5話 深夜談義
※注意この話には出血表現などが含まれています。
苦手な方は読まないことを推奨します。
雨音が周りに広がり、木々が揺れ動いている。強い風が辺りに吹いていたことは、肌では感じるが、私はそんなことなど気にも留めなかった。
「……君、大丈夫?」
目の前には※が怪我をして倒れていた。体にはいくつもの傷があり、穴も空いていて、出血も激しい。
「あぁ、なんて酷い怪我だ」
目も虚ろになり、息も絶え絶えで、もう息絶える寸前だ。声もかすれていて、徐々に衰弱していっているのがわかる。
なぜこんなにも惨たらしいことができるのだろうか。
殺そうとするなら最後まで殺さないと、※は長い時間ずっと苦しみ続け、誰もいないところで死んでしまう。
そんな生き地獄は生命に対しての侮辱だ。
私の憤怒は、抑えきれないほどに膨れ上がっていた。だが、まずは※を助けてあげないといけない。
傘を下ろし、※をタオルに包む。優しく持ち上げると体は冷たいが、さっきよりもゆっくりと息をしている。タオルには血が滲んでいた。さっきより出血が多くなっている。
※は私の腕に安心したのか、はたまたそれだけ力がなくなっているのか、なにも抵抗しなかった。
私は※を助けたい一心で語りかけた。
「もう大丈夫だ、必ず君を助けるから!」
その時、ある音が聞こえた。
パンッ!
蒼「うわぁぁぁぁ!」
全身から水分が抜けきったように、嫌な汗が服を滲ませる。手や足も震えて、まるで金縛りにあったかのように体が動かなかった。息もろくにできず、過呼吸になりそうなほどだった。
蒼「今のは夢?いや、失った記憶…か?」
あの記憶、あの景色、あの音、あの匂い、あの感覚が脳裏にこびりついて離れない。
外は真っ暗で、鈴虫の鳴く声が外に響いている。時計を見てみると、もう深夜の2時だ。
隣で無防備で寝ているソラは大の字になって寝ていて、とても気持ち良さそうにスヤスヤと寝ている。それを見て、風邪を引かないか心配になる。
蒼「そ、そうだ、水を一杯貰いに行こう」
さっきの出来事で、心臓が張り裂けそうだ。手や足の震えはだいぶ収まり、私は落ち着くために、台所へ水を貰いに行くことにした。
部屋を出る前に、ソラがあまりにも風邪をひきそうだったので布団を被せ、台所へと向かった。
床は凍てついたように冷たく、木製の床が軋む音が薄暗い廊下に広がる。自分が歩くにつれ、家の夜の静けさが際立つ。
蒼「なんかお化けとか出てきそう…」
私は失礼ながらそう感じてしまった。照明も明かりもない、廊下は昔の実家を彷彿とさせる。
そんな暗い場所が大嫌いだ。
ガシャ!
突然の音に、全身が震えてしまい、腰を抜かしてしまった。恐る恐る奥を見てみると台所の照明が灯っている。
こんな時間に起きている人などいないと思い、台所の扉を開ける。
蒼「だ、誰だ!」
モチモチ
マガモ「家主だよ」
そこには、目を細めたマガモさんが何かを頬張っていた。
蒼「こんな時間になにしてるんですかぁ」
私はさっきまでの不安や恐怖がなくなり、安堵した。
マガモ「いやー失敬失敬、夜中に小腹が空いてねぇ、驚かしてしまってすまないねぇ」
マガモさんは手を頭に乗せながらペコペコしている。
もしかしたら、泥棒か何かいるかと思ってしまったが、よくよく考えるとここはマガモさんの家だ。マガモさんがいつ起きていても仕方がない。
モチモチモチ
さっきからこの人なに食ってんだろ?と考えながら、マガモさんの食べているものに注目する。
その食べ物は香ばしく、私までお腹が減ってしまうほどだった。例えるなら、ししゃものような香ばしい匂いで、金色に輝く身はとても大きかった。
…まあ、気になったので聞いてみた。決して食べたいから聞いたわけではない。決っっしてな。
蒼「何の食べ物を食べてるんですか?」
マガモ「あーこれかい?これはエイヒレさ」
蒼「エイヒレ?ですか?」
私はそれを聞き目を輝かす。
マガモ「エイヒレはねぇ、エイのヒレを干した、要するに干物だよ」
マガモ「あたしは少し炙るぐらいが好きでねぇ、食感を楽しみたいんだ」
マガモさんが話していたが、エイヒレの匂いであまり聞いていなかった。
マガモ「ところで、なんであんたはここにいるんだい」
蒼「あ、私はちょっと水を一杯貰いにきまして」
マガモ「そうかいそうかい、なら一緒に茶でもどうだい?いいツマミがあるんだ」
私はお腹からグゥーっと音が鳴る。
蒼「では、お言葉に甘えて」
私は人前でお腹を鳴らしてしまったことに、はにかんでしまった。
マガモ「……そうかい」




