決戦前の最後の休息。
「みんな、この戦いが終わったらどうしますの?」
魔王との戦いに向けての最後の休息。
みんなの緊張をほぐそうとしてか、アメリアがみんなに問いかけた。
「どうしたんだ急に?」
「いえ、なんとなく気になりまして」
「ふむ……、俺はもう少し国事に関わろうと思う。この戦いを通して、俺は色んなことを学んだ。ヴェルオールの王子として、それを活かしていこうと思う」
なんて立派な。私はその言葉に感動し、心の中で涙を流した。
出会った時はあんなに自分の強さにこだわっていたのに、今では王子として広い視野で今後の事を考えている。
「すごく素敵です」
「ありがとう。そう言う君は何かあるのか?」
「え、私ですか?」
「ああ。君から聞いてきたのだから何かあるのだろう?」
アメリアは顔を赤くしてモジモジしている。
ははーん。私の乙女センサーが反応した。
きっとあれだ。彼女は告白したいとかそんな感じだ。
でも……、このタイミングでその会話って……。
「その……、私は……、この戦いが終わったら、想いを伝えたい人が」
これ……、よくあるフラグじゃないですか?
思いを伝えたい本人、ここにいるし!
ほわあああ。ヴァン王子に抱かれて、途切れゆく意識の中で想いを告げるアメリアの姿が見えるよおお。
脳内の私よ。不吉な想像はやめろおおお!
「ええええー!?」
そんな中、突然アリスが驚きの声を上げた。
なぜか彼女の顔も薄っすら赤い。
「誰ですか。誰ですか!?」
「そ、それは内緒よ」
私の不安とは裏腹に、女子はキャッキャと盛り上がっている。
「お前はどうするんだ?」
ヴァンもそのノリに付いていけないといった様子で、こちらに話を振ってくる。
「自分は……、この戦いが終わったら、色々な所を回ってみたいですね」
「ほう。冒険者になるということか?」
「はい。この戦いで色んな国を周りましたけど、私の知らないことが沢山ありました。それに何より、楽しかったんです。だから、もっと色んな所を回りたい」
私の言葉を、みんなは真面目な様子で聞いてくれた。
魔王を倒してこの物語をクリアしたら、世界はどうなるのか。転生した私はどうなってしまうのか。不安なことはいくつかあったが、それでも私はその先に想いを馳せた。
「それもいいな」
「ラグナっぽいわね」
「すごく楽しそうです」
私たちは、まるで子供のように今後の事を語り合った。
色んな事を話しまくったので、フラグも混乱して誰にも付けられないだろう。
皆の夢。それを実現するために私たちは立ち上がる。
最後の休息は、これで終わりだ。
* * * * *
私たちの前に、巨大な扉が立ちふさがった。
禍々しい装飾。悪魔のような生物が、こちらを睨むように彫り込まれている。これは……、職人の仕事。
「この先に魔王がいるんですね」
アリスの顔が強張っている。周りのみんなも同じ表情だ。
私も思わず喉をゴクリと鳴らしてしまう。
目の前の扉が、重苦しい音を立てながらゆっくりと動き始めた。
これは誰が開け閉めしているのだろう。
「ここまでやって来たか人間よ」
うおおお。でかい。予想以上にでっかい。国を襲った巨人ほどではないが、その体は二階建ての家ぐらいある。
ゲームでは画面に入り切っていたので、ここまで大きいとは思っていなかった。
それにしても威圧感が尋常じゃない。
さすが魔王。どの魔物よりも怖さが振り切っている。
「下等な生き物の分際で、我に勝てると思っているのか。わざわざ死ににやってくるとは、ご苦労なことだ」
言葉が通じるからだろうか。他の魔物よりも余計に怖く感じる。
「わ、私たちは負けません!」
「貴様が聖女か。人間も貴様のような小物に未来を託すとは、虚しいものよ」
宿命の相手である魔王と聖女。二人の会話イベントが進んでいく。
私もさすがに、この場面で空気を読まず攻撃なんてしない。
「ならば始めようか。我らと人間どもの未来を決める戦いを」
長い会話の末、やはり戦いが始まってしまうようだ。
ヴァンたちも武器を手に取り、魔王に向けて構えをとっている。
「あの!」
その場の一同が私を見る。
ああ。なんかこの空気、苦手だ。でも、今言わないと……。
「人間と、魔物が……、共存できる道はないんでしょうか!?」
なに言ってんだこいつ?
そんな目でみんなが私を見る。
おあああ! 言わなきゃよかったあああ!
やっぱりおかしいよね。布団の中に潜り込みたい。




