第46話 シンマチ誕生
なんか転生してからというもの、周りの状況に流されながら、ここまで生きてきたわけだけど――。
なんで俺、町作ってんの?
洞穴生活→仲間作る→服を盗みに廃村へ行く→バンパイアと戦う→金欲しさに冒険者になる→稼いでメイド付きの家を買う→レイドに参加して精霊騎士と会う→メイド攫われ、キレて領主殺す→国軍と戦う→保護した獣人のために町を作る→水竜と会う→町を更に大きくする→今ここ。
転生してからまだ一年経ってないんだけど――。
既に十年分くらい生きた気がする。
***
町はどんどん大きくなり、人口はついに一千人を超えた。
そのほとんどは、各地で不当な扱いを受けていた獣人たちだ。
そして今、冒険者組合の建屋が完成した。
なぜ冒険者ギルドじゃないのか。
俺たち月の墓標は国家反逆罪に指定され、冒険者ギルドを追放された身なのだ。
その追放者が勝手に作った町に、冒険者ギルドを出すのは良くないという、大人の事情らしい。
サンジオン支部長のガルドからもギルドを名乗るな、と言われている。
だから冒険者組合なのだ。
そもそも武器を持った冒険者の滞在は、この町では許可していないので、主に流通関係の仕事がメインとなるだろう。
もちろん中身は冒険者ギルドと同じで、ガルドとセドリクに運営を任せる手筈になっている。
大袈裟な式典は行わないが、ガルドやセドリク、以前お世話になった職員の人達も集まって新しい建屋でパーティを行うのだ。
***
パーティの席で俺はガルドからこんな話をされた。
「シン、折り入って話があるんだがな」
――なんか嫌な予感。
「グスタフ城下の町と、ここを道路で結ばないか?」
「はい???」
何を言ってるんだ、このおっさん。
「いやな、これだけ物資と人の移動が地下だけだと大変なんだよ。それによ、今なら国の目が緩いからサンジオンとこの町の往来が増えれば人口も増えるし、町の収入も上がる」
「はぁ……」
一瞬、レイの目がキラッっと輝いた気がした。
「地下通路は馬車一台通ると、人すらすれ違うのが厳しいだろ。だから今は時間を決めて、この町へ来るときとこの町から出る時の時間を調整している。知ってるよな?」
――え、知りません。
要するに、行きと帰りで時間を分けて使っているということか。
そりゃ大変だ。だって二十キロくらい距離あるから、片道五時間くらいかかるし。
「……確かに」
「だろ?」
俺たちは転移で移動することが多いので、そんなことはすっかり失念してたよ。
すぐ隣で話を聞いていたレイに確認してみる。
「どう思う?」
「確かに大変だという声はある。でも道路を作るような資金はない」
「でだ。旧グスタフ領代官の俺が資金の八割を負担しよう」
俺が答える前に、ガルドが口を挟んだ。
「え? まじ?」
「ああ、その代わり条件が一つある」
「――なに?」
「湖の北にある魔物狩りのための冒険者用拠点として、この町を利用したい」
「却下――」
レイが即答する。
「冒険者が増えると治安が乱れる」
確かに、レイの言うことは正しい。
弱者を保護する以上、治安が第一なのだ。
「ははは。お嬢ちゃんがそう言うと思ってだな」
ガルドは腹案があるようだ。
「この町の東側にある北の小門付近に拠点を作ってだな。その建屋の周囲は壁で囲う。そこから勝手に町の中に出入りするのは、その拠点で武器を預けてからでないと入れない仕組みにするんだよ」
それならそんなに悪くないか? 土地は余ってるし。
「それも却下。こっち側のメリットがない」
レイさん――き、厳しい。
ガルドの口調が強くなる。
「ちょっと、話は最後まで聞いてくれって。土地の賃料と利用者からは利用料を徴収して、利益は全てお前らに渡す。それから、拠点から町に入る時も入場料をお前たちが徴収すればいい」
その話を聞いて、レイが真剣に考え込んでいる。
――要するに、東側にある北の小門を冒険者用に開放する。
そこから拠点や宿泊所などの必要な施設を城壁の内側に建てる。
施設の周囲を壁で囲み、町中に入るには一か所の出入り口しか使わせない。
土地使用料や利用料の収益は、全て俺たちに渡す。
さらに冒険者が町へ入る時は入場料を俺たちが徴収する。
町に入る際は武器は全て拠点に預ける。
――俺は悪くない取引だと思った。
レイは顔を上げた。
「その拠点の建設費用もそっちの八割負担なら許可する」
レイもなかなかの交渉上手だ。
さすが、旧グスタフ城とこの町の金庫番をしているだけある。
「お嬢ちゃん、厳しいなー。折半にならない?」
「無理――。湖の北の森で取れる魔獣の素材は莫大な利益が出る。冒険者もギルドも」
「あちゃー、お嬢ちゃん抜け目ないねぇ」
ガルドは感心したように笑う。
「あの森の魔物や魔獣は他よりも強い分、獲れる素材も高級なのは知ってる」
「ははは、わかった。それで手を打とう」
こうしてレイとガルドの商談は終わった。
――ん? 俺、必要なくね?
***
ミサト先生の元、アスカ、レイ、マヤは屋敷で魔法の勉強をしている。
ただ、適正みたいなものがあって、魔法の習熟は個人差があるようだ。
やっぱり魔法はロマンだよね。
みんな使いたいに決まってる。
マリとイヴァンは町内の巡回とかで留守中だ。
大人気のキノコ君たちは町民たちと『ふれアイ活動』中だ。
実際には町中をふらふらしているだけらしい。
俺は新たに受肉させたスケルトン・ジェネラル数体に名前と任務を授けていた。
諜報担当のアダム、警備・軍事担当のリリスはもとより、食品衛生補佐のサキエル、裁判官補佐のシャムシエルなど、新たに五人を、それぞれ担当する獣人や人の補佐につけた。
なぜジェネラルばかりに受肉するのか?
なぜか俺の使役するアンデッドの中では一番、頭の出来がいいんだよね。
理由は知らん。
冥界に聞いてくれ。
いまだに召喚できないのがリッチなどの魔法使い系。
そいつらならもっと頭が良いかもしれない。
もっと魔力量を増やそうと思う。
***
今日はこの町の名前と町長を決める日だ。
町の名前は町民から募った最終候補五つの中から投票で選ぶ。
町長は立候補者と推薦候補を合わせて四人いたので、その中から投票だ。
もちろん俺たち月の墓標メンバーの推薦は禁止した。
モブの町長なんて聞いた事ないし。
町名候補はこの五つ。
・ウォーター・ドラゴンタウン(水竜の町)
・シンマチ(シンの町)
・レイク・サウスタウン(湖南の町)
・ニュータウン(新町)
・ルナ・トゥンブストンズタウン(月の墓標の町)
――まぁ、そのまんまと言うか。
町長候補はこの四名。
・ミレーヌ・アシュベル (38)猫獣人・ダンスインストラクター・女
・テオ・マルセル(33)人族・コメディアン・男
・サンズ・ヴァルデン (43)犬獣人・霊媒師・男
・リゼット・ベルナール(27)猫獣人・接客業・女
――候補者の経歴を見ると、ずいぶん多彩だな。町の運営は大丈夫だろうか。
まあ、人間は肩書きじゃない。パッションだ!
結果発表。
町の名前はシンマチ、町長はサンズ・ヴァルデン氏が選ばれた。
霊媒師なら俺たちとも相性が良いかもしれない。
なんとなく。
***
最近聞いた。
屋敷の北の湖はアカン湖。
以上。
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