王国への帰還。
雷の国を発つ日がやってきた。
色んな想いが重なったこの国を。
ここに来た時と違って、国の様子は驚くほど変わっていた。
壊れた建物はまだそのままだが、崩れ落ちた残骸は綺麗に片付けられている。
部隊のみんなもそれを手伝っていたためか、いつの間にか国の住人たちとも仲良しだ。
見送りの人数はかなり多かった。住人総出なのではないかと思うほどだ。
思い出せば、この国では色々あった。
傷ついて、落ち込んで、這い上がって……。
全部が解決したわけじゃない。悲しみだって無くなってない。
でも確かに私たちは、ここで大切なものを得たのだ。
「みなさんには感謝してもしきれません。それなのに大したもてなしも出来ず申し訳ありませんでした。ですが、必ず国を復興させてみせます。その時は是非また来てください」
新しい王からの直々の見送り。それだけでも名誉なことだ。
国の住人たちもみんな大声で私たちに声援をくれる。
私たちはその声を背に、雷の国を後にした。
今回の遠征はこれで終わりだ。
私たちの部隊は、この後ヴェルオール王国に戻る。
一つの区切りがついたからなのか、なんだか少しだけ寂しい。
私はどうやらこの旅を、少し気に入っていたようだ。
王国までの道のりは長かった。
でもみんな、なんだかとても楽しそうだ。
国に帰れる嬉しさ。この旅で成長した嬉しさ。
色んなものが重なっているのだろう。
そういえば始めはキャンプが苦手だったんだよなあ。
それも今では慣れてしまった。狭い所で横になって固い所で寝るのも慣れてしまった。
思えば私も逞しくなったものだ。
前世の自分からはまったく想像できない。
私はこの旅で、少しは成長できただろうか?
* * * * *
懐かしい景色。旅立ちの国、ヴェルオール。
私たちは帰ってきた。
大きな仕事をこなした後の達成感は格別だ。
私は早速、部屋のベッドの感触を楽しんでいた。
ふわっふわ。もうふわっふわ。
キャンプでの睡眠にもだいぶ慣れてきていたが、やっぱりベッドは最高だ!
もう一生起き上がりたくない。
帰ってきた私たちを、国は盛大に迎え入れた。
当たり前だ。私たちは国に、いや世界に関わる大事を成したのだ。
これはもうかなりすごいことだ。国から賞を貰ってもいいぐらいだ。
できればお金がいいけど。一生遊んで暮らせるぐらい欲しいなあ。
ミラたちは連日お城に呼び出されていた。彼女たちは遠征の報告で忙しいらしい。
それはアリスも同様で、国も聖女の試練の成果が気になるようだ。
私も城に呼ばれてはいたが、駄々をこねたらミラがなんとかしてくれた。生徒会長にはとても感謝だ。
国を旅立った二つの部隊。そのうち私たちの部隊の方が、先に遠征を終えて帰ってきていた。もう一つの部隊はまだ遠征中。
たぶん私が戦いを早く終わらせてしまった差の違いだろう。
国はもう一つの部隊の帰りを待って、次の動きを決めるらしい。
私はみんなが帰ってくるまでの時間を、全力でぐうたらして過ごすことに決めていた。
そういえば、ゲームにあったストーリーはもうそろそろ終わりか。
魔王を倒した後、この世界は一体どうなるんだろう?
「遠征部隊が帰って来たぞおおお!!」
窓の外から声が聞こえた。
どうやら私たちとは別の国を回っていた部隊が戻ってきたようだ。
その部隊に同行していたのはアシェル。
ヴァンの相棒であり、彼の兄のような存在。
二人が並んだその様子は、この世の何よりも美しい。彼ら二人は、この世界で私が一番推している組み合わせだった。
ヴァンとアシェルの部隊が分かれたことで、私はしばらくその光景を見ていない。
待っていた。本当に待っていたんだ。
やっと……、やっと、あの光景をまた見ることが出来る。
そしてその感想を、アメリアとまた隠れて語り合おう。
私は意気揚々と外に出た。
帰ってきた部隊は、直接城に向かったらしい。
城ならヴァンもいるはず。行けばきっと、すぐにでも二人が並んだ姿が見れるだろう。
気持ちがはやる。二人の姿を早く見たい。
さっきまでベッドから離れられなかった私の体は、嘘のように元気だ。
目の前には学生たちの人だかり。
帰ってきた人たちがそこにいるのだろう。
あれは……。
人だかりの中にアリスの姿を見つけた。
「アリスさん!」
「あ、ラグナさん……」
どうしたのだろう。彼女はどこか浮かない顔をしていた。
そばに寄ると、周りに集まった他の人たちもどこか暗い顔をしている。
「アシェルが……、死んだ?」
人だかりの中心にはヴァンがいた。その彼の口から聞こえた言葉。
私にはその言葉の意味が分からなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
遠征編はこれで終わりです。
次が最後の章になりますので、もう少しお付き合いいただければと思います。
よかったらブックマークや評価などいただけると嬉しいです。




