誰得サービス? 水着回。
醒めるような青い空、積み上がった白い雲、肌を焼くような太陽。
それはまるで、真夏の晴天。
波の運んでくる風が、滲んだ汗をすぐに洗い流してくれる。
ひきこもり気味の私でも、この爽やかさには満足だ。
「お待たせしましたー」
背中でアリスの声がする。
私は見上げていた空から、彼女の声がする方へ視線を落とした。
「うおっ!」
思わず声が出てしまった。
なんとアリスは、水着姿だったのだ。
まあ、私も水着なのだけれども。
今日は浜辺の掃除の手伝いで、私たちのパーティーは海に来ていた。
しかしまあ、なんという可愛さだ。
空のような青さの水着。ミルク色の彼女の肌によく似合う。
いつもの三つ編みとは違って、髪をアップにまとめている。
普段と違うその髪型にもドキッとさせられる。
「そ、そんなにじっくり見ないでください」
「あわわ。ごめんなさい!」
思いっきり見入ってしまった。さすがに男子が女子の水着姿を凝視するのはよくない。
私は事案にならない程度に、チラ見する方向に切り替えた。
「待たせたな。では始めようか」
アリスの後ろからやってきたミラが言った。
彼女の水着は雪のような白。まるで夏の景色に迷い込んだ、冬の精霊みたいだ。
儚すぎて溶けてしまわないか心配になってくる。
ほほお、そうか。今回は水着回か。
心の中の私がつぶやいた。
浜辺に散らばったゴミを拾って歩く。
意外にも大き目なものが転がっているなあ。それにこれは、ゴミというより残骸だ。
私は元々屋根の一部だったらしきものを拾い上げた。
魔物の襲撃による被害だろうか。綺麗な景色に見えても、細かいところには影響が出ている。
さて、浜辺はだいたい綺麗になったかな。
ゴミ置き場に集められたガラクタは山のようになっている。
「すごい集まりましたね。次は海の中ですかねえ」
アリスがそう言いながら、額に浮かんだ汗を拭った。
小麦のような優しい髪色に、青い空と海の景色がよく似合う。
私たちは揃ってザブザブと海へ入った。
足元が涼しくて気持ちいい。
「つべたっ!」
焼けた頬に水滴がかかる。
振り向くと、アリスが両手を大きく広げていた。
「あはは。気持ちいいですねえ」
屈託なく笑う彼女の笑顔は、相変わらず目を細める程に眩しい。
まるで彼女自身が太陽のようだ。
ここはひとつ、私もはしゃいでみるとしよう。
私は両手いっぱいにすくった海水を、アリスに向かって放り投げた。
「こ、このお!」
「わあ! ラグナさん、冷たいです」
二人の間で、水のかけ合いが始まった。
柄にもなく、なんだか青春してるって感じがする。景色に点描が見えるようだ。
「はあ。ラグナさん強すぎです」
アリスは諦めたように、濡れた前髪をかき分けた。
溢れた水滴が額を伝う。それはするりと、控えめだが形のいい胸の間を流れていった。
「海、楽しいですね。って楽しんでちゃいけないんですけど」
アリスが私に向かってはにかんだ。
ほわああ、可愛すぎ。これはもう人ではなく水の精だよ。
何から産まれたらこんななるのさ。
「さて。今日はこの辺で終わろうか」
夕日に染められたミラが、先に浜に上がって手を振っている。
もうそんな時間か。けっこうゴミ拾いに夢中になってしまっていたようだ。
でもこれでだいぶ綺麗になったはず。
みんな明日からは、海で安全に遊べるだろう。
「綺麗な街だな。私はこの景色が好きになった」
しみじみとした顔でミラが言う。
「私もこの街、大好きです。こうして過ごしていると、本当にいい街だなって」
アリスの意見には私も同意だ。
街が綺麗というだけではない。この街には、明るくて楽しい人がいっぱいだった。
飲食店の店員。港の露店を巡る人々。海を泳ぐムキムキの海パン。焼けた肌のお姉さんたち。
やっぱり海のある街には、陽気な人が集まるのだろうか。
そんなこの街は、私のような陰気なキャラには合わなそうに思えたが、ここの人たちはこんな自分でも馴染める陽気さだった。
なんだか人見知りが治った様な気にもなってくる。だからこの街は楽しい。
「そうだな。だからこの街は必ず守ろう」
「はい!」
私たちは、ミラの言葉に声をそろえて答えた。
「ところでアリス君。そろそろ王宮から呼ばれるはずだ。心の準備をしておいてくれ」
「は、はい!」
そうか。もうそんな時期が。
街での日々が楽しすぎて忘れていた。
おそらく魔物の侵攻も近い。この街をヴェルオール王国のようにはしないぞ。
私はまた風邪をひかないように、暖かくして寝ることを心に誓った。




