推しキャラと夢の共闘。
仲間たちが見守る中、私とヴァンはキュクロプスの足元にたどり着いた。
「ほわー。でっかいですねえ」
いったい何メートルぐらいあるんだろう。大きな足は、人一人ぐらいなら踏みつぶしてしまいそうだ。
こんなのが街に行ったらすぐに壊滅してしまうだろう。
「お前は、なんでそんなに呑気なんだ!?」
ヴァンがイライラを吐き出すかのように言う。
「いやあ。すみません」
いけないいけない。真面目にやらないと、また印象を悪くしてしまう。
彼と一緒に戦えるという状況に、私はすっかりテンションが上がってしまっていた。
「くるぞ!」
ヴァンに言われて見上げると、キュクロプスが右手に握ったこん棒を振り上げていた。
大木から作り上げられたであろうそのこん棒は、風を切る低い音を立てながら私たち目掛けて振り下ろされた。
衝撃で地面がえぐられる。平だった私たちのいた場所は、一瞬で小さなクレーターに変わっていた。
私は横に跳んでそれをよけたのだが、ヴァンも後方に飛びあがってうまくかわしたようだ。
この程度の攻撃はバリアで問題ないのだが、彼はしっかり自分の動きでよけていた。
やっぱりヴァンは強くなっている。さすがメインキャラの一人だ。私は心のなかでいいねボタンを連打した。
「なんて力だ」
ヴァンの顔には、戸惑いの表情が浮かんでいる。
さすがに彼は支援魔法無しであの攻撃を受けたら、一撃でやられてしまうだろう。
「危ないですよねえ。でも、遅そうなんでなんとかなりますかねえ」
「くそっ! なんでこの破壊力を見ても、お前は呑気なままなんだ!」
納得がいかないといった様子で、ヴァンが巨人に切りかかる。
足元から崩していくつもりか。文句を言いながらも、彼はしっかりと敵を倒そうとしている。
彼はもうちゃんとした戦士だ。
私は彼の邪魔をしないように、周りの雑魚を殲滅しよう。
「うおおおおお!!」
後方から仲間たちが攻め上げてくる。巨人に恐れていたみんなの士気が戻ったみたいだ。
戦況はだいぶ優勢で、前線はかなり押し上がってきている。
「よし! ヴァン王子、一気にやっちゃいましょう!」
私はヴァンにとびっきりのサポート魔法をかける。
同時に自分の剣で、キュクロプスの片足を切り落とした。
「うおおおお!」
バランスを崩した巨人に向かって、ヴァンが剣を構えて飛びかかっていく。
その剣には、通常の三倍の攻撃力が乗っている。
「ギャオオオウウウ」
巨人の不細工な口の中から、耳障りな悲鳴が突き上がった。
ヴァンの剣は、その醜い瞳を見事に貫いている。
「うおっ! うおおおお!」
剣を引き抜いたヴァンは、天に向かって雄たけびを上げた。
彼の右手はぶるぶると震えている。
この戦い、私たちの勝利だ!
* * * * *
城では盛大な祝勝会が開かれた。
広間には所狭しと料理が並び、学生たちはみなそこに群がっている。
今までどこにいたのか分からない、偉そうな風貌の人たちも押しかけて、その場は大いに盛り上がっていた。
どうやら明後日には、街でも祭りが開催されるらしい。
「皆さまそのままでお聞きください」
壇上から王女の透き通った声が響く。
その声に合わせるかのように、広間はしんと静まり返った。
「ヴェルオール王国から来ていただいた戦士たちのお陰で、わが国に迫っていた大きな脅威は去りました。まずは彼らに、惜しみない感謝を」
広間いっぱいに、大きな歓声が沸き起こった。
こういったことは初めてで、みんな照れたように周りに頭を下げている。
「とりわけご活躍されたのは、かの聖女であるアリスさんです」
アリスの元に、みんなの驚きの声と視線が集まる。
みんな聖女という言葉に反応しているのだろう。伝説の存在が、今そこにいるのだ。
だが彼女は、ただの聖女ではない。
普通の女の子でいたいと願う、聖女の中の聖女なのだ。
「そしてもう一人。魔物の群れにいた巨人に止めを刺した人物。それはヴェルオール王国のヴァン王子です」
さっき以上の声援が、彼の元に一斉に集まる。
沸いた広間の中心にはヴァンがいた。
彼はそんな状況にも動じず、澄ました様子でその場に立っている。
ああ。その姿、凛々しすぎる。かっこよすぎて脳みそ飛び出しそう。
「ちょっと、いいんですの? あなたもそれなりに活躍していたようですけど」
アメリアが飲み物を片手にやってきた。
二人で話すのは、なんだか久しぶりな気がする。
「全然! いいんですよ。二人が評価されて嬉しいです」
「あなたって、ほんと相変わらずね」
アメリアはそう言いながら、やれやれといった様子でため息を吐いた。
アリスとヴァン。二人を主役にしたパーティーは、その後遅くまで続いた。




