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蒼天の羽  作者: に
第一章 廻り・招かれて…
8/9

7話 結ばれて・殺されて

 その瞬間に周囲の環境はなくなったように感じた。虫の鳴く音、波が揺れる音、全ての音を置き去りにしたような、それくらいの緊張感が辺りに染み渡る。私は雰囲気に圧倒された。


マガモ「この話はねぇ、あの子に伝えると行ってしまうと思って言わなかったんだがな」


 私は唾を飲み込み話を聞く。


マガモ「タワーには『結羽』(ムスビバネ)があるんだ」


蒼「結…羽?」


 結羽。その言葉は今まで一度も聞いたことがない言葉だった。

タワーにそれがあるなら、この世界から出るために何か関係があるのだろうか?と考えた。


蒼「その結羽がこの世界から出るのに関係あるってことですか?」


マガモ「まだあたしにもよくわからない…が、この世界から出るのと関係があることはわかる」


蒼「なんで出れると思うんですか?」


 さっきまでなくなっていた音が周囲に響く。


マガモ「あたしはタワーに行ったことがある」


 どうやらマガモさんはタワーに行ったことがあるらしい。


蒼「なんでマガモさんはタワーに行ったんですか?」


マガモ「若気の至りみたいなもんだよ、友人と一緒にタワーを調べにいったのさ」


 マガモさんはシャツをめくり脇腹を見せる。そこには、何かに突き刺されたような大きな傷あとがあった。


マガモ「この傷はねぇ…奴らに負わされたんだ」


 私は昨夜の会話の記憶が脳内に駆け巡る。


蒼「ウミネコ、ですか?」


 マガモは頷き、語りかける。


マガモ「タワーに行けば何かがわかる、それをソラに伝えたら必ずタワーに行くとわかっていた」


マガモ「あえて隠していたのに、あの子はタワーに行こうとした」


 マガモさんは今までとは違う、マガモさん自身の本心がボロボロと口から溢れていた。


       もう失いたくない


という感情が何も事情を知らなかった私にも伝わってきた。


マガモ「あんたたちが、行くことはあたしには止められない」

マガモ「嗚呼、これが『運命』ってやつなんだねぇ…」


マガモさんは涙を流しながらそう言葉をこぼした。


マガモ「でも、あんたと数日共にしてわかったさ、蒼、あんたにも帰りたいっていう『信念』があることを」


 信念…か、私は今までそんなこと考えずに生きていたのに、なぜかその言葉が頭にこびりつく。

私の帰りたいという思い、それを『信念』と言うのだろうか。


蒼「それはなんでですか?」


マガモ「勘っだよ」


 その声を聞き、やっぱり育ての『親』だと実感した。


 お茶をすすり、エイヒレがなくなる。


マガモ「いやだねぇ、年を取るとすぐ涙もろくなっちゃうなんてねぇ」


 マガモさんはいつもと同じ声に戻った。


マガモ「そうだそうだ、あそこに行く前に、備えが必要だねぇ、そうだ、これを持っていきな」


 マガモさんは部屋に戻り、あるものを持ってきた。


蒼「銃!?」


 急に近代的な武器をマガモさんは私に託してきた。

さっきの暖かかった空気が、一気に冷え切ったように感じた。今日までずっと平和に暮らしてきた。釣りをして、料理を教えてもらった。


          でも


 目の前に渡されようとしているのは、人を殺すための道具だ。私はそれを、受け取らないといけない。


マガモ「この先、絶対に使うことになるだろうねぇ、その時は、タダでは帰れないだろう」


 その発言に、冷や汗が背筋を伝う。


蒼「で、でも銃なんて使い方わからないですよ!」


マガモ「大丈夫大丈夫、あたしが教えてあげるよ」


 ぐっと重い考えが広がる。ここは異世界だ。元々の世界のように法律がなければ、守ってくれる警察の存在もいない。

自分が銃を使うってことは、殺され、殺す可能性がある。


     私はそんなことはしたくない。


マガモ「ああ、もう夜遅い、あんたももう寝な、睡眠が足りないと明日に支障が出るよ」


 そう言い、マガモさんはトンビコートを羽織り、部屋に戻っていった。


 部屋に戻り、布団に入る。その時、横から声が聞こえた。


ソラ「マガモさんと話していたの?」


蒼「あ、うん」


 私は目をそらし、テンパった。


ソラ「マガモさんから何か話されたんだろ?」


ソラ「まあ、良い。少し言いたいことがあるんだ」


ソラ「明後日の朝にここを出る」


 その言葉に目を見開いた。


蒼「え、もう出るの?」


ソラ「あまり、長居し過ぎると良くないからな」


蒼「…マガモさんはそれを知っているの?」


ソラ「あの人のことだ、最初からずっと気づいていただろう」


蒼「……そっか」


 一晩にして、私の頭の中では整理しきれないほどの情報量が話された。

マガモさんのこと、ソラのことを考えるとやるせない気持ちが浮かび上がってきた。


私は今後について考え、眠りについた。


 


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