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予見の覇王と覚醒者  作者: できれば匿名希望でお願いいたします
第4章 霹靂と黒影
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「悪いな、こんなことに付き合わせて。しかも俺の都合で」

「いや、大丈夫だ。しかも迅火の事故と関係があるかもしれないんだから、俺も行きたいし」


賢人は笑って返事をする。

午後7時。

俺たちはもう一度、あの倉庫街だったか──例の場所へ行くことにした。

賢人が沖田のことを知っている様子はなかったから、そこは適当に嘘でごまかした。


……。


友達に嘘をついてまで、調べようとした。

それは、やはり俺の非情さと最低さを表しているだろう。

もっと言うと、友達を利用している。


だから俺は、たとえ、いずれ賢人に罵られるとしても、それを黙って受け入れようと思う。

まあ、その時には、賢人はもう──


「なあ、迅火、ここらへんだったっけ?」


賢人の声が、俺の思考を遮る。


「ああ、たぶんここらへんだと思う。じゃあ、始めるか」

「うーす」


そして俺たちは、黙々と機材の設置を進める。

まずカメラを置いて、SDカードを差し込んで、スマホとの接続をして……


全ての作業が終わる頃には、もう月は真南にのぼろうとしていた。


「ふぅ。これで、一通り完成だな、迅火」

「そうだな。……本当にごめんな、こんな遅くまで」

「いや、いいさ。……でも、ここまでかかるとは思わなかったなぁ」


賢斗のその言葉に、俺は激しく共感する。そんなに複雑な作業ではないはずなのに、時間がかかってしまった。


「うん、そうだな。なら、缶コーヒーの一本でも奢ってもらおうかな」

「わかった。あそこの自販機で買ってくるよ」

「おーけー」


俺は軽く了承する。というか、ここまで面倒で自分勝手なことのために動いてくれたのに、缶コーヒー一本で済ませられるとはな。……それは、やっぱり、賢斗が俺を……


ああ、くそっ。


俺は葛藤を振り切るように、乱暴に財布からお金を取り出した。


「……缶コーヒーだったな。俺の分も買っていくか」


どうせ飲むなら二人の方がいいと思い、俺は缶コーヒーを二本買う。

そしてそれを落とさぬよう、慎重に運ぶ。


「賢斗ー、買って来たぞ」

「おお、どーも。……あ、迅火の分もか。なら……」


俺はその言葉に視線で返し、乾杯をする。


「いやー、やっぱ冷えたときのコーヒーはいいな」


賢斗がご満悦といった表情で言う。


「確かにな。暖まるし」


それからは会話もなく、互いにコクコクとコーヒーを喉に流していった。

やがて、二人とも飲み終わると。


「……それじゃあ帰るか。随分夜も更けてきたし」

「そうだな。……それじゃ賢斗、また明日」


俺は、賢斗の言葉に対して家路を向きつつ答える。

歩きながら、手を軽く上げる。


「……」


返事がない。

俺が無愛想に、そそくさと帰ろうとしたから怒ったのだろうか?

俺は立ち止まり、先ほどいた場所を振り返った。




───────────




「おい、賢斗⁉︎」


俺は、カメラの傍で()()()()()賢斗に声をかける。

動揺し、大声が出てしまう──


「騒ぐな、"麻酔をかけた"だけだ」


倉庫の奥から声がする。

どこかで聞いたことのあるような……?

いや、それよりも。今は。


「おい、賢斗?しっかりしろよ、おい!」


俺は賢斗のところに駆け寄り、体を揺さぶりながら声をかける。先ほどの男の声の「騒ぐな」というのが頭の中に残っており、声は自然と小さくなった。


──反応なし。

それならば、次に打つべき一手は──

俺は、動揺と心配を押し殺し何をすべきか考える。

この状況は、一体……


「……誰だ」


俺は声のした倉庫に向かって、言う。

とりあえず、そこにいる男に話を聞かないと進まない。

……いや、待て。

確かさっき、麻酔をかけたと言ったな……?

とすれば、賢斗の意識を奪った犯人は、こいつということになる。


──しまった‼︎

俺としたことが、抜かっていた。

なぜ、わざわざ犯人に話を聞こうとしたのか。

叫んでしまっただけならまだしも、こんな危険人物に情報を求めようなど、愚の骨頂──


「っ‼︎」


俺は一歩飛び退き、同時に抜刀し剣を正面に構える。

麻酔、というのが正確には何を表しているのか。俺にもまだよくわからないが、推測するに『アビリティ』だろう。


それならば、相当な危険人物である可能性が高い。

すぐに戦闘に移行できる準備をしておかねばならない。

万一のことがあれば、口封じも視野に入れなければ──


「……剣をしまえ。俺は、今はまだお前と戦う気はない」


……降伏か?

いや、違う。

今はまだと言った。ということは、いずれ俺と敵対することになる人物──

そして、セリフから察するに俺の素性も知っている。

それほど、俺の裏の顔と近しい存在の男──


「まさか、沖田か⁉︎」


俺は抜刀したまま、男に問う。

倉庫に隠れたままで、まだ姿は見えない。


「……その問いに答えてほしければ、まず剣をしまえ」


……くそ。

やりづらい奴だ。

その返答で、もう分かるんだよ。


「……」


俺は無言で剣をしまう。

相手は、自分の返答で、相手に正体が知られていることなど気づいているだろう。その上での、あの言葉。

さらに言うなら、先ほどの「今はまだ」というところ。あれは、時期が整えば戦うという宣告でもあり、そのための実力や準備はある程度整っているということでもある。


したがって、俺も戦闘態勢をほどくしかない。


「……答えろ。お前は沖田か?」


沖田なら、俺の正体を知っていることも頷ける。

幼少期の、俺の生殺与奪を握っていたのだから。



さあ、返答はどうなる──?

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