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【第2部完結】エレ レジストル〜最強悪魔と旅する生き残り少女の冒険録〜  作者: 月森 かれん
第3部 魔界動乱編

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第96録 悪魔の医者、ユフィール

 室内がシンと静まりかえる。

 ベリアルは壁に寄りかかって俯くとポツリと呟いた。


 「ユフィールでも治せなかったら、どうしよ……」


 「病気ですから、何かしら原因があるはずですけど。

私も初めて見ますね……」


 そう言いながらエリスは少しだけベッドに近づいて、ジョルジュの様子を観察する。

 彼は規則正しい寝息を立てているだけだった。

しかし7日も食事をとっていないというのにやせ細っていない。

異常なのは明らかだった。


 「モンスター経由のものかとも思ったんですけど、それなら他のお医者さんが対応できているはずですし……」


 エリスの言葉にベリアルが肩を落とす。

するとベルゼブブが思い出したように声をかけた。


 「そういや、お前。なんでコイツにこだわるのか聞いてなかったな。

さっき言いかけてたやつ」


 「アタシさ、基本的に契約者の言いなりだったのよ。

特にオーサマは怖かったから大人しく従ってたんだけど。

 でもジルジルは、アタシにも意見を聞いてくれるの。

『ベリアルはどう思う?』って。

 『アタシの意見なんかいいから』って断ったんだけど、

ジルジル、意外としぶとくてね。『何かあるなら教えてほしい』って」


 「なるほど。お前にとっちゃ新鮮だったわけだ」


 「そう。だから助けたいの」


 そこまで言ってベリアルは顔を上げた。

涙をこらえていたのか目元が少し赤くなっている。


 「心配だけど、俯いてるわけにはいかない。

アタシに何ができるかわからないケド……」


 「側に居るだけで良いと思いますよ」


 「エリエリ……?」


 「無理に何かをしようとしなくても、誰かが側に居てくれるだけで安心する人も居るんです。きっとジョルジュさんもそうだと思います」


 エリスはそう言うとベッドから離れ、中央の椅子に腰を下ろした。


 「そうかな?ジルジル、安心してくれてるのかな?」 


 優しく微笑むエリスを見て、ベリアルは再び目に涙を溜めた。

 ベルゼブブはこのような空気が苦手なのか、2人から気まずそうに顔を背けている。





 「戻ったッス」


 3人がハッとして部屋の入り口に顔を向けると、黒い霧が渦巻いてアザゼルが姿を現した。

 しかし、声とは裏腹に彼の表情は険しい。

 そしてその隣に小柄の男が立っていた。

悪魔にしては珍しく全身白一色。白髪を高い位置で1つに結っていて、丸メガネをかけている。

 それよりも目を引くのは、両頭部に生えている山羊のような角だった。


 「初めまして。私はユフィールと申します。

以後、お見知りおきを」


 ユフィールはエリスに向かって丁寧にお辞儀をすると、キッと目つきを鋭くした。


 「それで、患者はどちらに?」


 「あっち!」


 ベリアルがすかさずベッドを指差した。

顔を向けたユフィールは眉をひそめる。


 「おや、あれは……」


 「とにかく急いで!このままじゃ——」


 「急ぐ必要はありません。あれは命を蝕む類ではありませんので」


 ベリアルの言葉を遮って言い切ったユフィールに、エリス達は口を開けたまま固まった。

 しばらくして、我に返ったエリスが尋ねる。


 「病名、わかるんですか……?」

 

 「はい。あれは冥睡病(めいすいびょう)と言います。

魔界特有の病ですね」


 「なんでそれが地上に!?」

 

 ユフィールとアザゼルを除いた3人が同時に叫んだ。

ユフィールは彼等の様子を気にも留めず、淡々と語る。

 

 「それにしても……ベリアルはともかくベルゼブブも気がついていないとは思いませんでした」

 

 「わかるわけねぇだろ!オレ様は医者じゃねぇんだからよ!」


 「患者に纏わりついている黒い渦。アレは魔界に漂っている魔素なのですが、ベルゼブブには見抜くのが難しかったみたいですね」


 「ちょっと待て!オレ様が能力不足だって言いてぇのか!?」


 「はい。今回に関しては」


 叫び返したベルゼブブに怯むことなく、ユフィールは話を続ける。

 そんな2人をチラリと見てから、エリスはさっきから黙り込んでいるアザゼルに声をかけた。


 「どうしてあなたはさっきから顔が険しいの?」


 アザゼルは普段よりさらに生気のない赤目をエリスに向けると、呟くように言う。


 「思ったより……魔界が大変なことになってるッス……」

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