二人きりは大人の時間?
「すまない。私が調子に乗ったせいだ」
ミラが申し訳なさそうに言った。
「いえいえ。普通分かりませんよあんな所のトラップ」
「そういう君は分かっていたようだが」
ギクリ。この人は、また鋭い突っ込みをするな。
私たちは、落とし穴からダンジョンの奥深くへと落とされていた。
着地の瞬間に風魔法を使ったので、二人とも怪我はない。
でも、さすがに落ちたところまでは戻れなさそうだ。崩れた瓦礫で上が完全に閉まっている。
魔法で撃ち抜くか? いや、彼女の前でそんなことは出来ない。
ここは普通に脱出するしかなさそうだ。
このトラップは落ちたら最後。ただ地上に出るために一つのルートを進むしかないのだ。
途中でダンジョンに戻れるとかはなく、完全に嫌がらせの悪質なトラップである。
加えてアイテムなども置かれてないので、ただの時間の無駄になってしまう。
ゲームで最速攻略を目指す場合などは、まず来ることはない。
「とりあえず出口を探しましょうか」
「そうだな」
私たちは、目の前にある細い道を歩き始めた。
……。
…………。
長い。
かなり長い。
そうなんだよなあ。この道、無駄に長いんだよなあ。
まだまだ先は見えてこない。本当に嫌がらせだ。
ミラも流石に疲れたのか、黙ってしまっている。
無理もない。ダンジョン攻略をした後に、こんなトラップにかかってしまえば疲れるのも当たり前だ。
「疲れてません? ちょっと休憩しましょうか」
「いや、私は……、まだ大丈夫だ」
絶対大丈夫じゃない。
「あー。自分疲れてしまったんで、休憩したいなあ……。なんて」
「そうだったのか。すまない気付かなくて」
「いえいえ。私こそ、体力なくてすみません」
そうして私たちは、少し開けた場所に腰を下ろした。
「すまない。私のせいで君を巻き込んでしまって」
「ぜんぜん大丈夫ですよ。お互い怪我がなくてよかったです」
「着地の際、君が守ってくれたからな。なんだか君には助けられてばかりだ」
「そ、そんなことないですよ。たまたまです」
ミラはため息を吐くように、フッと小さく笑った。
「やっぱり君は変わってるな。君といると安心する。というか、君と一緒ならどんなことでも大丈夫というか」
そりゃあ最強チートキャラですから。
力で解決できることは、だいたい大丈夫なはず。
「変わっていると言えばもう一つ。君は私に欲情しないのか?」
ななな、何を言い出すんだこの人は!?
突然ぶっ飛んだことを言いだしたぞ。どこからそんな話が出てきたのか。
「どどど、どういうことでしょう?」
「自分で言うのもなんだが、私の体は男子にとってそこそこ魅力的に見えるらしい」
そう言って彼女は、自分の両胸を寄せるように腕で持ち上げた。
ちょっ! 何してんのこの人。混乱でもしてる?
「それで男子生徒から、よくそういう目的で近づいてくる者が多くてな」
「そんな。一緒にダンジョンに来てた人とか、そんなことなさそうだったじゃないですか」
「いや、彼らも最初はそういう風に近づいてきたのだ。だが私が返り討ちにしてやると、今度は別の意味で近づいてくるようになったというわけだ」
「なるほど。何かに目覚めてしまったと……」
冗談を言っている場合ではない。
なるべく早く話題を変えなければ。このままでは年齢制限が必要な話になってしまう。
「だが君は違った。私に対して、普通に接してくれる。あの聖女に対してもそうだ。君はなんだか他の人とは違う」
ははあ。なるほど。
彼女もまた、人から普通に接してもらった事がないタイプだったのか。
だからこんな話を……。
発情したとかじゃなくて本当によかった。
でも何の躊躇もせずこんな話題を出してくるあたり、この人けっこうな天然なのかも。
私だったからよかったものの、普通の男子だったらアウトだ。しかもこんな場所で! 二人っきりで!
ところで、これなんて答えるのが正解?
私は実は中身が女なんです。いやいや、そんなこと言える訳がない。
同性愛者です。もっとだめだ。
鍛えてますから。意味が分からない……。
「さて、そろそろ行こうか。私は十分休ませてもらった。ありがとう」
私があれこれ考えていると、ミラが突然そう言って立ち上がった。
あ、これ答えなくてもいいやつかも。助かった。
「そ、そうですね。こちらこそありがとうございます。あー、疲れがとれたあ」
私たちは、再び出口に向かって歩き出した。
「君は優しいな」
背中のほうで、ぽつりと小さな声が聞こえた。
ポイントがなんと100を越えました!
皆様ありがとうございます。
お祝いに今日はモスバーガーを食べます!




