成長の足跡。
戦場は大きく広がっていた。あっちこっちで魔物との戦闘が行われている。
戦っているのは、部隊の仲間たちだけではない。街の人たちも一緒に戦っている。
「アリスさん。とりあえずミラさんたちと合流しましょう!」
「はい!」
私たちは部隊のみんなを探しながら、戦場をぐるりと駆け回った。
「ミラさん!」
アリスがミラを見つけて駆け寄っていく。
彼女たちは魔物に囲まれている。私はそこを目掛けて魔法を放った。
「二人とも、戻ったか」
ミラが剣を構えながら私たちを迎える。
「成果はどうだ?」
「バッチリです!」
ミラの質問に、アリスが答える。
彼女のその顔には自信が満ちていた。
「ラグナ君。みんなにサポート魔法を頼む。アリス君は負傷者の回復を」
ミラの指示に従い、周りのみんなに風を送る。
どこまで広げていいか分からない。部隊の仲間だけじゃなく、水の国の人たちにもかけてしまおう。
「これは!?」
「ラグナの風魔法だ!」
「やっと来たか。これで勝てる!」
みんなの声が戦場に広がっていく。
それと同時に、魔物たちの軍勢は押し返されていった。
「すごい」
その光景に思わず声が出た。
そんな一気に変わる? これがプラシーボ効果か。
勢いは波の様に伝わって、どんどんと前線を押し上げていく。
これならこのフェーズは、問題なく突破できそうだ。
「おおお、これは!?」
背後で別の歓声が上がった。
そこではアリスが、祈る様に両手を握りみんなに癒しの魔法をかけていた。
光魔法<キュアブライト>
つい先ほどアリスが身につけた、聖女だけの回復魔法が光る。
眩しい輝きが、傷ついた人たちをみるみる癒していった。
「すごいぞ。もう動ける!」
「こんなに何人も癒せるなんて!」
「これならまだまだ戦えるぞ!」
元気になった人たちが騒いでいる。
囲まれて絶賛されているアリスは、照れた様子だが嬉しそうだ。
さすがアリス。もう新しい魔法を使いこなしている。
彼女が評価されて私も嬉しい。
「あれが聖女の魔法か。すごいな」
その様子を見たミラが、私の隣に並んで言った。
「彼女を連れてきてくれてありがとう。これで残った魔物の一掃できそうだ」
「はい。でも――」
言葉を続けようとした瞬間、丘の向こうから大きな咆哮が聞こえた。
その場の全員の目が、一斉にそちらを向く。
ビリビリと震える地響きをともに、それはゆっくりと姿を現した。
あれは……、キュクロプス。この戦闘のボスキャラだ。
一つ目の大きな巨人。
異常な大きさの瞳が、ぎょろりとこちらを捉えている。
「なんだあいつは……」
さすがのミラも、その巨大さに驚いているようだ。
周りのみんなも同様に、信じられないといった様子でキュクロプスを見上げている。
さてどうしようか。
ヴェルオール王国に来た巨人のように私一人でも倒せるが、みんなの前でそれをするわけにもいかない。
しかし、みんな巨人の迫力に気圧されてしまっている。
さっきまでのみんなの勢いはどこにいってしまったのか。
「怯えている場合ではないぞ!」
その声に、私の胸が高鳴った。
そう……。声の主は、私の推しキャラであるヴァンだったのだ。
彼は剣を構えると、怯むことなく魔物に向かって駆けていった。
なびくマントがかっこいい。その後ろ姿に見惚れてしまう。
行く手を阻む魔物たちを、ヴァンは剣と魔法で薙ぎ払っていく。
強くなったなあ。推しキャラの成長を見ることが出来て、私はその場で昇天しそうになった。
だめだだめだ。彼を一人でいかせたら、巨人の攻撃でやられてしまう。
私は昇りかけていた魂を必死に戻す。
風魔法<ウインドブーケ>
ヴァンに向かって放たれた魔物の攻撃を、風の魔法のバリアで防ぐ。
「貴様っ!」
そんな私を、彼が鋭く睨みつける。
はああ。相変わらず厳しいお人だ。
私は心に大ダメージを受けた。
「サポートがあったらいいかな……、なんて思ったり思わなかったり……」
気の弱い私は、はっきりと言葉が出せずもごもごとしてしまう。
余計なことをするな。きっとそんな言葉が返ってくるのだろう。心の準備をしておかなければ。
「好きにしろ」
ヴァンはぼそりと呟いた。
今なんと? 今、なんとおおお!?
予想外の言葉に、私の脳が爆発した。
好きにしろ。
それはつまり、好きにしていいってことだ。
そんなことを言われたら、好きにするしかない。
彼と一緒に戦っていいのだ。彼の後ろで。彼の隣で。
私はヴァンの後を追って、そのまま戦場を爆走した。




