死の大地。
灰色の雲に覆われた空。焼け焦げた大地。枯れ果てた自然。
魔族の土地は、想像以上に荒んでいた。
寒い土地を越えて来たのに、ここではその寒さすら感じない。
死の大地。そんな言葉が合う土地だった。
「なんだか、息苦しいですね」
アリスがたまらない様子で呟く。
私たちは、アリス、ヴァン、アメリアの、四人パーティーを組んでこの地に入っていた。
他の全軍が魔物たちと正面からぶつかり、その隙に私たちが魔王と戦うという作戦だった。
ざっくりしすぎな上に私たちの責任が重すぎるのだが、そこはストーリーの都合上しょうがないのだろう。
まあ全軍で魔王の本拠地に乗り込んでも、あの人数では詰まって動けなくなってしまうだろう。
肉壁に挟まれて身動きの出来ない、前世の満員電車のような体験はしたくない。
「見えて来たぞ。あれが魔王の本拠地だ」
「あそこに魔王が……」
ヴァンとアメリアがごくりと喉を鳴らす。
それと同時に、遠くから戦闘の音が響いてきた。
「どうやらあっちでも戦いが始まったようだな」
ヴァンが遠くに目をやる。
その先は沈んだ雲が続くばかりで、戦いの様子は分からない。
「みなさん、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ。みんなそこそこ強いですし。昨日までみっちり修業してましたから!」
不安そうなアリスに向かって、私は昨日までのみんなの様子を伝えた。
アシェルの時のような事がまた起きないように、短期間ではあったが私は出来るだけみんなを鍛え上げた。
「お前……、本当にあんな訓練を続けてきたのか?」
「はい。最近はサボってましたけど、子供の時は」
「恐ろしい子供だな……」
ヴァンがげんなりとした様子でこちらを見る。
どうやら私の訓練方法は、他の人たちには過酷だったらしい。
「のんびり喋っている暇はありませんわ。私たちも急ぎましょう」
アメリアの言葉に続き、私たちは寂れた大地の上を進んでいった。
* * * * *
「ここが入口かあ」
目の前には大きな穴が広がっていた。
それは巨大な竜の口のようにも見えて、中に入ったら食べられてしまいそうだ。先の見えない暗闇は、別の世界に繋がっているようにも思えてくる。
これは自然に出来たものなのか、それとも魔物が頑張って作ったものなのだろうか?
「これって魔物が作ったんですかねえ?」
「馬鹿かお前は。そんなことはどうでもいいだろう。くだらないことを考えてないで気を引き締めろ」
怒られてしまった……。
「さあ。みんなが戦ってくれているうちに急ぎましょう」
アメリアが先頭を行く。こんな不気味な場所にも動じないなんて、なんて鋼メンタルなんだ。
私たちは急いで彼女を追いかけた。
中を進んでいくと、真っ暗だった景色が自然と明るくなる。
どういう仕組みか分からないが、やっぱりこういう所は都合がいい。
「さすがに魔物が手ごわいな」
そう言いながら、ヴァンが額の汗を拭う。キラキラと光るその仕草がカッコいい。
これは……、スクショ魔法の開発が急がれるな。
まぁそれはいったん置いておいて、確かにここには高レベルの魔物が揃っていた。
最終ダンジョンということもあってか、魔物側も張り切っているようだ。
「ラグナ。サポート魔法たのみますわ!」
ヴァンとアメリアの二人に向けて、私はサポート魔法で援護する。
「怪我をした方はこちらへどうぞ!」
回復と防御はアリスが担ってくれている。
たくさんの戦いを経て、私たちのチームワークは抜群だ。
学園に入学したころには全く交わらなかった四人。
それが今、こんなにもうまく連携している。
もっと色んな人とパーティー組んでみたい。きっと私たちには、まだまだいろんな可能性があるんだ。
だからこの戦い、必ず勝って終わらせよう。
「ここは……、魔物がいないな」
周りを警戒しながらヴァンが私たちを呼ぶ。
ここは最後の休息場所だ。敵地で休息とはこれ如何に、という感じだが、そこは突っ込まずせっかくだから使わせてもらおう。
「いよいよだな……」
「いやあ、緊張しますね」
「お前は全然してないだろう」
そんな……。私だって心臓バクバクなのに。
ヴァンはどうにも、私のこういう所を信用していないようだ。
でもそういえば、ゲームで初めてラスボスと戦う時は本当にドキドキしてたなあ。
キャラクターがやられないように、祈りながら戦ったっけ。
あれ? 私って、元々本番に弱いタイプでは?
急に前世の記憶が頭の中に蘇る。
試合やテストの時、無駄に緊張してうまくいかなかった。学校のマラソン大会とかですらダメだった。
あああ、ヤバい。色々思い出したら心配になってきた。
ラスボスとの最後の戦い。
いくら強い力を手に入れたといっても、私はきっと緊張してしまうだろう。




