光が踊る大花火。
「アリスお姉さん! ラグナお兄さん!」
人ごみの中から、ウェンディの妹、サンディが小走りにやってきた。
「サンディちゃん。来てたんですね」
「うん。お母さんと来たの」
アリスとサンディは、手をつないではしゃいでいる。
「お二人とも、劇、素晴らしかったですよ」
サンディの母も後ろからやってきた。
二人はいつものように、アリスと楽しく話をした後、他の催しを見るためにその場を離れていった。
雑貨屋は今まさに修復中だ。それに二人が無事で本当に良かった。
お店が元に戻ったら、また手伝いに行こう。
「あ、アリス。ラグナさん」
少し遅れてウェンディもやって来た。他の女子生徒も一緒にいる。
「ウェンディ。サンディちゃんとお母さん、さっきまでいたよ」
「そうなんだ。私たちこの後お菓子作りに行くんだけど、アリスたちもどう?」
「ええ! 楽しそう。ラグナさん、私たちも行きませんか?」
おお、お菓子作り。それは楽しそうだ。この世界に来てからはやってなかったから、久しぶりに作りたい。
こう見えて前世では、たまにお菓子を作るぐらいの女子力はあったのだ。
「おや、ラグナ君」
「アシェルさん!」
そこへなんと、あのアシェルから声をかけられるイベントが発生した。
「どうかな。学園祭楽しんでいるか?」
「は、はい。すごく楽しいです!」
「ラグナさん。私たち、先にいってますね」
アリスたちは、気を利かせて先に行ってくれた。
残ったのは私とアシェルの二人だけ。これはまさか、デートイベント発生!?
「友人といる所すまない。別に大した用はないんだ」
「いえ! 全然大丈夫です!」
大した用もないのに話しかけてくれるなんて、これはもう特別な関係なのではないだろうか。
いやいや、先走ってはダメだ。でも、友達というぐらいには昇格したと思っていいのでは……。
「ヴァンとは相変わらずのようだな」
やれやれ、といった様子でアシェルは言った。
「そ、そうですかね。自分としては、そこそこ話すようになってきたかなーと」
「ははは。そうか。そう思ってくれるならよかったよ」
笑われてしまった。何か変な事言っただろうか。
でも、アシェル様の笑顔、かっこいい!
「あいつは今でも君のことをよく話題にしていてね。まあ、話の内容は言えないが……。あいつにはこれまで、君のような存在がいなかった。だから少し嬉しいんだ」
「そ、そうなんですね」
話の内容、気になる……。
「あいつは、この国の王子という自分の立場に責任を持っている。だからこそ、そのプレッシャーで今は君にキツく当たってしまっていると思う。だが、どうか嫌わないでやってほしい。あいつが成長して視野が広がれば、いずれ二人はよい友人になれるはずだ。そしてその時は、王子であるあいつを助けてやってほしい」
アシェルの表情は真剣だ。
ヴァンの事を、本当に大切に思っているのだろう。
「全然、嫌ってなんかないですよ! やっぱり王子って、将来の責任とかいろいろ大変ですよね」
「ありがとう」
アシェルはそう言って、穏やかな笑顔を浮かべた。
はああ。まじイケメン。少ししか歳が違わないのに、なんだか大人の男って感じだ。
いや待てよ……、前世を合わせると年下?
私はそれ以上考えないようにした。
それから他愛もない話を少しした後、アシェルはその場を離れていった。
イケメン成分を補充した私は、満足感でいっぱいだった。
今のひと時だけで、私の学園祭はもうフィニッシュしてもよかった。でも、そういえばお菓子作りをしに行くんだった。
私はふわふわとした気分の中、アリスたちの後を追った。
陽は落ちて、景色はもう夜だ。遠くの星たちも、ちらちらと瞬き始めている。
学園祭も終わりに近づき、生徒たちの熱気もどこか落ち着いていた。
「いっぱい回りましたねえ」
隣で満足そうにアリスが言う。
「そうですね。けっこう疲れました」
「ラグナさん、はしゃいでましたね。お菓子作りも出来るなんて驚きでした」
「そ、そんなはしゃいでました? 恥ずかしいな……」
「ふふふ。可愛かったですよ」
「からかわないでください」
アリスの言葉に、思わず恥ずかしくなってしまう。
確かに柄にもなく楽しんでしまった。でも、それはこの学園祭が悪いのだ。こんな漫画みたいな学園祭、楽しまないほうが無理な話だ。
「学園祭、ラグナさんが戦ってくれたから出来たんですよね」
「そ、そんなことないですよ。みんなが戦ったから出来たんです。私なんて、風邪ひいてただけですし」
「ラグナさんは相変わらずですね。でも……、そうですね。みんなで戦ったんですよね」
微笑みながら、アリスが私の顔を見つめてくる。
なんだ? まだ私の口に青のりが付いているのか?
吸い込まれるような青い瞳から、目が離せない。
気まずい沈黙。心地よい空気。これは……。
「ラグナさん。あの、私――」
アリスが何かを言おうとした瞬間、夜空に大きな花が開いた。
同時に響くような低い音が、腹のあたりを震わせる。
「わあ……」
私たちは、その景色に釘付けになった。
咲いて散って、花は夜空を華麗に彩っていく。
ふと横を見ると、アリスの瞳にはたくさんの色が映し出されていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これで学園編は終わりとなります。次回以降は冒険のようなものが始まります。
残りはあと半分もない予定でいますが、引き続きよろしくお願いします。
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