第78録 似た者同士
今回は短いです
翌朝。
朝食をとったエリスは髪をブラシで梳かしながら、小さくため息を吐いた。
それを聞きつけたベルゼブブがすかさず口を開く。
「なんだよ、不満か?」
「不満というよりは――いや、贅沢な不満ね」
「ほぉ、珍しいじゃねぇか。聞かせろ」
煽るように言うベルゼブブを見て、エリスは手を止めて彼に向き直る。
しばらく無言で見つめていたが、やがて諦めたように口を開いた。
「慣れないのよ、白パン……」
「珍しく同意見だな。薬屋のパイの方がまだいい」
「私はそこまではないけど、食感があまり得意じゃなくて」
白パンは貴族の象徴でもあるため、王族のジョルジュ達は2人にもそれを提供してくれていた。
しかし、どうにも2人には相性が悪かった。
「誰かに聞かれてたら怒られるわね」
「オレ様はしばらく食わなくても問題ねぇが。
お前は食っとけよ。後で倒れられたら話にならねぇ」
「言われなくても食べるわ。食感が苦手なだけだし。スープも水もあるし」
「なら、不満垂れてねぇで食っとけ」
「そうね」
エリスは短く答えると、再び髪を梳かし始める。
やがて終えると、立ち上がって白いローブフードを羽織った。
「よし、調合室に行きましょう!」
エリスの目が輝き始めたのを見て、ベルゼブブはため息を吐いた。
「あ……」
部屋を出たエリスは廊下の向こうから歩いてくる人物を見て、思わず声を上げた。
ギザギザの金髪に、切れ長の水色の目。
ジョルジュの弟のグラドだ。
彼もエリスに気づいて、小さく舌打ちする。
「おい、テオドール。お前、アニキから町の守りを任されたんだろ?
しくじるんじゃねぇぞ」
「その点は大丈夫です。町には傷1つつけさせません」
「なら、いい。
どっか守り損ねた、とかなったら承知しねぇからな!」
相変わらず口は悪いものの、敵意は見られなかった。
エリスがしっかり頷いたのを見て、グラドは満足そうに鼻を鳴らす。
すると、ベルゼブブが口を挟んだ。
「テメェも調子乗ってボロボロで帰ってくるんじゃねぇぞ、ガキ」
「誰がガキだ!使い魔如きが俺に口答えすんじゃねぇ!」
「クソガキからガキに昇格してやったんだ!
ありがたく思え!」
「使い魔にそんなこと言われる筋合いはねぇよ!」
グラドはベルゼブブを上級使い魔だと信じ込んでいた。
兄から悪魔のことは聞かされていないため、ベルゼブブが悪魔だということも、後ろ盾にベリアルがいるということも知らない。
そのため、ガキ呼ばわりしてくるベルゼブブに噛みついていた。
口論を始めた2人を見ながらエリスはぼそりと呟く。
「この2人、似てるわね……」
「コイツと一緒にするんじゃねぇっ!!」
お互いを指差して言い放った2人を見て、エリスは苦笑することしかできなかった。




