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蒼天の羽  作者: に
第一章 廻り・招かれて…
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8話 夕マズメ

 目を覚ますと、昨日と同じ木の天井が見える。朝日は眩しい。まるでお天道様が笑ってるように感じる。


 起き上がると、いろいろな荷物が出されているが、きちんと整理されている。様子を見てみると何やらソラは荷物を整理しているようだ。


蒼「何をしているの?」

 

ソラ「明日はとうとう出発だろ?」


そうだ、明日は遂にこの家から出発するのだ。最後の一日しっかりと恩を返さないと。


バンッ


マガモ「飯やぞー」


 相変わらずマガモさんはノックもせずにドアを開ける。 


マガモさんは並べられた荷物をずらりと見渡す。


マガモ「あー、今日出るってことかい?」


ソラ「いや、明日の朝に出ることにしますよ」


マガモ「そうかいそうかい、ならあとで蒼をちょっと借りていいかい?」


一体何をさせられるのだろうか。


 私たちは居間に降りていき、食事を始める。


マガモ「ソラ、何か必要な物はあるかい?」


ソラ「大丈夫、基本的な準備はできてますよ」


 今日の朝食は、魚のあら汁とサラダらしきものと、昨日と同じ魚の塩焼き。そして、見慣れない食べ物が置いてあった。


穀物だろうか?円形で、見た目はパンによく似ている。


食べてみると香ばしく、ほのかに甘がった。食感はスコーンやフォカッチャのような食感に似ている。


蒼「これなんですか?」


マガモ「それはねぇ、稗で作った焼き物だよ」


ソラ「これは乾燥させて、保存食にしたり、冷やして保存しておくこともできて、腹持ちも良いんだよなこれ」


 食事が終わり、マガモさんが話を始めた。


マガモ「蒼、あんたには銃の使い方を教えるよ」


あ、そういえばマガモさんは昨日の夜に銃の使い方を教えてくれると言っていたことをすっかり忘れていた。


マガモ「よっこらしょっと、ちんたらしてたら日が暮れてしまうよ」


マガモ「上に行って銃を取ってきな」


 銃を取りに行くために、部屋に戻る。


蒼「銃の使い方って……」


ソラ「まあまあ、知識があるだけでも抑止力になるからさ、あった方がいいと思う」


蒼「そうかなぁ」


今までの人生で武器、ましてや銃なんて触ったこともないのに、今日、それを初めて使うことになるなんて思いもしなかった。


ふと思ったことがある。ソラはなぜ銃という近代武器があるのに銛を持っているのだろうか。


蒼「なんでソラは銃を持ってないの?」


ソラ「あーなんでだと思う?」


たまにソラはこういう面倒くさいことをする


蒼「使えないから?」


ソラ「半分正解ってとこかな」


ソラ「銃って基本的にウミネコには効かないんだよね」


蒼「え?ウミネコって銃効かないの?」


ソラ「正確に言えば、決定打にならないんだ」


ソラの話によると、ウミネコに銃を撃ったとしても、失明や足止め程度にしか使えず、倒す決定打にはならないらしい。


蒼「じゃあ、ウミネコって倒せないの?」


ソラ「いやあいつらにも弱点がある」


ソラ「核だ」


ソラ「核は、俺らでいうと心臓のところにあってここを潰すことで奴らを倒せる」


どんな生き物にも弱点はあるんだなぁ


蒼「じゃあ、それと銛がどう繋がるの?」


………


ソラ「てへ、あんまし関係ないよ」


そろそろしばいたろかなこいつ


ソラ「ま、強いて言うなら使いやすいからかな」


ソラ「銃とかを使うのが苦手なのもあるけどさ」


バンッ


マガモ「はよ来いやぁ!」


蒼「あ、はい」


 マガモさんに怒られ、庭に連れて行かれる。

左側には畑があり、私の嫌いなきゅうりや、好きなキャベツなどが栽培されている。


右側には木造でいくつかの道具が置いてある売店のようなものが建てられている。


中央には的が置いてあり、恐らくあの的を撃つのだろう。


蒼「あの、本当に使わないといけないんですか?」


マガモ「まぁ、できれば使わないことが一番なんだけどねぇ」


マガモさんは銃を持ち、弾を詰め込む。


マガモ「今から銃の使い方を教えるからしっかりと覚えな」


上の黒い部分を引き、的に向かい引き金を引く。


パン!


 周囲は火薬の匂いが広がり、的は吹っ飛んだ。


マガモ「ほら、やってみな」


蒼「え、今のでもうやるんですか?!」


マガモ「大丈夫大丈夫、簡単にできるもんだよ」


 私は今、初めて銃を使う。下手したら人を死なせかねない代物だ。気をつけて使わないと。


弾を詰めて、上のスライドを引く。


マガモ「ちゃんと肘を伸ばしな、両手で持って的をよく見ろ」


引き金を引く。


パン!


 的には当たらず、外してしまった。


マガモ「初めてだし、仕方がない」


マガモ「今日は当てるまで飯抜きだよ」


蒼「ファ!?」


 つい声が出てしまった。最後の日にあの美味しいごはんが食べられないなんてそんなんいやに決まっとるやろがぁ!


マガモ「ま、できるようになったら呼びな」


マガモさんは家に戻っていく。


 数十分後


蒼「………当たらない」


銃がぶれて、どうやっても的に当たらない。


何発撃っても一発も当たらず、苛立ちが湧いてきた。


 更に1時間後


蒼「あぁ!」


惜しくも弾は、板のすぐ横を通り外れてしまった。


蒼「やっと終わると思ったのに…」


 もう何時間が経っただろうか、日が沈み、空はオレンジ色になっている。


銃を撃つと意外に体力を使うし、いくら一つのことに集中するのが好きな私でも、ここまで続けると、流石に集中力もすり減ってくる。


蒼「はぁはぁ、これで最後にする!」


 私は深呼吸をし、集中する。


 風や波の音が静まり、全ての音が消えたように感じる。


パン!


 弾丸が当たり、的は砕け散る。


蒼「よっしゃあ!!」


パチパチパチ


後ろから拍手の音が聞こえる。


マガモ「良くやったねぇ」


マガモ「これで、お前さんも一人前だ」


マガモ「今夜の飯は人一倍おいしい料理を振る舞わせてもらうよ」


人一倍おいしい料理かぁ、拘束が終わったあとだからめちゃくちゃ美味いんだろうなぁ


マガモ「あと、あの服じゃあこの先動きにくいから服をあげるよ」


何から何まで教えてくれるマガモさんには、感謝しかない。


蒼「ありがとうございます!」




 家に戻り、少し休憩をする。


コンコンコン


マガモ「疲れているところすまないねぇ、ソラを呼んできてくれないか?」


あ、疲れていたからか、ソラがいないことに気づかなかった。


蒼「どこにいるんですか?」


マガモ「ソラは釣りをしていてねぇ、今は夕マズメだから今夜の魚を釣りに行ってもらってるんだよねぇ」


マガモさんに言われた通り、ソラを呼びに行く。


 潮風が吹き、日がどんどん沈んでいく。波の音はいつもより静かで、影が自分の背丈より高くなっている。


蒼「おーい、ソラー」


ソラ「あ、もうそんな時間?」


ソラのバケツに魚が10匹ほど入っている。


ソラ「蒼が呼びに来たってことは、『的』当てたんだね」


蒼「うん!」


 2人は家に戻る。


玄関を開けたとき、温かい料理の匂いが漂っている。


銃の練習で疲れ切った身体は、空腹で限界だった。お腹もぐうぐうと鳴いている。


マガモ「今日は鍋やでぇ」


居間に入り、料理を見つめる。


 鍋にはつみれがいくつかあり、白身魚が入っている。疲れた身体にはこういう温かくて素朴な味が染み渡る。


他には焼き魚や稗パンがある。


蒼「うっ!きゅうり…」


手前の方を見てみるときゅうりのサラダが置いてある。


マガモ「庭にいた時に、みょーにきゅうりのことを見ていたからねぇ」


マガモ「顔の表情的に嫌いなんだろう?」


蒼「……はい」


私は食べ物の中でもきゅうりが嫌いなのだ。あのシャキシャキの食感が気持ち悪くて、味もしない水っぽい感じが嫌いだ。


マガモ「好き嫌いはよくないねぇ」


ソラとマガモは笑みを浮かべている。


少し怒りが 湧いたが、空腹に耐えきれず鍋を貪る。


マガモ「まあまあ、そんなに急かさず食べなくてもいっぱいおかわりはあるよ」


なぜだろう?


あんなに嫌いだったきゅうりが不快なく食べれている。


空腹は最大のスパイスというのは本当らしい。


 美味しい料理を食べ終わり、風呂に浸かり、部屋に戻る。


マガモ「今日は早く風呂に入って、早く寝な」


布団を敷き、照明を消す。


暗い部屋の中で、私はマガモさんの家での出来事を思い返していた。


魚の釣り方、料理の仕方、銃の使い方。


そのとき、ふと気づいた。


マガモさんは『生きるための方法』を全部教えてくれていたんだ。


私たちがこの先も生きていけるように。 


最初からずっと、私たちのことを考えていてくれたんだ。


私は小さく微笑み、眠りについた。


次の日の朝


蒼「ちょっとソラこの服装変じゃないよね?」


ソラ「大丈夫大丈夫、普通の服装だよ!」


服は青色で前に着ていた服と酷似しているが、腰部分には、収納袋や銃などの色んな物がついていて、ザ・冒険家って雰囲気が加わったような感じだ。


マガモ「準備はできたかい?」


マガモさんは何か筒状の物を持っている。


マガモ「蒼、門出の祝いってことでこれを受け取ってくれ」


私はハッとした。受け取ったのは生きるための道具、釣り竿だ。

初めて釣ったあの感覚、あの達成感が記憶に広がる。


マガモ「あたしゃ、ここまでしかできないけどさ」


マガモ「無事に帰れるように応援するよ!」


マガモさんは笑っていた。


蒼「何から何まで本当に本当にありがとうございます!」


 玄関に行き、靴を履く。


棚には写真が置いてあり、マガモさんと見知らぬ誰かが写っている。


ソラ「おい、こっち向けよ!」


少しぼーっとしていたようだ。


蒼「ごめんごめん、ちょっと気になっちゃってさ」


ソラ「ん?まあ良いけど、お別れの挨拶をちゃんとしろよ」


二人はマガモさんに言った。


蒼・ソラ「行ってきます!」


これにて第一章は終わりです。


第一章を読んでくださり、本当にありがとうございます。


今後とも『蒼天の羽』を読んでくださると幸いです。

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