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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
暴れ牛ビーフ編

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97/186

3-5-3 歓迎会へ行こう


歓迎会の場所は、Kateが選んだ。


クラブ、と言っても、汗と低音だけで全部を押し流すような場所ではなかった。


地下へ降りる階段。

黒い壁。

古いポスター。

入口横の小さな受付。

奥にはDJブース。

フロアの端には、少し腰を下ろせるソファ席。

音はある。

でも、会話もできる。


静かすぎない。

騒がしすぎない。


BEEFが来ても、言葉だけで場に縛られない場所。


Kateらしい選び方だった。


その日の夜。


最初に着いたのは、Kateだった。


白いブラウスに、薄いグレーのカーディガン。

髪は後ろでまとめている。

手には小さめのバッグ。


店内に入る前から、入口、導線、席の位置、非常口、音量、照明の強さを確認している。


完全に歓迎会の幹事だった。


その後ろから、Miwaが小走りで来た。


「Kate、早い!」


「下見を兼ねています」


「歓迎会を下見する人、初めて見ました」


「BEEFさんが来る可能性がありますから」


その一言で、Miwaの表情が少し柔らかくなった。


「来ますかね」


「来るとは言っていません」


「行っても構わない、ですもんね」


「はい」


Miwaは小さく笑った。


「来るやつですね」


Kateは否定しなかった。


少し遅れて、Nina、Sara、Yuiが来た。


Ninaは店の看板を見上げて、少し目を丸くした。


「本当にクラブなんですね」


Saraは入口の注意書きを読んでいた。


「撮影禁止エリアが明記されています。助かります」


Yuiはメモを開いていた。


「参加者、到着確認。Kate、Miwa、Nina、Sara、Yui」


Miwaがすぐに言った。


「Yui、今日は歓迎される側でもあるんですよ」


「はい。歓迎される側として、到着確認しています」


「強い」


「庶務なので」


その言葉に、五人で笑った。


リバックラインだけで集まるのは、これが初めてではない。


でも、今日は少し違った。


リバクラも来る。

BEEFさんも来るかもしれない。


昨日まで、画面越しや客席越しに見ていた熱が、今日は同じテーブルに来る。


嬉しい。

緊張する。

ファンとして浮つく。

でも、手伝う側としてちゃんとしていたい。


その全部が、五人の表情に少しずつ混ざっていた。


先に来たのは、リバクラ三人だった。


階段を降りてきた瞬間、Ninaが小さく息を吸った。


「来ました」


Miwaが、反射的に姿勢を正す。


Kateも、一瞬だけ目線を整えた。


mcRCは黒のジャケットに白T。

wataは少しラフなシャツに細身のパンツ。

EGUIは黒を基調にした落ち着いた服装。


ステージ衣装ではない。


でも、三人が並ぶと、空気が少し変わった。


wataが店内を見回して、最初に言った。


「俺ら、わけぇな」


mcRCがすぐに返す。


「自分で言うな」


EGUIが低く言う。


「でも、クラブで歓迎会は若い」


wataが胸を張る。


「俺らまだまだ若いわい」


Miwaが耐えきれず笑った。


「その会話、この前のグルチャと同じこと言ってますね」


wataが指を鳴らすように手を上げる。


「伏線回収早すぎる」


Ninaも笑う。


「言うと思ってました」


EGUIが小さく首を振った。


「読まれてるな」


mcRCが苦笑する。


「グルチャで言うたこと、現場でそのまま言うのやめよか」


wataは悪びれずに言った。


「いや、思ったことが同じやっただけや」


Kateが軽く会釈する。


「お疲れさまです。今日はありがとうございます」


mcRCも少し頭を下げた。


「こちらこそ。今日は来てくれて、ほんまにありがとう」


Miwaがすぐに目を細める。


「部長……」


Ninaが横から覗く。


「水ですか?」


Miwaは胸に手を当てた。


「まだです。まだ目の奥で待機しています」


Yuiがスマホを少し持ち上げる。


「Miwaさん、目の奥に水、待機」


Miwaが振り返る。


「今日は記録しなくていいです」


Yuiは少し考えて、頷いた。


「歓迎会中は、記録を控えめにします」


wataが笑った。


「控えめにはするんや」


「庶務なので」


「庶務つよ」


Saraは三人に向かって丁寧に会釈した。


「本日はよろしくお願いします」


EGUIが軽く頷く。


「こちらこそ」


そのあと、EGUIは少しだけ言い直した。


「……今日は、堅すぎなくていいと思う」


Saraは一瞬だけ目を丸くした。


「EGUIさんがそれを言うんですね」


wataがすぐに乗る。


「Straight Typeからの柔軟提案や」


EGUIは真顔で言う。


「歓迎会やからな」


mcRCが笑った。


「EGUIが一番歓迎会を分かってる」


「普通に言っただけや」


そう言いながら、EGUIも少しだけ口元を緩めていた。


席はフロアの端だった。


DJブースが見える。

でも、近すぎない。

音は届く。

でも、声も届く。


Kateが選んだ席は、ちゃんと“逃げ道”がある場所だった。


mcRCがソファの端に座り、wataがその隣に沈み込む。

EGUIは背もたれに軽く手を置いてから腰を下ろした。

Kateは入口側が見える位置。

Saraは全体を見渡せる位置。

Yuiは端でメモを開ける位置。

Ninaはフロアが見える位置。

Miwaはなぜか、全員の顔が見える位置に座った。


wataがそれを見て言う。


「Miwaさん、そこ一番泣きやすい位置ちゃう?」


Miwaは即答した。


「水が出やすい位置です」


EGUIが低く言った。


「認めてるやん」


Miwaは真顔で返した。


「泣いてはいません」


Saraが穏やかに言う。


「今日は、その整理で行きましょう」


「助かります」


Yuiが小さく呟く。


「泣いてはいない。水が出るだけ」


Miwaが振り向く。


「Yui」


「記録していません。復唱です」


wataが笑いをこらえきれず、テーブルに手をついた。


「リバックライン、全員キャラ強いな」


Ninaが言う。


「リバクラさんに言われたくないです」


wataが指を立てる。


「敬称が丁寧!」


Ninaはすぐに返す。


「リバックラインは基本さん付けです」


mcRCが頷く。


「それ、ちゃんとしてるな」


Miwaがすかさず見る。


「mcRCさん」


mcRCは肩を落とした。


「はい」


「また敬語になりそうでした」


「もう監査が早い」


Kateが言う。


「敬語監査、稼働中ですね」


mcRCは苦笑した。


「歓迎会やのに監査されてる」


wataがコップを持ち上げた。


「じゃあ先に乾杯しよか。BEEF待つ?」


そこで、少しだけ全員が止まった。


BEEFは、まだ来ていなかった。


来るとは言っていない。

行っても構わない、と言っただけ。


それでも、席はひとつ空いていた。


音の近くに逃げられる、端の席。


mcRCはその空席を見て、少しだけ笑った。


「待つほど重くすると、あいつ来にくいやろ」


EGUIが頷いた。


「始めとこう」


wataが笑う。


「来たら勝手に座るやろ」


Kateが空席を見る。


「それが良いと思います」


Saraも頷いた。


「参加の圧をかけない形ですね」


Yuiが小さく言う。


「空席は用意する。圧はかけない」


Miwaは、その空席を見ながら少しだけ笑った。


「来てほしいですね」


mcRCは、短く返した。


「うん」


それ以上は言わなかった。


wataがグラスを掲げる。


「では。リバックライン歓迎会、開会ということで」


mcRCが続ける。


「いつもほんまにありがとう」


EGUIが言う。


「これからも、よろしく」


Miwaの目が少し揺れた。


Ninaがすぐ確認する。


「水ですか?」


Miwaはグラスを持ったまま言った。


「これは、もう水です」


Yuiが何も言わず、そっと紙ナプキンを渡した。


全員が笑った。


そして、乾杯した。


最初の三十分は、ぎこちないようで、ずっと笑っていた。


リバックラインは、初めてリバクラ三人と“仕事ではない話”をした。


とはいえ、仕事の話も混ざる。


「物販列の最後尾札、次はもう少し見やすくしたいです」


「告知文で、That’s Liveをどこまで説明するか悩んでます」


「客席の声を切り抜きに使う場合は、もう一段慎重に」


「日程表、次の候補出します」


リバクラ三人は、そのたびに真面目に頷いた。


そして、そのたびにwataが言った。


「強いな、リバックライン」


言うたびに、Miwaの水位が上がった。


「水ですか?」


「はい」


「何回目ですか?」


「数えないでください」


そのやり取りが繰り返されるたびに、場が少しずつ柔らかくなっていった。


mcRCは、ふとグラスを置いた。


「ほんまに、助かってる」


Miwaが構える。


Ninaも構える。


Yuiは紙ナプキンを少し前に出す。


mcRCはそれを見て笑った。


「言いづらいわ」


Kateが静かに言った。


「でも、言ってください」


mcRCは一度、店内の音に耳を傾けた。


低いビートが流れている。

誰かの笑い声。

グラスの音。

遠くでフロアに入っていく人の足音。


静かな場所ではない。


だからこそ、言いやすいことがある。


「俺ら、音を作りたいんよ」


三人は、少し黙った。


mcRCが続ける。


「でも、音を届けようとしたら、音じゃないことがめちゃくちゃ増える。告知、物販、連絡、権利、数字、導線、客席の反応。全部大事やけど、全部俺らだけで抱えてたら、たぶん音が痩せる」


wataが黙って頷いた。


EGUIも、グラスを持ったまま視線を落とす。


「それで、この数日も、めちゃくちゃ見えてた」


mcRCは、まずKateを見た。


「Kateさん、新川さんや店との連絡、ずっと整えてくれてたやろ。こっちが感情で前に出そうになる時、ちゃんと外に出せる言葉に直してくれてた」


Kateは、軽く目を伏せた。


「役割です」


wataがすぐ言った。


「照れてる」


「照れていません」


Miwaが小さく言う。


「今のは照れてます」


Yuiが口を開きかけたが、Kateが目だけで止めた。


「記録しません」


それで少し笑いが起きた。


mcRCはMiwaを見た。


「Miwaさんは、物販で売るだけじゃなくて、客の声を拾ってくれてる。どの曲を探してるか。どの言葉に反応してるか。何を持ち帰ってるか。ステージから見えへん顔を、俺らに返してくれてる」


Miwaは少しだけ口元を押さえた。


wataがすぐ言う。


「水か?」


「違います」


少し間が空いた。


「……今回は、ちょっとだけ水です」


EGUIが低く笑った。


「結局出るんやな」


mcRCは笑わず、静かに言った。


「見えてるよ」


Miwaは、それ以上何も言えなくなった。


次に、mcRCはNinaを見た。


「Ninaさんは、ライブ後の熱の扱いがうまい。煽りすぎても雑になるし、冷ましすぎても消える。その間を見て、次も見たいって思える形にしてくれてる」


Ninaは少し背筋を伸ばした。


「ありがとうございます」


wataが続ける。


「切り抜きタイトルも、Ninaさんが止めてくれてなかったら、俺らたぶん変に面白がってた」


EGUIが頷く。


「BEEFを雑に扱わない方向にしたのも大きい」


Ninaは少し笑った。


「そこはSaraと一緒に見ました」


mcRCは頷く。


「それでも、最初に空気を読んでくれたのはNinaさんやと思ってる。何が伸びるかだけじゃなくて、何を伸ばしていいかを考えてくれてる」


Ninaは、少しだけ目を細めた。


「それは、リバクラがそういう音楽だからです」


mcRCは静かに笑った。


「それを分かってくれてるのが、助かる」


次に、mcRCはSaraを見た。


「Saraさん」


Saraは静かに頷いた。


「はい」


「権利確認、ほんまに助かってる」


Saraは少しだけ表情を引き締めた。


mcRCは言った。


「正直、俺らだけやったら、感情で良いと思ったものをそのまま出してしまうことがある。でも、Saraさんが止めてくれる。これは出していいのか。誰かを傷つけないか。BEEFを茶化しすぎてないか。客席の声を雑に使ってないか。そこを見てくれるの、めちゃくちゃ大事やと思ってる」


EGUIが続けた。


「人を雑に扱うなって歌ってる側が、素材の扱いで人を雑にしたら終わりやからな」


wataも頷いた。


「そこをSaraさんが見てくれてるの、かなりでかい」


Saraは、少しだけ目を伏せた。


「私は、止める役が多くなるので、空気を重くしていないか気になっていました」


mcRCはすぐに首を横に振った。


「逆やと思う。Saraさんが線を引いてくれるから、俺らは安心して前に出られる」


Saraは、少しだけ黙った。


「それなら、よかったです」


mcRCは短く言った。


「かなり助かってる」


最後に、mcRCはYuiを見た。


「Yuiさん」


Yuiは、持っていたペンを置いた。


「はい」


mcRCは少し笑った。


「今日は記録せんでええよ」


Yuiは一瞬だけ迷ってから、頷いた。


「はい」


「作業表、ほんまに助かってる。表にしてくれるだけで、俺らの頭の中がかなり楽になる。誰が何を持ってるか。何が終わってて、何が残ってるか。誰に確認が必要か。それが見えるだけで、かなり違う」


wataが言う。


「俺、Yuiさんの表なかったら、たぶん三つくらい忘れてた」


EGUIが言う。


「三つで済むか?」


wataが少し考えた。


「五つ」


Yuiが真面目に言う。


「五つは多いです」


wataが笑った。


「すみません」


mcRCは続けた。


「音楽って、感情で作るところがある。でも、続けるには管理がいる。Yuiさんがそこを形にしてくれるから、俺らは次に行ける」


Yuiは、少しだけ目を伏せた。


「作業表は、目立つものではないので」


mcRCはすぐに言った。


「だからこそ、言いたかった」


Yuiが顔を上げる。


mcRCは、まっすぐ見て言った。


「見えてるよ。ちゃんと、助かってる」


五人に言い終えたあと、テーブルは少し静かになった。


音は鳴っている。


でも、その席だけ、音の奥に別の静けさがあった。


mcRCは、五人を見た。


「俺ら、UNSEEN HANDSって曲を作ったやろ」


Miwaが小さく頷いた。


Ninaも、Saraも、Yuiも、Kateも、何も言わずに聞いていた。


「見えない手がある。誰にも呼ばれない名がある。でも、その支えで今日も立ってる」


wataが静かに続けた。


「今のリバックラインが、それなんよ」


EGUIが言う。


「でも、見えないままにはしない」


mcRCは頷いた。


「ちゃんと見えてる。俺らは、見えてる。だから今日は、それを言いたかった」


誰もすぐには返さなかった。


Miwaが、紙ナプキンを一枚取った。


今度は誰も茶化さなかった。


Kateは静かに息を吐いた。


Ninaは伏せていたスマホに手を伸ばさなかった。


Saraは目を伏せたまま、少しだけ頷いた。


Yuiはペンを置いたまま、何も記録しなかった。


しばらくして、Kateが言った。


「ありがとうございます」


その声は、いつもより少し柔らかかった。


「ちゃんと受け取りました」


mcRCは頷いた。


「こちらこそ。ほんまにありがとう」


その時、入口の方で、空気が少しだけ動いた。


BEEFが来た。


黒い服。

黒いキャップ。

肩にかかったバッグ。

表情は、いつも通り不機嫌そうに見える。


でも、階段を降りてきた時点で、明らかに全員を見ていた。


見ていない顔で。


wataが小声で言う。


「来た」


EGUIが短く返す。


「来たな」


mcRCは何も言わず、少しだけ手を上げた。


BEEFは、その手を見た。


見ていない顔で見た。


そして、こちらへ来た。


空いていた席の前で止まる。


「……何の集まりだよ」


wataが笑った。


「歓迎会や言うたやろ」


「誰の」


Miwaが答える。


「リバックラインのです」


BEEFはMiwaを見た。


Miwaは少しだけ背筋を伸ばした。


「でも、BEEFさんも来てくれたら嬉しい会です」


BEEFは一瞬黙った。


wataがすかさず小声で言う。


「嬉しい来た」


EGUIが肘で止める。


BEEFは、席に座る前にmcRCを見た。


「来るとは言ってねえ」


mcRCは笑った。


「知ってる」


「行っても構わないって言っただけだ」


「知ってる」


「勝手に席空けんな」


「勝手に空けた」


BEEFは嫌そうな顔をした。


でも、座った。


BEEFが座ると、不思議なことに場が少し落ち着いた。


緊張したわけではない。


むしろ、完成したような感じがあった。


空席が埋まった。


ただそれだけなのに、テーブルの形が変わった。


BEEFはメニューを見た。


「酒は」


Saraがすぐ言う。


「帰宅導線と体調に支障がない範囲でお願いします」


BEEFはSaraを見た。


「何だお前」


Saraは丁寧に会釈した。


「Saraです。権利確認を担当しています」


wataが笑う。


「飲酒確認も権利なん?」


Saraは真面目に返す。


「権利というより、安全配慮です」


BEEFは少しだけ眉を寄せる。


「面倒くせえ」


Yuiが続く。


「終電時刻も確認済みです」


BEEFがYuiを見る。


「何だお前は」


「Yuiです。庶務・作業表です」


「作業表が喋った」


Yuiは少しだけ首を傾げた。


「喋ります」


wataが腹を抱えた。


「作業表が喋ったw」


Kateが静かに説明する。


「こちらがリバックラインです」


BEEFはテーブルを見た。


Kate。

Miwa。

Nina。

Sara。

Yui。


それから、リバクラ三人。


最後に、自分。


「人数多いな」


mcRCが言う。


「歓迎会やからな」


「誰の」


wataがすぐ言う。


「だからリバックラインの」


BEEFは少しだけ黙った。


それから、グラスを持った。


「……おつかれ」


その一言は、乾杯の挨拶としては短すぎた。


でも、BEEFとしては長かった。


Miwaがまた固まる。


Ninaが小声で言う。


「水ですか」


Miwaはグラスを握りしめた。


「これは……火力です」


Yuiが小さく呟く。


「水ではなく火力」


Kateが止める。


「記録しなくていいです」


BEEFは全員を見る。


「お前ら何してんだ」


EGUIが淡々と答える。


「歓迎会」


BEEFは少しだけ顔をしかめた。


「変な会だな」


mcRCは笑った。


「俺ららしいやろ」


BEEFは答えなかった。


でも、席を立たなかった。


それだけで十分だった。


少し時間が経つと、音が場を助け始めた。


会話が止まっても、不自然にならない。

誰かが飲み物を取りに立っても、間が空かない。

BEEFが無言になっても、沈黙が責めにならない。


Kateの読みは当たっていた。


BEEFは、たまにDJブースを見る。


手元を見る。

曲の繋ぎ方を見る。

フロアの反応を見る。


その目は、ライブの時と少し似ていた。


見ていない顔で、全部見ている。


wataがそれを見逃さなかった。


「BEEF、気になるん?」


「別に」


「絶対見てるやん」


「見てねえ」


mcRCが笑う。


「見てない顔で見てる」


BEEFが睨む。


「それやめろ」


EGUIが低く言う。


「定着してる」


「定着させるな」


Ninaが少し遠慮がちに聞いた。


「あの、BEEFさん」


BEEFは視線だけ向ける。


「何」


Ninaは一瞬だけ緊張したが、聞いた。


「今日、こういう場所の方が来やすかったですか?」


テーブルが少しだけ静かになった。


KateがNinaを見る。


Saraも、少し姿勢を正した。


BEEFはしばらく答えなかった。


音がひとつ、曲の切れ目に沈む。


BEEFはDJブースの方を見たまま、低く言った。


「……静かな店よりはマシだな」


wataが小さく笑った。


「ほらな」


BEEFが睨む。


「うるせえ」


Kateが静かに言った。


「それなら、よかったです」


BEEFはそちらを見た。


「お前が選んだのか」


「はい」


「……面倒なことするな」


Kateはほんの少しだけ笑った。


「必要だと思いました」


BEEFは何も返さなかった。


でも、すぐには目を逸らさなかった。


mcRCは、そのやり取りを見ていた。


BEEFが、居心地の悪さを完全には消せないまま、それでも席にいる。


Kateが、それを勝手に踏み込まず、でもちゃんと場所で支えている。


それが、この場の答えみたいだった。


wataがグラスを軽く鳴らした。


「ようこそ、変な会へ」


BEEFはグラスを持ったまま、低く返した。


「変なのはお前らだ」


EGUIが頷く。


「否定はしない」


Miwaが笑った。


Ninaも、Saraも、Yuiも笑った。


Kateも少しだけ笑った。


BEEFは、またDJブースを見た。


見ていない顔で。


でも、もう誰も、それを無理に指摘しなかった。


音がある。


言葉が詰まっても、逃げ道がある。


でも、逃げきらなくてもいい。


歓迎会は、ようやく全員の形になった。

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