波乱のパーティー別け。
学園の広場に、数十人の生徒が集められた。
皆そこそこに強そうな人たちばかりだ。
「ここに呼ばれた者たちは、なぜ自分が呼ばれたのかすでに分かっていると思う。君たちは、今度行われる遠征のメンバーとして選ばれた。これからさらに部隊とパーティーに別けていく。名前を呼ばれた者から順に並んでいくように」
生徒たちの前に並ぶ教師陣。その中の一人であるメアリージュが、生徒たちに向かって名前を告げていく。
その声に従って、生徒たちはぞろぞろと移動をし始めた。
「あ、ラグナさん! よかったあ。一緒のパーティーですね」
先に名前を呼ばれたアリスが、私に向かって言った。
なんとなく分かっていたが、先日王様が言っていたことがこれなのだろう。
「ラグナ氏、君も一緒か。このパーティーは安泰だな」
そう言って、生徒会長ミラのお付きだった一人が近づいてきた。彼とは何度か、ミラとパーティーを組んでダンジョンに潜った際に一緒になっている。
そしてその後ろには、ミラ本人の姿もあった。
どうやら私たちは、この四人でパーティーを組む人選のようだった。
「ラグナ君、アリス君、よろしく頼む」
「ミラさんとも一緒なんて嬉しいです。よろしくお願いします」
アリスはすっかりミラとも打ち解けている。
私たちは互いに軽い挨拶を済ませると、他の生徒たちのパーティー別けの様子を見守った。
けっこうな人数がいたせいでそこそこ時間がかかったが、生徒たちは無事に全員名前を呼ばれたみたいだ。
こういう時、早めに名前を呼ばれると安心する。といっても、一番に呼ばれるのは避けたいものだが。
この場に集まった生徒たちは、二つの部隊に分けられた。一つの部隊に二十四人。そしてその中に、四人パーティーが六つ。
結果的に生徒たちは、総勢四十八人となった。
「なぜ貴様が聖女と一緒のパーティーなんだ!?」
私は突然、胸ぐらを強引に掴まれた。
相手はヴァンだ。敵意のこもった目で、私を睨んでいる。
「なぜ俺ではなく、いつもお前が! いつもいつもいつも!」
「ちょっと、あの……」
彼の顔がすぐそこにある。それはもう、触れ合いそうなほどに近く。
心臓がドキドキする。でもこれは、残念なことに嬉しさからではない。
なんだか、私へのヘイトがどんどん上がっている気がする。
どうしてこうなるの。私は心の中で哭いた。
「やめてください!」
「君、急になんだ。やめないか」
周りの人たちに制止され、ヴァンは渋々と私を解放した。それでも、憎しみの目は変わらない。
私は何も言えず、ただその場に立ち尽くした。心臓の音が鳴りやまない。
「王子、何をされているのです!? こんなことをしても何にもなりません。戻りましょう」
私たちを取り囲む生徒たちを押しのけて、アメリアがすがる様にやってきた。
ちらりと私を見た彼女は、小刻みに震えるヴァンの手を必死に握りその場を離れていった。
そうか。アメリアはヴァンと一緒のパーティーになったのか。
本来ならば一緒に喜べる事なのだが、今はそんな気分にもなれない。
周囲から安堵のため息が漏れた。
それにつられて、私の口からもたまっていた大きな息が吐き出される。彼の剣幕に、どうやら呼吸をするのを忘れていたらしい。
「ラグナさん、大丈夫ですか?」
アリスが心配そうな顔で、私の方を覗き込む。
彼女を心配させてはいけない。
「だ、大丈夫です」
私は震える声を抑えながら、なんとかそう答えた。
やばい。泣きだしちゃいそう……。
「静かにしなさい! これからの任務に、つまらない私情は厳禁だ! これは、お前たちの生死にも関わる。決して部隊の輪を乱さぬよう、気を引き締めるように!」
熊のような体格の教師が、大声を張り上げる。その視線は、列の乱れた私たちを捉えている。
生徒たちはその言葉に従うように、乱れていた隊列を組みなおした。
私は何もしてないのに。なぜだか自分が怒られたかのように思えてくる。
まだ何も始まっていないのに、もうすでに気分が重い。
「任務の詳細は追って伝える。各自それまで準備を怠らないように!」
教師のその言葉と共に、しばらくしてその場は解散となった。
散っていく生徒が、チラチラと私の方を横見していく。その視線が、突き刺すように痛い。
「ラグナさん、あんなの気にしないでください。一緒に頑張りましょう」
「はいぃ」
アリスの励ましはありがたいが、私は声に力が入らなかった。
ため息ばかりが出る。私の学園生活、こんなはずじゃなかったのになあ……。




