ダンジョン攻略のご褒美。
「ラグナさん! 昨日は大丈夫でした?」
ダンジョン攻略の翌日、朝からアリスがすごい勢いで傍までやって来た。
「だ、大丈夫だったけど」
「よかったあ。ラグナさんなら大丈夫って思ってましたけど、でも心配で」
ええ子や。あんた、ええ子やでえ。
そんなこと言ってくれるの、アリスぐらいしかいない。彼女は私の癒しの存在だ。
私たちは、あの後無事にダンジョンを脱出することが出来た。
別の出口から出た私たちが最初の入口まで戻ると、ミラ付属のモブキャラたちはそこで待っていた。
彼らは涙を流し喜んだ。
もう少し合流が遅かったら、学園に救助を依頼するところだったらしい。危うく大騒ぎになるところだった。
結果としては、ダンジョン攻略は大成功。
みんな大きな怪我も無く、多くのドロップアイテムと共に学園に戻ることが出来たのだ。
「ラグナ君ありがとう。このお礼は今度させてもらおう」
そうしてミラとは学園の前で別れた。
お付きのモブキャラたちからは、散々お礼を言われまくってしまった。
あんなこと言っていたけど、ミラさん大切にされてるなあ。
いいパーティーだった。そんな思いで、私はミラの後を追うモブキャラたちの背中を見送った。
「そ、それで、生徒会長とは、どんな話したんですか?」
話? 何か話したっけ?
いや、したな。したにはしたが、どんなと言われても困ってしまう。あんな会話のこと、言える訳がない。
「うーん。ダンジョン攻略の話ぐらいしかしてないかなあ」
「そうなんですね。ごめんなさい。変な質問して。忘れてください」
アリスは両手でパタパタと、ほんのり赤くなった顔を扇いでいる。
なにその仕草。可愛いなあ。暑いのだろうか。天気いいしな……。
なんてとぼけた事を考えている場合ではない!
これアレだ。探り入れられてるやつだ。
古今東西、人は気になる相手ができたら、あの手この手でその人の交友関係を遠回しに探るとされている。
前世の私には縁が無かった話だが、これは流石に分かるぞ。漫画みたいに、異常な鈍感力は発揮しない。
ラグナルート、回避できてないの?
でも別に、アリスとラグナがくっつくのは何も問題ないんだよなあ。外面はだけど。
問題は私の中身が女ということで……。
そうすると、百合になるのか? いや身体的には普通。でも普通じゃない。私がヴァン様たちと恋愛するとBL。でも中身的にはセーフ。でもアウト? セーフ? よよいの…………。
頭がこんがらがってきた。
やっぱり今はまだ分からない。きっと明日の私が考えるだろう。
まだアリスが私を好きと決まったわけじゃないし。
はああ。ゲームみたいに相手の好感度が見えるようになればいいのに。
後日、ミラからお誘いがあった。
ダンジョン攻略のお礼がしたいのだと言う。
週末に、攻略メンバーで集まって食事をするということらしい。
それはいい。いいのだが……。
なぜかアリスも来ることになってしまった。
ミラが私を誘いに来た時に、一緒にいたアリスが手を上げたのだ。
ミラはそれを断ることなく、快くアリスを受け入れた。
なぜだ。攻略メンバーだけなのではなかったのか。
そんなに一緒にいるイベントが増えてしまったら、どんどんルートが固定されてしまうではないか。
そして、ミラとアリスの相性も気になる。ゲームで二人が一緒になることはあまりなかったので、それは未知数だ。
面倒なことにならなければいいが……。
「おおおお」
ここは……、酒場じゃん! 未成年が来たらダメなところじゃん!
そういえばこの世界には、そういうのないのか?
私は全然違うのを想像していた。
食事会というのだから、オシャレなレストランでやるものだと。
無駄に習得した、普段使わないテーブルマナーを披露する機会だと思ったのに。
こういう所、前世でもあんまり来た事ないんだよなあ。どうやって楽しめばいいんだろう。
「みんな。先日のダンジョン攻略に協力ありがとう。今日は好きにやってくれ。乾杯!」
ミラの音頭に合わせて、モブキャラたちの野太い声が響き渡った。
みんなそれぞれに、手に持ったグラスを重ねる。チンと鳴る、涼しげな音が心地いい。
それにしても意外だ。あの澄ました生徒会長が、こんな所で打ち上げをするなんて。
そしてこういうのに慣れているようにも見える。ダンジョン攻略後には、いつもこういう事を催しているのだろうか。
私はグラスの飲み物をチビチビと飲んだ。
もちろんお酒ではない。一応未成年ですから。他のみんなが飲んでいるのも、お酒ではない。
……はずである。




