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第48話 俺氏、魔力総量の秘密に気付いてしまう

 続いて、レイが前に出る。


「レイには魔法というより、守護している水竜との連携を主に強化したでの。特に重要なのは、魔力の受け渡しじゃ。自分が放ちたい攻撃の質と量を互いに同期させるほど、緻密で、思い通りの結果が得られるようになるのじゃ」


 ミサトがそう説明する。


 レイは湖のほうへ向き直った。


 ふうっ、と一息。


 そして、静かに前方を見つめる。


 すると――。


 レイの背後に無数のシャボン玉のような泡が現れた。


 泡は次々と膨らみ、重なり合いながら巨大な人の形を成していく。


 やがて、一斉に弾けるように消え去った。


 その中から現れたのは、透明な水色の身体を持つ巨大な女神の幻影。


 この前見た、水竜の化身だ。


 水竜の化身が現れた瞬間、レイの髪も淡い水色へと変わっていく。


 それが現れるまで、ほんの数秒。


 レイは巨大な弓を構え、弦を引き絞る。


 その瞬間――。


 女神の幻影がレイの背後からそっと手を伸ばし、弓を引くレイの手に自らの手を重ねた。


 すると、レイの周囲に無数の透明な水色の矢が出現する。


 レイが一本の矢を放つ。


 それと同時に、空中に浮かんでいた無数の矢も一斉に放たれた。


 すべての矢が、寸分違わず同じ方向へ――。


 そして、同じ一点へと飛んでいく。


挿絵(By みてみん)


 次の瞬間。


 湖面が爆発した。


 マヤの魔法と同じく、まるで爆弾の豪雨でも降り注いだかのように、水しぶきが広範囲に激しく舞い上がる。


 霧雨となった水が、俺たちのところまで降り注いできた。


 というか――。


 水しぶきが激しすぎる。


 湖の中にいた魚まで次々と跳ね上がり、ぼとぼとと岸へ落ちてきた。


 俺が唖然として固まっていると、マヤとマリが落ちた魚をせっせと回収していた。



     ***



「次は拙者たちでござるな」


「え? イヴァンたちもミサトの修行を?」


「いや、拙者たちは毎日マリと連携を高めていたのでござるよ」


――マリの犬的本能に従い、ただ町中を走り回ってただけじゃなかったのか。


 俺はマリとイヴァンの評価を一段階上げた。


 まだ特訓の成果は何も見ていないが。


 イヴァンがマリの背に跨る。


 その手には長槍。


 まさに騎士と騎獣の組み合わせだ。


「では、参るでござる!」


 マリが地面を蹴った。


 最初は普通の走りだ。


 だが――。


 速い。


 みるみるうちに速度が上がっていく。


 マリの身体を緑色の精霊力が包み始めた。


「おお……」


 俺は思わず声を漏らす。


 さらに加速する。


 そして――。


 マリが地面を蹴った瞬間、その身体が天高く舞い上がった。


「えっ?」


 そのまま落ちると思った。


 しかし、マリの四本の足が空中を蹴る。


 まるで、そこに見えない地面があるかのように。


 マリは空を駆け始めた。


 しかも――速い。


 地上を走っているときと、ほとんど変わらない速度で空を駆けている。


 その背中では、イヴァンが長槍を構えている。


 緑色の精霊力が二人を包み込み、まるで一体の存在のように見えた。


「す、すげえ……」


 思わず見上げる。


 マリは湖の上を大きく旋回し、そのままこちらへ戻ってくる。


 そして――。


 俺たちの頭上を通過する瞬間、イヴァンが長槍を突き出した。


「参る!」


 マリがさらに加速する。


 空気が一気に震えた。


 次の瞬間、二人の姿が視界から消える。


「……え?」


 直後。


 遥か上空を駆けていた二人が、こちらへ向かって一気に降下してきた。


 マリが空を蹴るたび、緑色の光が後方へ流れていく。


 その背でイヴァンが長槍を構えている。


 二人はそのまま俺たちの頭上を通り過ぎ――。


 その瞬間、イヴァンが再び槍を突き出した。


 長槍の切っ先が地面すれすれを駆け抜ける。


 巻き起こった風圧で、俺の髪が大きくなびいた。


 マリはそのまま地面へ着地すると、何事もなかったかのようにこちらを振り返った。


「どうでござるか?」


 イヴァンが得意げに胸を張る。


「どうって……」


 俺は言葉を失った。


 これはもう――。


 騎士というより、空を駆ける騎士だ。


「すごいじゃん、マリ! イヴァン!」


 マヤが嬉しそうに駆け寄る。


 マリも尻尾を大きく振っている。


「二人とも、よくここまで連携を高めたの」


 ミサトも満足そうに頷いた。


「イヴァンの精霊力でマリの身体を支え、マリが一定以上の速度に達することで空を駆ける。二人でなければ成立せぬ連携じゃな」


「なるほど……」


 俺は改めて二人を見る。


 町中を走り回っていたと思っていたが――。


 あれも全部、特訓だったのか。


 マリとイヴァン。


 俺は彼らの評価をもう一段階上げた。


 ――俺以外はみんな遊んでいるわけではなかった。



     ***



 皆の成長ぶりに触発され、俺も魔力増幅に勤しむ。


「出でよ、我が死の軍団!」


 口上は端折って魔法を行使する。


 もう今日だけで二十回は繰り返している。


 今召喚できるアンデッドは四百八十体。


 きりの良い五百体を目指しているのだ。


 整列している死の軍団を数える。


 魔力量=召喚人数なのだ。


 ――ん?


 って、待てよ?


 それ、本当にそうなのか?


 今までの召喚を思い出す。


 召喚するアンデッドの種類によって、消費魔力が変わるんじゃね? ――説。


 考えるより実施。


 剣、槍、弓、ナイト、ジェネラル。


 それぞれを同じ魔力量で召喚して、何体呼び出せるのかを調べてみた。


 結果は――。


 各アンデッド一体あたりの魔力量は、剣一、槍一、弓三、ナイト六、ジェネラル十。


 俺がいつも召喚している軍勢で計算すると――九百八十四。


「思ったより多い」


 現在の軍勢は四百八十体。


 剣や槍を一体一ポイントとした時、俺の軍勢の総計は九百八十四ポイント。


 単純に考えれば、俺の魔力総量を九百八十四ポイント相当と考えることができる。


「なるほど……。今まで俺が召喚してきた軍勢にも、ちゃんと法則があったんだな」


 これは大きな発見だ。


 というか、今頃気付いたのか的な今更感が半端ない……。


――気を取り直す。


 ならば、リッチ一体だけなら召喚できるかもしれない。


――でもダメだった。


 リッチは顕現せず。


 俺は少し頭の中を整理した。


 ジェネラル一体なら十ポイント。


 いくらジェネラルよりも上位アンデッドだとは言え、リッチ一体召喚で俺の魔力総量九百八十四ポイントを上回るはずがない。


 でも召喚できない。


 ここから先は仮説となってしまうが。


――もしかして……総ポイントそのものが召喚の鍵なんじゃないか?


 もう検証はできないが、例えば――


 スケルトン剣と槍を召喚するための魔力総量は百ポイント以上


 スケルトン弓を召喚するための魔力総量は三百ポイント以上


――のように、一体当たりの召喚必要魔力とは別に、魔力総量で召喚可能なアンデッドが決まるのではないか。


 これは結局、魔力総量を今以上に増やし、リッチを召喚できてみないとわからない。


 でも、少しだけ前進した感はあった。



     ***


 後日、俺の検証結果をミサトに話した。


「今更そんなこと言ってるのかのう」


 やっぱ、それ言われたか……。


「なら教えてくれたっていいだろ!」


 でも俺がミサトに言いたかったのはこれだった。


「其方からそんなことは聞かれぬし。それに、あんだけ沢山召喚してて、まさかそれを知らぬとは思わんではないか」


 くっ――、言い返せねえ。


「やっぱり、バカシン」


 レイの容赦ない言葉で俺は、キノコ君に『楽しくなる胞子』を受けに町中へ走った。

10月10日  一挙5話公開 18:00に5話同時公開

10月11日~ 毎日3話公開 毎日18:00から30分毎に1話づつ

10月16日~ 毎日2話公開 毎日18:00から30分毎に1話づつ

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