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「いかにも。俺はJ-ノグリーフの研究総長、沖田遼平だ」
その男は、姿を現わす。
身に白衣を纏い、銀縁の眼鏡をかけている。それは、J-ノグリーフのパンフレットに載っている姿そのものだ。
研究総長──実質J-ノグリーフのリーダーのようなものだ。肩書き上は上から2、3番目といったところだろうが、J-ノグリーフ内では一番組織への影響力がある。
そして俺は、そのトップとご対面。
「そうか、やはりな。……単刀直入に問う。お前は何ゆえここにいる?一体、ここで何をしている?そして──」
俺は沖田を睨み、続けて言う。
「賢斗はどうした?まさか、殺したんじゃないだろうな?」
……。
数秒間の沈黙。
沖田は眼鏡を手で押し上げ、俺を見つめている。
返答はなし。
「……」
だんまりか。
ならば仕方がない、強硬手段だ──
「俺が馬鹿だったな。お前なんかに、呑気に質問するなんてな」
俺は呟き、剣を再び抜く。そして、飛びかかりながら前に構える──
口を割らないなら、割らせるまでだ‼︎
「おらぁぁっ‼︎」
沖田の胴を引き裂くような、勢いのある一撃。
このまま沖田が抵抗しないのなら、いとも容易く殺せていただろう。
だが抵抗しないはずなどない。
「……フン」
沖田は左手を俺に向かって突き出す。それだけで、俺の攻撃は止められた。
「何っ……⁉︎」
思わず動揺する。
バリアを張る、肉体を硬化させる等の『アビリティ』を持っている者はよくいるが、こんな能力は見たことがない。
バリアやその類のものが展開された様子もなく──
「くそッ」
だが攻撃の手を止めるわけにはいかない。
もし何か反撃があろうものなら『予見』で躱せるし、何より先ほどのセリフから、こいつには戦闘の意思がないと思える。
であれば沖田は、防御するだけ。
「そらっ」
もう一度、斬撃を放つ。
今度は防がれる未来を『予見』。
……なるほど、手は正面だな。
それなら!
「おおっと」
俺は沖田の手前で左に跳び、横から攻撃を加えようと試みる。
沖田の能力がどんなものかはわからないが、手を突き出したということからその向きにしか防御はできない可能性が高い。
それなら簡単、その範囲を避ければいいだけだ。
「そらよ」
俺は力任せに剣を振り抜く。
そしてその剣が防がれず、沖田の身体に当たる瞬間──
「‼︎⁉︎」
俺の体に電流か走る。
比喩表現などではなく、物理的に。
「な……っ‼︎」
俺は急速に力を失う。そして、剣が手から滑り落ち、俺は地面に倒れこむ。
まさか、科学の鎧……‼︎
またも抜かった。J-ノグリーフは研究機関、ならばその科学力を戦闘に利用していても、何ら問題は……‼︎
「……はっ」
消えかかっている俺の視界に、嘲笑を吐きその場を立ち去る沖田が見える。
……待て、お前には、まだ……
しかし意思と体は相反し、視界はブラックアウトする。
バタリ……
それが、俺が気絶する前に聞いた最後の音だった。




