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『彼とは、昼休みにしか会えなかった』  作者: ともり。


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4/11

「休日には会えない」

# 第四話


## 「休日には会えない」


気づけば、

なぎと昼を食べるようになって半年が経っていた。


最初は緊張していたはずなのに、

今では自然に隣へ座っている。


「今日は定食にします?」


「うーん、かなとさんは?」


そんなやり取りも、

当たり前になっていた。


なぎは、

僕の好きなメニューを覚えていた。


「かなとさん、唐揚げ率高くないですか?」


「いや、ここの唐揚げ美味しいんですよ」


「わかります」


笑いながら、

なぎも同じものを注文する。


そんな小さなことが、

嬉しかった。


昼休みの一時間。


それだけで、

十分幸せだったはずなのに。


最近は、

少し違った。


もっと話したい。


もっと知りたい。


昼休みが終わるたび、

物足りなさが残る。


仕事中、

ふとスマホを見てしまう。


なぎからLINEが来ていないか確認して、

来ていないことに少し落ち込む。


完全に、

好きだった。


自覚したくないくらいには。


「かなとさんって、休みの日何してるんですか?」


ある日の昼休み。


なぎが箸を止めて、

何気なく聞いてきた。


「え、僕ですか?」


「はい」


「映画見たり……家いたりですかね」


「インドアですね」


「なぎさんこそ、友達多そうじゃないですか」


そう言うと、

なぎは少し困ったように笑った。


「いや、全然ですよ」


たぶん、

そんなことない。


優しいし、

話しやすいし、

絶対モテる。


でも、

本人は本当に自覚がなさそうだった。


「最近、なんか映画やってましたよね」


なぎがスマホを見ながら言う。


「あー、話題のやつですか?」


「それです」


そこまで言って、

会話が途切れる。


今だ。


そう思った。


でも、

喉が変に乾く。


誘うだけ。


ただ、

「一緒に行きませんか」って言うだけ。


なのに、

心臓がうるさい。


もし断られたら。


もし、

困らせたら。


そんなことばかり浮かぶ。


でも。


このままずっと、

昼休みだけで終わるのは嫌だった。


「……もしよかったら」


自分でも驚くくらい、

声が小さかった。


なぎが顔を上げる。


「今度、一緒に行きませんか?」


言った瞬間、

逃げたくなった。


なぎは少しだけ目を丸くして、

それから小さく笑った。


「休日ですか?」


「……はい」


「なんか、不思議ですね」


「え?」


「かなとさんと、仕事以外で会うの」


その言葉に、

胸が苦しくなる。


期待してしまう。


もしかして、

って。


でも。


「あー……でも最近、休みの日ずっと寝てるんですよね」


なぎが苦笑いしながら、

水を飲む。


「あ、そうなんですね」


なんとか笑って返す。


断られたわけじゃない。


でも、

誘いに乗ったわけでもない。


その曖昧さが、

逆に苦しかった。


「忙しいですもんね」


「ですねぇ……」


なぎは申し訳なさそうに笑う。


優しい。


本当に優しい人だ。


だから、

期待してしまう。


昼休みが終わり、

二人で店を出る。


午後の日差しが、

ガラス越しに差し込んでいた。


エレベーターの前。


いつもの距離。


いつもの空気。


「じゃあ、また来週ですね」


なぎが笑う。


「はい。また」


エレベーターの扉が閉まる。


映った自分の顔が、

思ったよりちゃんと笑えていて、

少し安心した。


――結局。


僕たちは、

昼休みの外では会えないんだな。


そう思った瞬間、

胸の奥が、

少しだけ痛かった。


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