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蒼天の羽  作者: に
第一章 廻り・招かれて…
5/9

4話 初めての釣りはとても楽しいです

 釣り糸を海の中へ落としていく。水面には波紋が広がり、ウキはプカプカ浮いている。

 私は基本的におとなしいタイプだから、こういう一つのことに集中することが好きだ。今はこの静かな時間がとても楽しく感じる。


 ツンッ ツンッ ポチャッ


 ウキが急に沈み、釣り竿がずっしりと重くなった。そう初めて魚が食いついたのだ!

 私は初めて魚が掛かって心が踊ったが、マガモさんが言っていたように優しく竿を上げた。


ピチピチピチ


蒼「釣れたぁぁ!!」


 初めて魚を釣り上げ、私の心は達成感に包まれた。

 釣り上げた魚は、背ビレがトゲトゲした白黒の小さな魚だった。


蒼「マガモさーん!魚釣れました!」


マガモ「あーサンバソか」


 マガモさんは少し顔をうつむけた。


蒼「この魚の名前ですか?」


マガモ「いや、正式な名前はイシダイっていう魚なんだがなぁ……」


マガモ「エサ取りという釣りエサをよく食べる割に身も少なくて、あまり美味しくないんだよねぇ」


蒼「そうなんですね…」


 マガモさんは勢い良く顔を上げた。


マガモ「でも!初めての釣りにして魚を釣り上げたのはすごいことだ」


マガモ「普通はエサだけ取られるってことが多いのにさ、あんたセンスあるよ!」


 私はセンスがあると褒められ、少し照れくさく感じた。


 それからあっという間に2、3時間が経った。楽しい時間ほど早く感じるのはなぜだろうか?そう思いながら釣れた魚の数を確認する。


蒼「5匹かぁ」


 おっと、マガモさんが歩いてきた。


マガモ「そろそろ家に戻るから片付けをするよ」


マガモ「おー5匹も釣れたのかい。初めてにしては上出来だ」


 マガモさんは竿の先の輪を引っ張り、竿から糸を外した。針を薄い木の板にかけ、ぐるぐると板に糸を巻き付けた。


マガモ「行くよ、ほらソラも早く片付けな!」


ソラ「はーい」


 バケツを持ち家に戻っていく。


 家に戻り、荷物を片付けていると、マガモさんに呼ばれた。


マガモ「今から魚のさばき方をあんたに教えるよ」


蒼「え、何で教えてくれるんですか?」


マガモ「知っていたらこの先、色々と便利だろう?」


蒼「でも私、料理なんてしたことがありませんよ?」


 そう、私は生まれてから料理なんて一度もしてこなかったのだ。


マガモ「大丈夫大丈夫、結構簡単にできるからやってみな」


蒼「あぁ、はい」


 ということで、マガモさんから魚のさばき方を教わることになった。


 マガモさんは私のバケツをとり、釣った魚をみた。


マガモ「おーあんたは運が良いねぇ」


マガモ「まさか、初めてでカサゴとアジが一匹ずつも釣れるとは思わなかったよ」


マガモ「まずこいつらのことを締めて血抜きをする」


マガモ「今回はカサゴをお作りにして、アジは塩焼きにしようか」


 マガモさんはまず、カサゴ?という魚をつかみ、エラに包丁を刺し込んだ。


マガモ「こうやってエラに刺して、神経を切り落とすんだ」


 次に魚のお尻に刃を入れて、すーっとはらわたを切り裂いた。


マガモ「このときの包丁は逆さ包丁でやるんだ」


 その後、手で内臓を取り、黒い膜のような物を取り除いた。


マガモ「ここの黒い血合いを取らないとエグみが出るからしっかり取るんだよ」


蒼「はい」


「今回はお作りにするから三枚下ろしにするが、基本はこれで下処理は終わりだよ」


蒼「そうなんですね」


マガモ「次はあんたがやってみな、三枚下ろしとかはあたしがやるからさ」


 まずはアジのエラに包丁を刺し込み、お尻からすーと腹を切り裂き内臓を取った。


蒼「あれ?」


 最初は結構難しいと思い、ぶっちゃけ面倒くさいと思っていたが、簡単にできてしまい拍子抜けしてしまった。


マガモ「ほら、簡単にできたろ?」


 マガモさんに教えてもらったあと、料理を机に持っていき、ソラを呼びにいった。


蒼「おーい、ソラー!」


ソラ「なにー」


蒼「ごはんできたよー」


 全員が揃ったので、食事を始める。自分が釣った魚を食べるのは新鮮でいつもより美味しく感じる。


 そんなとき、マガモさんが話しだした。


マガモ「蒼、あんたに渡しておきたい物があるんだ」


 マガモさんは小さな巾着を3つ渡してきた。


蒼「なんですかこれ?」


マガモ「これは「収納袋」というものでねぇ」


マガモ「大きな物や生き物をこの中に入れることができるんだ」


蒼「こんな小さな袋でですか?」


 そんな嘘みたいなことが本当に起きるのかと疑った。


マガモ「こうやって袋の紐を引っ張るとねぇ…」


 ポンッ!


 私は目を疑った。あんなに小さな袋から、手品のように2m以上の釣り竿がでてきたのだ。


蒼「ど、どうやったんですか!?」


マガモ「ハハハ、種も仕掛けもなんもないよ」


蒼「これ一体何なんですか?」


マガモ「こういう不思議な力を持つ物を『遺物』って言うんだ」


蒼「遺物…ですか」


 再度この世界が異世界だと認識させられた。


マガモ「あぁ、もうこんな時間か、あんたたちもそろそろ部屋に戻りな」


 部屋に戻り、ソラと軽い雑談をした。


蒼「もしかしてさ、ソラの荷物が少なかったのって収納袋があったから?」


ソラ「そうそう、この袋があるから結構動きやすいんだよね」


「でもこれ、出す時に荷物が一気に出てきちまうからあんまり多くの荷物が入れらないんだよね」


 私はある疑問を抱いた。なぜそんな便利な物があるのに銛をいつも背負っているのか。


蒼「ねぇなんで収納袋があるのに、銛をいつも背負っているの?」


ソラ「えーとね、一応この銛も遺物らしいんだけどさ」


ソラ「収納袋には他の遺物を入れることができないんだ」


蒼「なるほど、結構デメリットも多いんだね」


 雑談を終えて、照明を消して布団に潜った。今日は色々なことを体験できて、本当に楽しかった。あぁこんな毎日がいつまでも続けばいいのに。


 私はそう考えながら夢の中へと沈んでいった。



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