダンジョンとして知られている。
ボスは「バブルマン・クラブ」という名前の、大きなカニの見た目をしたモンスターだ。しかし討伐推薦レベルは20。ダンジョンの主に相応しく、かなり強力なモンスターだ。
ゲートの前に立った2人は、改めて方針を確認した。
「とりあえず今回の俺達は無理せず、だな。ボスには挑まない。少しでも危なくなったらエスケープストーンで逃げる。これでいいよな?」
「うん。いいと思う。ごめんね、私がまだ弱いから」
「いや、桃は弱くないし、そもそも俺がステータスモリモリなのは、桃のおかげだぞ」
ユニークスキル「愛の手料理」によって武宮のステータスUPを喜ぶ一方、そのスキルの内容の都合上、五十嵐とのステータス差が徐々に開き始めている。
そのため、どうしても狩場や活動は、五十嵐のレベルに合わせる……という構図が出来上がってしまう。
五十嵐はどことなく、その辺りを気にしていた。
だけど、武宮の言う通りそもそもこの現象は、五十嵐のユニークスキルによって起きていることだ。
しかも今後も武宮がより伸びるためには、五十嵐の存在が不可欠になる。
武宮としては、五十嵐の気にしすぎに思えた。
(そういえば、ゴーストの時もあまり役に立てなかった、って言ってたな。まぁ、小さい頃から人見知りで、自己肯定感低かったし。だいぶ変わったとはいえ、根っこは当時のままなのかな)
「ありがとう、すーくん。ずっとずっと一緒に頑張ろうね」
「もちろんだ。よし――いくぞ!」
2人はゲートに触れ、Eランクダンジョン「クラブ・コーン」へ潜入した。




