表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/75

暴走した王子を追って。

 先の方で、戦いをしているかのような音が聞こえてくる。

 きっとヴァンだ。私はそこに向かって速度を上げた。


「くそお!!」


 彼の声だ。

 間違いない。間違えるはずがない!


 黄金の髪が激しく揺れている。

 その周りには、複数の魔物たちが囲んでいた。


 ヴァンの体が傷ついている。

 体中にダメージを追った彼は、今にも倒れてしまいそうだ。


 私の中で、何かが大きく爆発した。


 風魔法<エアリアルレイン>


 魔物に群れに向かって、全力で風の魔力を撃ちこむ。

 撃ち抜かれた魔物は、その存在も残さないよう跡形もなく消し飛んだ。


「き……、貴様……」


 私の存在に気付いたヴァンがこちらを睨む。

 だがそこには、先日のような強い勢いがなかった。


 ヴァンは力が抜けたようで、その手から剣がこぼれ落ちる。

 それと同時に、膝から体を地面へ落とした。


「ヴァン王子!」


 近寄った私を、彼は憎しみがこもった手で振り払う。


「どうして来た! なぜ貴様が……。俺一人でもやれたんだ! やれたんだ……」


 私は何も言えなかった。

 以前アメリアから聞いた話。ヴァンは聖女のそばで戦う勇者になりたかったのだ……。

 私への敵意が強いのもそのせい。……のはず。


 できれば彼の望みを叶えたいが、私だってアリスのそばを離れることはできない。

 二人で一緒に聖女を守るために戦えたらいいのに。


「くっ!」


 ヴァンが傷を押さえて苦しんでいる。

 いけない。彼は相当なダメージを負っているんだ。


 風魔法<エアードヒール>


 風の魔力で彼の体を包む。

 急いで彼の怪我を治さなければ。


「お前……、回復魔法も使えたのか……。くそ! 余計なことをするな!」

「動かないで! 聖女の回復魔法ほどではないですが、これで動けるぐらいには回復します」


「なぜだ。なぜ私を助ける。私はお前に……。お前は、なぜ」

「だって……」


 あなたが推しキャラだからなんて言えない。


「なんでって、理由なんてないですよ。困ってる人がいたら助ける。それが身近な人なら尚更です」


 うまい理由も思いつかず、私はどこかで聞いたようなセリフで誤魔化した。自分はそんな善人でもないのに。

 そうして私は、彼に向かって魔力を流し続けた。




「よかった。戻ったか。二人とも怪我はないか?」


 ミラが、安心した様子で私たちを迎えた。


「大丈夫です。ヴァン王子は、少し休ませてあげてください」


 無言の彼に変わって、私はそう答えた。


「ヴァン王子!」


 力の抜けた彼を、アメリアが寄り添いながら連れていく。

 ひとまずこれで一安心だ。


「それで、どういう状況だった?」

「あ、はい。複数の敵に囲まれてしまっていて。でも、なんとか撃退できました」

「そうか。すまない。手間をかけた」


 ミラはそう言って、申し訳なさそうに頭を下げた。


「いえ、全然です。私は彼を追いかけたぐらいで」

「それだけではないだろう。君のそういう所、私は嫌いではないが、彼にとっては……。いや、いい。私が言うことではないな」


 ミラはその後、口をつぐんだ。

 彼とはヴァンのことだろう。いったい彼と、どうやって付き合って行けばいいのか。

 男同士だったら簡単なのだろうか。いや、私は男ではあるのだが……。


「では部隊を進めよう。ラグナ君。私たちはアリス君たちの所に戻るぞ」


 ぼんやりとしている私を、ミラが優しく引っ張る。

 そして部隊は、目的の地に向けてゆっくりを進みだした。




 ぼんやりと、こちらに向かって手を振っているアリスの姿が見えた。


「あの、大丈夫でしたか?」

「ああ。問題ない。ラグナ君がなんとかしてくれた」

「よかったです」


 アリスは安心したように、大げさに息を吐いた。


「出てくる敵の種類がだいぶ変わってきた。気を抜かずに行こう」


 ミラはそう言って、他のパーティーの所に歩いて行った。

 今の言葉を他の人たちにも伝えに行くのだろう。


「水の国まであとどれくらいなんでしょう?」

「けっこう歩きましたからね。半分は過ぎているといいですけど」


 アリスとの会話にホッとする。

 さっきまでの重い気持ちが、少しだけ晴れてきた気がした。


「目的地までは、あと三日といったところだろう」


 私たちのパーティーメンバーの一人、生徒会長のお供であるクライヴが言った。

 最近ただのモブキャラではなくなってきた彼だが、中々に博識で色んなことを私たちに教えてくれる。


 彼は戦闘でも役に立っていた。いつも槍を持って先頭に立ってくれる。レベルも十分に高い。

 さすが生徒会長ミラの傍にいるだけのことはある。


「もうすぐですね。私ほかの国に行った事ないので楽しみです」


 アリスは特に楽しそうな笑顔を見せる。

 もしかして、気を使って励ましてくれているのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ