王国からの旅立ち。
パーティー別けの日から一週間後、生徒たちは再び集められた。
みな各々に、大きな荷物を抱えている。
私たちは今後、ヴェルオール王国を離れて別の国へと遠征するのだ。
部隊毎に分かれて二つのルートを進んでいく。これはそういうシナリオ。
片方は水の国と雷の国。もう片方は風の国と土の国を回る。
各国に協力して、魔物と戦うという建前だ。
「ここにいる者たちは、我が国を代表する精鋭だ。君たちだけに任せる形になったのは申し訳ないが、その力を遺憾なく発揮してこの世界のために戦ってきてほしい。我が国の戦士たちに、幸運を祈る」
王国の偉い人が、集まった生徒たちに向かって書面を読み上げた。
その言葉を受けて、気合を入れている人が周りに何人か見える。
みんな真面目だなあ。そんなこと言われてもダルいだけなのに、と思ってしまう私は変なのだろうか。
だって、そんなの大人が行けばいいじゃん。なんで学生に任せるのか。私はもっと学園での青春を満喫したいんだ。
なんてことを突っ込んだらダメなのだろう。それだとストーリーが進まなくなってしまう。
まあ、元がゲームだしな……。
「ラグナさん、頑張りましょうね!」
元からやる気のあるアリスが、胸の前で拳をぎゅっと握っている。
この遠征には、聖女の同行が不可欠だ。その聖女であるアリスを放っておくことは出来ない。
私がこの遠征に行く理由は、もうそれだけだった。
私たちのいる部隊が通るルートは、水の国と雷の国。それにはちゃんとした意味があった。
その二つの国には、聖女の力を強化する術があるのだ。
本来はどちらのルートを選んでも同じ効果が得られるはずで、二週目をプレイする時に一周目とは違うルートを選ぶ。そうすればそれぞれのストーリーを見ることが出来るというものだった。
ゲームではそういう風に、プレイヤーがどちらのルートを通るか選べるのだが、今回はもう決まってるようだ。
流石に二週目とかないよね。
「それでは出発しよう」
部隊のリーダーとなったミラが、生徒たちに向かって言った。
総勢二十四人。決められたパーティーで固まって、私たちはぞろぞろと歩き出した。
* * * * *
王国を出て半日が経った。
目的地に向けてどれぐらい進んだだろうか。
って徒歩かよ!?
私は心の中で突っ込みを入れた。
国と国の間ってけっこう離れてるよね。ゲームでは、フィールドで戦闘しながらでも三十分ぐらいだったはずだけど。
これ実際歩いたら何日かかるの?
私はもうすでに疲れてしまっていた。
馬車に乗ったら画面が暗くなって、ロードが終わったら着いているとか、ワープポイントですぐ飛べるとか、私の頭の中は現実逃避の妄想でいっぱいだ。
無意味に目を閉じてみる。しかし周りの風景にはなんの変化もない。
せめて私一人なら、風魔法でさっさと行ってしまえるのに。
「こういうの初めてですね。楽しんじゃいけないんでしょうけど、でもなんだか少しワクワクしてます」
隣を歩くアリスが言った。
なんて前向きなんだ。団体行動が苦手な私とは大違いだ。
私の頭の中に、前世での遠足というイベントの記憶が蘇った。
ほろ苦い記憶だ……。また封印しておこう。
部隊の列は、縦に並んで進んでいる。
そしてパーティーごとには、それぞれ別の役割があった。
魔物が出た時に戦うパーティー。荷物を守るパーティー。野営の準備をするパーティー。何もせず休むパーティー。それらが、一日ごとに交代していく。
リーダーのいる私たちのパーティーは、初日ということで何の役割もなかった。
戦闘になったらどう誤魔化しながら戦うか、そんなことを考えていると、いつの間にか陽が落ちて野営の準備が始まっていた。
こんな人数のご飯作るの大変だろうな。
私の手に、今日の夕食が渡された。
スープとパン。
あまり凝った料理ではないがしょうがないだろう。
「いただきます」
私はぼそりとそう言って、すくったスープを口に入れた。
何これ!?
めっっちゃ美味しい!
舌がおかしくなったかと思い、再度スープを味わってみる。
やっぱり美味しい。見た目は普通のスープなのに。
パンを一口かじってみる。
こっちも美味しい。
ただのパンだよな……。
不思議に思っている私の肩を、アリスがポンポンと叩いた。
「夕食、美味しいですね」
満足そうな顔でアリスが言う。
「ですね。けっこう普通だと思うんですけど、なんでだろ。普通より美味しい」
「それはきっと……、みんなと一緒に食べてるからですよ」
なるほど。いつもと違う環境で、ご飯が美味しく感じたのか。
私はアリスの言葉に納得した。
こういうのなんて言うんだっけ?
そうだそうだ。キャンプ飯だ。




