第12話 廃村で見つけた地下への入口
今、俺たち3人はマリの背中に乗っている。
ジャングルの道なき道を駆け抜けるマリ。
レイの記憶を辿って廃村へ向かっているのだ。
「うっひょぉーい、速い、速いのですじゃー」
マリの一番後ろに乗っているアスカがハイテンションだ。
「で、レイ。こっちの方向で合ってるのか?」
「太陽の位置からしたら――こっち」
「なんでその廃村を知ってたんだ?」
レイに疑問を投げる。
「冒険者の時に時々、拠点にしていた」
なるほど。
「ほとんどソロでの活動だったのか?」
「ん。パーティ組むと大体私にエロいことしてくるから」
まぁ、レイのこの可愛さなら不埒な奴もいるのだろう。
***
30分くらい進んだ頃。
「マリ、ゆっくり――」
マリが走る勢いを緩める。
レイが俺の後ろで立ち上がり、両手を肩に乗せた。
レイが辺りを見渡す。
「あった。あのとんがり屋根が目印」
レイが指さす方向を皆で見る。
ここから200メートルくらい先。
木々の上に少しだけ尖った屋根のようなものが見えた。
「あれは教会ですじゃ?」
「違う、見張り台」
「よし、行ってみようか」
俺たちは少しだけ緊張しながら見張り台を目指した。
***
「廃村というか――なんかの遺跡?」
「ん。遺跡だって言う人もいる」
森が開けると遺跡のような朽ちた石造りの何かが目に入る。
びっしりと苔と植物の蔓が絡み合い、朽ちた石造りの何かを覆っている。
崩れた石の壁のような場所にはいくつもの焚き木の黒い炭。
確かに冒険者たちの痕跡が見えた。
「ここは何も無さそうですじゃ」
アスカがマリから飛び降りると周囲をうろつく。
「奥の方に冒険者が使っていた小屋がある」
レイが奥を指さす。
「とりあえず行ってみようか」
「マリはこの辺で適当に休んでろ」
マリは御意!とばかりにガゥッと唸ると、どこかに走り去る。
マリも一応レディだし、お花摘みだろうか。
俺たちは歩いて小屋に向かった。
***
小屋は木の板で簡単に作られた掘立小屋だった。
屋根には石が多数載せられ、板の壁も朽ちて隙間だらけだ。
ボロボロの扉が半開きになっている。
もし、人が居たら嫌だな――
と、中に入るのを一瞬躊躇する。
すると、
「お邪魔しますのじゃ」
とアスカが無遠慮に入っていく。
82歳ともなると怖いものは無いらしい。
俺達も続いて小屋に入る。
「む。死体ですじゃ」
そこには倒れるように白骨化した女性の死体があった。
俺たちは元々死体なので白骨程度、見ても驚くことはない。
長い黒髪が頭蓋骨に未だこびり付いている。
首から下は革の鎧と短い革のショートパンツ。
足には頑丈そうなブーツ。
身長から見てもドワーフのような恰好だ。
「レイ、ドワーフっているのか?」
「ん。手先が器用」
やっぱりドワーフの女性らしい。
さすが異世界だ。
「ご主人、この衣装貰ってもいいですじゃ?」
「え。アスカ――これ着るの?」
レイが『マジかこいつ』みたいな声を出す。
「今の恰好よりはマシですじゃ」
アスカが着ているシャツを指で掴む。
「それに、ご主人の舐めるような眼差しからも早く逃れたいのですじゃ」
「おい。俺はそんな目で見てない」
「ご主人も好きなんですじゃ?ロリ巨乳」
アスカが屈んでシャツの上から腕で胸を挟む。
「き、嫌いじゃないが、中身ババアなのが……」
「酷い……ボン、キュッ、ボンに作ったのはご主人なのに……しくしく」
「お前の注文だろ!」
「では着替えますじゃ」
「お、おう」
***
レイの目が険しいので俺は小屋の外でアスカの着替えを待った。
「おお。ぴったりなのじゃ」
アスカが着替えを済ませて小屋から出てきた。
しかも右手には短剣を持っていた。
「アスカ、その短剣はどうした?」
「あ、これは鎧の後ろ側に刺さってましたのじゃ」
「え。あの人は殺されたのか――」
「そういう事ですじゃ」
「アスカは精神――強い」
再びレイが呆れたように話す。
「わし、探検で短剣を見つける。(ニヤッ)」
「ヒール!」
「ぎゃぁぁぁぁぁあああああ」
ま、ここまでがお約束。
***
再び小屋に入って家探し。
「泥棒みたい――」
相変わらず良識あるレイ。
「店で商品を選んでいると思え」
「無理――」
「あ、ネックレスですじゃ!」
レイが神速でアスカを跳ねのけネックレスを手にする。
「これ、綺麗」
「宝石なのか?」
「わからない。でも水色で透明で綺麗」
革紐で縛られたその水色の石は確かに綺麗だった。
レイはそのネックレスを自らの首にかけた。
「シン、綺麗?」
「あ、ああ……」
「ふふ。――いい買い物した」
「おい!さっき否定してたろ!」
レイは綺麗な石に目が無いらしい。
マリの額に緑の石を埋め込んだのもレイだし。
「レイ、その石をまた誰かに埋め込むとかしないだろうな」
「しない。マリのは拾った石。これは私が買った」
「買ってねえだろ!」
――ったく。
***
結局、小屋での収穫はアスカの衣類兼防具、短剣、そして水色の石のネックレス。
まぁ、アスカの裸に白シャツという非常に危険な衣装は解消されたのだ。
小屋を出て周辺を散策する。
「大体こんなもんか、大した物はなかったな」
「当たり前。でも――いい買い物した」
まだ言うか。
アスカは相当嬉しかったようで短剣を空中で格好つけながら振り回している。
「ん?マリがいないな」
マリが先ほど走って何処かへ行ったのを思い出した。
「おや、あれはマリの尻尾?ですじゃ」
アスカはずっと奥にあるここの土地と森の境目あたりを指さした。
「ん?遠すぎて全く見えん」
「ん。見えない」
「全然見えますじゃ。マリが尻尾振って何かの匂いを嗅いでますじゃ」
「アスカは目がいいなー」
「アスカ――老眼?」
「レイ、失礼ですじゃ」
こいつらは無視。
「マリが何か見つけたかもな。行ってみよう」
***
マリがこちらに尻尾を向けて地面に鼻を付けている。
「どした、マリ。何か見つけたのか?」
クゥン。〈変な匂い〉
何か地面の下にあるのか?
レイが地面の匂いを嗅ぐマリの横でしゃがみ込む。
「マリ、ここを掘れってこと?」
ガゥッ。ガゥッ〈うん〉
「ここ、掘れ?」
ガウッ、ガウッ。
「ここ掘れ?」
ガウッ、ガウッ。
「ここ掘れ?」
ガウッ、ガウッ。
「――やめんか!お前ら花咲爺かよ!」
***
皆でマリが匂うという場所の砂と土を素手で払う。
――そこには大きな石の蓋のようなものが現れた。
四方が2メートルくらいの正方形だとわかる。
「こ、これは……」
「トイレ?」
「1000パーセント違う」
「地下への通路ですじゃ」
「うむ」
しかし、この石の蓋をこじ開けるか、動かすかしないと先には進めない。
「みんなでこの石を動かそう」
「はい、ですじゃ」
ガウッ、ガウッ。〈はい〉
「えい!」
いきなりレイが石の蓋の中央に空手チョップをくらわした。
ドゴッ!ガラガラガラ。
あら。――真っ二つ。
そこには予想通り、石の階段が地下へと続いていた。




