日替わりのクエスト消化。
魔物の侵攻まで、まだ何日かの時間があった。
私たちは現状の確認も兼ねて、滞在中は国のクエストをこなしていた。
今日の依頼は、壊れた家の修理作業だった。
街の中心はとても綺麗なのだが、離れたところは意外と魔物の被害を受けていた。
私はクライブと二人、木材を運ぶ力仕事を任されていた。
指定された場所に、角材をどんどん並べていく。
私はそんなに力持ちではないのだが、風魔法でそれを補助していた。
「さすがだな。この魔法、とても助かるよ」
クライブが木材を抱えながら言った。
額には小さな汗の粒がいくつか浮かんでいる。なんだかやりがいを感じちゃっているようだ。
同じパーティーだからか、なんとなく彼とはペアになることが多かった。
一緒にいる時間が増えたことで、そこそこ打ち解けてきたように思える。
これがヴァン様だったらなあ。きっと仲良くなって、これまでの気まずさも解消できるのに。
今の彼との関係は最悪だった。この国に来てから、まだ一度も話していない。
「あの……、クライブさん。嫌われてるっぽい人と仲良くなるには、どうしたらいいんですかね?」
「ああ、王子か」
なんだこの人は。濁して相談したのに、一発で相手を当ててきた。
「なんだその顔は。それ以外ないだろう」
それ以外ないのか。
クライブは木材を置いた後、少しの間考えているようだった。
「なぜそんなにこだわる。嫌われているなら放っておけばいいだろう。わざわざ仲良くしたい理由がわからないな。仮に好きな女性だったとかなら話は別だが」
「なんでって言われても……」
イケメン推しキャラだから仲良くなりたい、なんてクライブに言える訳がない。
そう考えると、やっぱりアメリアは貴重な友人だ。そういえば彼女ともしばらく話していない。
「王子は一方的に君を嫌っているからな。といか、ライバル視しているといったほうが正しいか。どうにか君のことを認めさせたらいいんじゃないか?」
「どうやって?」
「そこはどうにかだ。……殴り合いの喧嘩でもしてみたらいいんじゃないか?」
適当な回答に納得がいかない。
そんなことをして、もっと嫌われたらどうするのか。
「実際、僕たちの間でもあったぞ。生徒会長の傍にいるために競い合ってた連中が、一度大きな喧嘩をしてな。けっこうな規模になったのだが、いつの間にかみんな仲良くなっていた」
そんなことがあったのか。道理でミラのお付きの人たちは、みんな仲がいいわけだ。
彼らをそんな風にしてしまうミラ。恐ろしい女。
参考になるかならないか分からない話をしながら、私たちは粛々と木材運びを進めていった。
「あ、ラグナさーん」
木材運びの依頼を終えて宿に向かって歩いていると、アリスが後ろから私を呼んだ。
小走りにこっちに向かって近づいてくる。
「お疲れ様です。そっちも終わりですか」
「はい。アリスさんたちのほうはどうでした?」
「楽しかったですよ。街の外で薬草集めしてました」
そう言ってアリスが隣に並ぶ。
なんでも楽しめてしまうのすごいな。
「そういえば、クライブさんと一緒だったのでは?」
「ああ。なんか用事があるって言って、どこかに行きましたよ」
「そうなんですね」
私たちはその後、他愛のない話をしながら海沿いの道を歩いた。
「わあ。見てくださいラグナさん。夕日が沈んでいきますよ」
アリスがそう言って、海の方を指さす。
それにつられて目をやると、光の強さに一瞬私の目は焼かれた。
沈みかかった太陽の半円が、視界の中にぼんやりと残る。
水平線で欠けた太陽は、白い街並みをオレンジ色に染めていた。
「綺麗ですねえ」
そんな光景を、アリスは目を細めて眺めている。
彼女の白い肌も、光を浴びて薄っすらと赤い。
やがて太陽は海の中に沈み、空は濃い紺色に覆われた。
「なんか私たち、魔物と戦ってるなんて嘘みたいですねえ」
確かにこんな景色を見たら、そんなこと分からなくなってしまう。
普通に旅行で来ていたら、どんなに楽しかっただろうか。
「ちょっとお茶でも飲んでいきますか」
なんだかこの時間が、少しだけ名残惜しかった。
私は隣のアリスを誘ってみる。
「はい!」
彼女は満面の笑みでそう答えた。
「どこ寄っていきます?」
「この前見つけたとこはどうです?」
「いいですね。あそこのデザートおいしかったです」
くるくると回りながら、アリスは先へ駆けていく。
それにつられて、私も小走りで後を追った。




