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【第2部完結】エレ レジストル〜最強悪魔と旅する生き残り少女の冒険録〜  作者: 月森 かれん
第3部 魔界動乱編

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第98録 根治への準備

 ユフィールは喚くベルゼブブとベリアルをものともせずに魔界へ連れて帰った。 

 部屋に残されたエリスとアザゼルは困ったように顔を見合わせる。


 「ユフィールさんの検査って何日かかるの?」


 「早くて半日、長くて2日ッス。

でもタイチョー達は逃げ回ってたんで間違いなく1日以上はかかるッスね」


 「そんなに嫌なのかしら、検査」


 「まぁ、苦い薬飲まされたり散々体いじくり回されるんでね。

あとは魔力測定とか、感知能力検査とか……」


 「悪魔の検査って大変なのね……」


 エリスは呆れたように肩をすくめた。

それから右にあるベッドをチラリと見る。

ジョルジュが相変わらず静かな寝息を立てていた。


 「あれだけ騒いでたのに身じろぎすらしないなんて……」


 「病気ッスからねぇ。でもある意味目を覚まさなくて正解だったと思うッスよ」


 「そうね……」


 エリスはアザゼルに視線を戻すと、真剣な顔で尋ねる。


 「ユフィールさん達が帰ってくるまでに何かできることはある?」


 「……とりあえず治療が長引くことを伝えないといけないッスね。

騎士隊長さんでダイジョーブだと思う」


 「じゃあ行きましょ。会えなかったら大変だもの」


 エリスは素早く立ち上がった。

 今は昼過ぎ。

ジョルジュの状態を確かめてから数十分しか経っていなかった。

そのため、騎士隊長のルドンは自室にいる可能性が高い。


 アザゼルはそんなエリスを見ながら、からかうように言う。


 「しばらく会っていない間に随分と決断力が上がったッスね。

追われてた頃なんか、オレやタイチョーに確認しまくってたのに」


 「あの時は自信がなかったの。追われているという焦りもあったし」


 「そうスか。

いや、褒めてるんスよ?なんで睨む?」


 「からかっているような気がしたから」


 「思い込みッスね」


 「それは、ごめんなさい……」


 ピシャリと言われたエリスは小さく頭を下げた。

その間にアザゼルは部屋のドアを開ける。


 「別に謝ることじゃないッスよ。それにオレの言い方も悪い。

とはいえ、癖なんで直すのは難しいッスけどね」


 エリスに出るように促して、完全に廊下に出たのを確認するとアザゼルはドアを閉めた。

 そのままルドンの部屋へ向かい、エリスがノックすると低い声が返ってきた。


 「エリス・テオドールです。お伝えしたいことがありまして」


 「どうぞお入りください」


 相手がエリスだとわかったからか、ルドンの声が1トーン高くなった。

エリス達が中に入ると、最初と同じようにルドンが席についていた。

彼は2人に座るように促したが顔は険しく、緑の瞳がひっきりなしに動いている。

 席についたエリスは頭を下げた。


 「お忙しい所失礼します」


 「いいえ、私のことはお構いなく。

それで……何かわかりましたか?」


 「ああ。冥睡病っていう病気ッス」


 「めいすい……病?」


 ルドンは丸い顔に似合わず小さな瞬きを繰り返した。

アザゼルが構わずに説明を続ける。


 「100万人に1人かかるかどうかの希少な病気でね。

命は脅かさないが、根治しない限り眠り続ける」


 「ち、治療方法は……?」


 ルドンはテーブルの下で両手を握りしめた。

額からはわずかに汗が吹き出している。


 「もちろんあるッスよ。ただしかなり複雑で説明するのは難しい。

それに日にちがかかるのは間違いなくてね。

王様が眠り続けてる間、国の運営はどうするつもりで?」


 「それはこちらで尽力致しますので、お2人は治療に専念してください! 

病名と治療法まで見つけてくださってありがとうございます!」


 ルドンは立ち上がって何度も頭を下げた。

エリスは複雑な表情で口を開く。


 「喜ばれているところ大変申し訳ないのですが、まだ有頂天になるのは早いと思います。

 私はこの病気を知りませんでしたし彼も久しぶりに見るので、準備から始めないといけないんです」


 「た、大変失礼致しました……。あなた方がいるというのに、つい舞い上がってしまいまして」


 ルドンは顔を赤くして縮こまると、何事も無かったかのように席についた。


 「それで1つ頼みがあるんスけど、根治するまで誰も部屋に入れないでほしい。治療法も特殊で、あんまり人に見られて良いモノじゃないんで」


 「し、承知致しました。皆にはそのように伝えておきます。

それで……お食事は部屋の前に置かせていただいても宜しいですか?」


 試すような笑みを浮かべるアザゼルに、ルドンはドギマギしながら答えた。

 エリスはアザゼルの袖を小さく引っ張ると目だけで尋ねる。

アザゼルはすぐに意味を理解して頷いた。


 「それでお願いします。あと、私が度々滞在させていただいているお部屋をまた使わせて頂けませんか?さすがに王の部屋に泊まり込むわけにはいきませんので」


 「ええ、どうぞお使いください。

では、私はさっそく皆に伝えて参ります。よろしくお願いします!」


 最後にルドンは深々と頭を下げた。

エリス達もお辞儀をすると部屋を出る。


 

 ジョルジュの部屋に向かいながら、エリスは周囲を見回して誰もいないのを確認すると、小声でアザゼルに尋ねた。


 「冥睡病ってそんなに希少なの?」


 「人間にとっちゃ希少だろ?

ちなみに100万人に1人とかは完全にオレの口任せッス」


 「意地悪いわね」


 「そうでも言わないと信じてもらえないッスからねぇ。

いきなり魔界の病気で〜とか言われて信じられるか?」


 顔を覗き込んでくるアザゼルにエリスは力なく首を振った。


 「いいえ……」


 「意地悪じゃなくて配慮ッスね」 


 エリスは何も言い返せず、ほくそ笑むアザゼルを見つめることしかできなかった。 




 エリス達がジョルジュの部屋に戻ると、中央で首下まである茶髪の毛先を無造作に跳ねさせた男が胡座をかいていた。

 音に気づいて振り返ると、呑気に挨拶する。


 「あ、お邪魔してまーす。

 やあ、研究者ー。そして人間の方は初めましてー。

俺がベルフェゴールでーす」

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