虹色の明日へ。
スタッフロールはなかった。
寝ても覚めても、私には明日が続いている。
それは世界も同様で、人々の間には魔物がいなくなった平和な日常が続いていた。
でも中には、急に変わった現状に戸惑っている人もいて、日々戦いを繰り返していた人たちなんかは、今後どうしたらいいか分からない事も多いようだ。
私にも、この先の事は分からない。
だって世界は、もう私の知らない明日を迎えたのだから。
「雨、止まないですね」
隣に座るアリスが、空に向かってぽつりと呟く。
「止まないねえ」
つられるように、私の口もそう呟いた。
薄い雲が空を覆い、辺りに小さな雨を静かに落としている。時々木の葉っぱから、重なった水の粒がぽとりと落ちていくのが見えた。
横目でアリスの方を眺めると、彼女は変わらず空をボーっと見上げている。
柔らかな金の髪に、どこからかこぼれた雫が一つ乗っていた。
私がそれをちょんと触ると、雫はアリスの髪の上を流れるように滑っていく。
「なんですか?」
わたわたと髪を触りながら、アリスはこちらに向き直った。
青く澄んだ瞳が、私を真っすぐに捉える。きっと重なった雲の向こうには、こんな綺麗な色の空が広がっているのだろう。
私たちは旅の途中だった。
以前から考えていた、色んな国を巡る旅だ。
まずは他国に遠征した際、私たちの部隊が行かなかった風の国と土の国。
今は私とアリス、二人でそこに向かっている。
その先は、まだ考えていない。
前に行った国をまた巡るのもいいかもしれない。
「ここ、魔物との戦いで崩れちゃったんでしょうか?」
私たちは今、崩れた石造りの建物の陰で雨宿りをしていた。
形はほとんど原形を留めておらず、天井もぽっかり空いている。
色んな所に苔が詰まっていて、崩れた跡もだいぶ古そうだ。
ここに住んでいた人は、もうずいぶん前に去ってしまったのだろう。
「まあ、雨宿りできてよかったですよ」
「そうですね」
他愛のない会話。
あとどれ位ここに座っているのだろう。
一時間か二時間か。それとも明日の朝までか。
それもいいかもしれない。
急ぐ旅でもないし、ゆっくりと進めばいい。
「あ、ラグナさん。なんか止んできましたね」
そんな事を考えている内に、意外と早く雨は止みそうだった。
アリスは両手でそれを確かめるように、雲の下へと飛び出していく。
まだ止み切っていないのに気が早い……。
アリスは小さな雨粒の中を、くるくる楽しそうに回っている。
「ラグナさん。見てください、あれ!」
アリスがそう言って、急に私の手を引っ張り上げた。
「わっ! ちょっと、どうしたんですか?」
アリスの目と指先が遠くを指している。
私はバランスを崩しながら、その先の景色へと目をやった。
「わあ」
二人の声が自然と合わさる。
虹……。
大きな虹が空を跨いでいた。
「ラグナさん、綺麗ですね。今日もいい事ありそうな気がしてきました」
アリスはそう言って、めいっぱい笑顔を輝かせる。
それは虹の彩りにも負けないくらいだ。
私たちが向かう先に、虹は架かっている。
虹に向かって、道は続いている。
「ラグナさん。行きましょう!」
「はい!」
まだ見えない明日へ。
あの虹の彼方へ。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
これで物語は終わりです。
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