やっと到着、水の都。
「わあ! あれが水の国、グランマリーナ」
アリスが、金の髪を揺らしながら駆け出していく。
その先には、美しい建物が並ぶ街の景色が見えた。
王国を発ってから十日。
私たちは最初の目的地へと着いたのだった。
「おおお、街が見えたぞおおお!」
「やっと着いたああ!」
「うおおおおお!!」
みな旅にも飽きていたのか、揃って街へ駆け出した。
私もその後をちょこちょこ付いていく。
「わあ!」
その光景を見た瞬間、私の口から思わず声が出た。
海沿いの崖に並んだ家々。そのすべてが、白と青で統一されている。
潮の香りと一緒に流れる風が優しい。
遠くには、海の上に小さな船が漂っているのが見える。
私の視界は、爽やかな色の景色でいっぱいになった。
門番に案内されて、私たちは街の中へと入った。
ゾロゾロと歩く集団を、街の人たちは珍し気に見てくる。それが少しだけ恥ずかしい。
「ここが王宮です。後は城の者に従ってください」
門番はそう言うと、元の持ち場に戻って行った。
「全員で入るには多いな。城内へは、何人かで行くことにしよう」
ミラに選ばれた数人で、城の中へと入る。
おお、すごい。
城の中に入って、その美しさに驚いた。
ヴェルオール王国より豪華ではないが、清楚で清潔な雰囲気に溢れている。
まるで、そう。教会みたいな美しさだ。
長い廊下を進んでいくと、大きな扉が現れた。
そこを守る兵士が、ゆっくりとその扉を開ける。
「みなさん、よく来てくださいました」
玉座に座っていた女性が、ゆっくりと立ち上がる。
この国を治めているのは、青く長い髪の女王だった。
水の様に透き通った声。
女王と言っても、驚くほど若く見える。いったい彼女は何歳ぐらいなんだろう。
「ありがとうございます。私は部隊のリーダー、ミラです」
「王子も同行していると伺ったのですが」
「すみません。彼は今……、少し疲れているようでして」
「そうでしたか。ここまでの長旅、本当にお疲れさまでした。まずはみなさん、ゆっくり休んでいただいて――」
「いえ。できれば現在の状況を確認したく」
さすがミラだ。一国の主の前でも、堂々としている。
王女はミラに対して少し微笑んだ後、ゆっくりと話し始めた。
女王の話によると、まだこの国はそこまで大きな被害は出ていないとのことだった。
今の所、街の外の魔物の動きが活発になってきているぐらいだそうだ。
「ですが、近々魔物の大規模な侵攻が予想されています」
女王の話によると、近隣の魔物の動きが怪しいらしい。
どうやら魔物たちは、徐々に集まりつつあるようだ。
「ところで、聖女のアリスさんという方は?」
「は、はい。私です」
アリスがおずおずと手を上げる。
「あなたが……。あなたには後日、聖女の力を強化するための試練を受けてもらいます。こちらも準備が必要ですので、少しお待ちください」
「は、はい! よろしくお願いします」
そう言って、アリスは深々と頭を下げた。
「それでは改めて、みなさまひとまず旅の疲れをとって下さい」
女王の勧めもあり、私たちは街の宿屋に移動することになった。
部隊は総勢二十四人と大所帯だが、全員が入れるように手配してくれたらしい。
窓の外に海が見える。
私は顔を外に出して、潮風の感触を頬に受けた。
「いい部屋だな。こんなところを用意してくれるなんてありがたい」
同室になったクライブが言った。
部屋はパーティー単位ではなく、当たり前だが男女で別れた。
「ほんといい部屋ですね。リゾートホテルみたいです」
ベッドの上に体を投げ出すと、全身が柔らかい感触に包み込まれた。
ああ。王国では寮に引きこもり気味だった私にとって、とても懐かしくて恋しかった感触だ。
このまま眠ってしまいたい。
目を閉じてその心地よさに浸っていると、不意に部屋の扉がノックされた。
「ラグナさん。いますか?」
アリスの声だ。
扉に向かって、重たい体をのそのそと動かす。
「少し外を回りませんか?」
長い旅からやっと宿に付いたばかりだというのに、アリスは待ちきれない様子だ。
そんな彼女の誘いを無下にすることは出来ず、私は身支度を整えて部屋の外に出た。
「綺麗な街ですねえ」
アリスの言うように、この街はとても美しい。
レンガ造りの暖かみあるヴェルオール王国の街もいいが、ここは直線が多い建物が並んでスッキリした印象を受ける。
「私、外の国って初めてなんです。なんか、すごいですね!」
嬉しそうにアリスが言う。
自分だって初めてだ。そういえば前世でも海外旅行とか行ったことなかったな。
私の気分も、少しづつ盛り上がってくるのを感じた。




