アリスと二人で回る自由時間。
劇も終わり、私たちは自由時間となった。
アメリアはどうしているだろう。
さっそく劇のことについて語らいたい。王子姿を間近で見ていた感想を聞きたい。
「ラグナさん。行きましょう」
着替えを終えたアリスが、私の袖をそっと引っ張る。
「ああ、はい」
約束していた通り、私はアリスと一緒に学園祭を回ることにした。
学園の入り口である門。そこから校舎まで続く道には、びっしりと屋台が並んでいる。
私たちは、順番にそれを見て歩く。
「すごい。どの屋台もこってますねえ」
確かにどれもレベルが高い。
どの屋台からも、熱気というか情熱というか、なにやらプラスのエネルギーが感じられる。
こんな本格的な学園祭、見たことない。前世で経験したものはしょんぼりとした規模だったので、私の気分も上がってきた。
ああ、これが失われた私の青春か。
「これ美味しいです!」
アリスは早速、いくつもの食べ物を手に持っている。
いつの間にあんなに……。
「ラグナさんもこれ、食べてみてください」
アリスがそう言って、カラフルにトッピングされたチョコバナナを差し出した。
こ、これは、アリスの食べかけ。
かじられた部分が、なんとなく気になってしまう。
アリスの方は、なんてことないような顔でこちらを見ている。
なんだか気にしているのが恥ずかしくなってきた。
私もいい大人なんだ。こんなことで動揺している場合ではない。
私は思い切って、目の前のバナナを口に入れた。
チョコレートの風味が口の中に広がる。
バナナももっちりしていて、しっかりと満足感があった。
「美味しいですね」
「ですよね!」
そう言ってアリスは、チョコバナナを自分の口へと運び、パクパクと嬉しそうに食べていった。
ああ、たこ焼き食べたいな。
私の頭の中に、唐突に屋台のたこ焼きが浮かび上がった。
濃厚なソースとマヨネーズ。そしてその上でひらひら踊るかつお節。あの味をもう一度味わいたい。
でも、流石にこの世界にはないだろう。だって世界観が違いすぎるもん。
「ラグナさん。たこ焼きですって。どんな食べ物でしょう?」
って、あるの!?
私は急いでその屋台に向かった。
少しツンとする、ソースの懐かしい匂い。
間違いない。あのたこ焼きだ。
まあ、ゲームの中の料理にもあったからな。東方から伝わったとかなんとか。
違和感しかないけど、これはこれでありがたい。
「たこ焼き一つお願いします」
「はいー。青のりは?」
「かけてください!」
私は迷わずそう答えた。のりをかけないたこ焼き好きは、本物ではない。
そういえば前世では、祭りの一番はたこ焼きか焼きそばかで友達と喧嘩したっけ。私は断然たこ焼き派だ。
「これがたこ焼き……。はわっ! これ柔らかくて取るの難しいですね」
アリスはたこ焼きを持ち上げるのに苦労している。
「ああ、これは串を二本使って取るんですよ。一人一本じゃないんです」
「なるほど!」
アリスはふるふると腕を振るわせて、恐る恐るたこ焼きを口に運んだ。
彼女はそれを、ひょいと口に放り込む。
「ほわわわ! あついですう」
はふはふと空気を吸い込みながら、アリスは一生懸命に口を動かしている。
少しかわいそうだが、そんな姿が可愛らしい。
「最初は熱かったですけど、美味しかったです」
そう言ってアリスは、満足そうな笑みを見せた。
よかった。金髪美少女にたこ焼きは合わないかもと思ったが、どうやらお口に合ったみたいだ。
「ラグナさん。のりが……、ついてます」
ふふふっと笑いながら、彼女は私に向かって指をさした。
「どどど、どこですか?」
私は慌てて口を覆った。たこ焼きを食べればそんなのは定番なのだが、指摘されると途端に恥ずかしくなってくる。
どこだろう。もごもごと口の中を探ってみるが、取れたかどうか分からない。
「あ、もしかして私にもついてます?」
アリスは咄嗟に口を閉じて、恥ずかしそうに顔を伏せた。
必死に口の中をもごもごさせて、なんだか小動物みたいだ。
「大丈夫ですよ。ついててもアリスさんは可愛いから」
「えっ?」
アリスが大きな瞳を見開いて、私の顔を凝視する。
青い瞳の中で反射した光が、くるくると回っていた。
急にどうしたんだ? もしかして、まだのりが付いてる?
私は口をゴシゴシと擦った。
「その……、ありがとうございます」
はて、何かお礼を言われるようなことをしただろうか?
アリスの顔は、ほんのり赤くなっていた。




