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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
暴れ牛ビーフ編

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3-1-5 リバックライン、稼働開始



リバクラボラトリーの机の上に、ノートパソコンが置かれていた。


画面には、黒い待機画面。


その中央に、ビデオ通話の開始ボタンがある。


mcRCは、まだ押していなかった。


wataは隣で椅子に浅く座り、片足を小さく揺らしていた。

落ち着きがないというより、何かが始まる前の体温を逃がしているような動きだった。


EGUIは反対側に座り、ペットボトルの水を一口だけ飲んでから、キャップをきっちり閉めた。


机の上には、今日話すためのメモが並んでいる。


リバクラブ。

リバックライン。

実務担当。

外部連絡。

物販。

告知。

権利確認。

問い合わせ分類。

作業表。

そして、今後の相談先。


新川。


その名前だけが、まだ丸で囲まれていた。


wataが画面を覗き込んだ。


「なあ」


mcRCが見る。


「何」


「まだ開始せんの?」


「する」


「今、三分ぐらい“する”の顔してるで」


EGUIが短く言った。


「緊張してる」


mcRCは否定しなかった。


「してる」


wataは少し笑った。


「お、今日は正直」


「今日は、隠しても意味ない」


「たしかに。相手、元部下やもんな」


mcRCは小さく息を吐いた。


「元部下って言い方も、そろそろ違う気がする」


wataが眉を上げる。


「お」


EGUIも視線を上げた。


mcRCは、画面の待機表示を見たまま言った。


「もう、協力してくれる人たちやから」


wataは少しだけ口元を緩めた。


「リバックライン」


「うん」


EGUIが頷いた。


「横に来る人たち」


mcRCは、その言葉を聞いてから、ようやく開始ボタンにカーソルを合わせた。


「じゃあ、始める」


クリック。


画面が切り替わった。


最初に映ったのは、Kateだった。


画面上の名前は、きっちりこうなっている。


Kate@秘書・外部連絡


白いブラウスに、薄いグレーのカーディガン。

髪は後ろでまとめている。

背景は自宅らしいが、机の上は妙に整っている。

画面の端に、書類立てと小さな卓上ライトが見えた。


「聞こえていますか」


声も、いつも通り落ち着いている。


mcRCは少し姿勢を正した。


「はい。聞こえています。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」


その瞬間、Kateの眉がほんの少し動いた。


続いて画面が増える。


Miwa@物販


明るめの部屋。

後ろの棚に、なぜか小さなぬいぐるみとカラフルなポーチが並んでいる。

彼女は画面に入るなり、手を振った。


「こんばんはー!」


Nina@告知販促


照明は少し暗め。

背景にはノートパソコンの別モニターが見えていて、SNSの分析画面らしきものが小さく映っている。

彼女は片手でイヤホンを押さえながら笑った。


「聞こえてます」


Sara@権利確認


白い壁。

机の上に分厚めのファイル。

姿勢がまっすぐで、画面の中でも空気が落ち着いている。

彼女は軽く会釈した。


「よろしくお願いします」


Yui@庶務・作業表


画面の端にメモ帳が見える。

すでに何かを書いている。

彼女は少しだけカメラの位置を直し、小さく頭を下げた。


「よろしくお願いします」


五人の画面が並んだ。


リバックLINEではよく話していたのに、顔が並ぶと少し違う。


文字だけではない。

表情がある。

間がある。

目線がある。

息を吸うタイミングがある。


Miwaが、画面越しにじっとmcRCを見ていた。


それから、少しだけ首を傾げた。


「……あの」


mcRCが見る。


「はい、何でしょうか」


Miwaは一瞬だけ黙った。


そのあと、なぜか口元を押さえた。


Ninaがすぐ反応する。


「Miwa、もう顔に出てる」


Miwaが小声で言う。


「いや、だって」


Kateが静かに言った。


「Miwa、どうぞ」


Miwaは少しだけ画面に近づいた。


「mcRCさん」


「はい」


「いつまでそんなに硬い口調なんですか?」


部屋の空気が止まった。


wataが、隣で思いきり吹き出しそうになり、口を押さえた。


EGUIも、ほんの少しだけ目を細める。


mcRCは、動けなかった。


「……硬い?」


Miwaは頷いた。


「硬いです」


Ninaが続ける。


「かなり硬いです」


Saraが冷静に補足した。


「丁寧ではあります。ただ、距離があります」


Yuiがメモを見ながら言う。


「旧職場比で、約三段階硬いです」


wataはもう耐えきれず、机に突っ伏した。


「旧職場比って何やねん」


Kateも、少しだけ笑っていた。


「私も、少し思っていました」


mcRCは画面の五人を見た。


「いや、協力してもらう立場だから、丁寧な方がいいかなと思って」


Miwaの表情が、ふっと揺れた。


「それは、分かります」


声が少し柔らかくなる。


「分かるんですけど」


彼女は一度、言葉を飲み込んだ。


Ninaが、代わりに静かに言う。


「昔みたいには、喋ってくれないんですか?」


その言葉で、mcRCの胸の奥が少し動いた。


昔みたいに。


前職の会議室。

バックヤード。

売場の端。

閉店後の照明。

誰かが泣きそうだった日。

誰かが腹を立てていた日。

締切に追われて、全員で机を囲んだ夜。


その時の彼は、こんなに丁寧には話していなかった。


もっと短く、もっと軽く、もっと近かった。


もちろん、仕事の場では厳しいことも言った。

線も引いた。

責任も問うた。


でも、彼女たちが覚えているのは、それだけではなかった。


「部長、ちょっと聞いてくださいよ」

「いや、それはお前、先に言え」

「今それで泣くな。水飲め」

「ミスは直す。人を責めるのはあと」

「伝わってないなら、伝えたことになってない」

「はい、もう一回やろう」


そういう距離。


そういう声。


mcRCは、少しだけ目を伏せた。


「……分かった」


wataが横から顔を上げる。


「お」


mcRCは、画面を見直した。


「わかったよ。もう昔みたいに戻すわ」


Miwaの表情が、一瞬で崩れた。


笑いそうになって、泣きそうになって、どちらにも行けずに止まるような顔。


「……それです」


声が小さくなった。


「その感じです」


Ninaも、少し目元を緩める。


「急に戻った」


Saraは静かに頷いた。


「距離感が合いました」


Yuiがメモに何かを書いている。


wataがすかさず言った。


「Yuiちゃん、今の何メモってるん?」


Yuiは顔を上げた。


「議事録です」


「議事録に“昔みたいに戻す”って書いてるん?」


「はい」


Miwaが笑いながら目元を押さえた。


「やめて、泣きそうなのに笑う」


EGUIが静かに言う。


「忙しいな」


Miwaは画面越しにEGUIを見る。


「EGUIさん、そういう強めのツッコミ、やめてください」


EGUIが少し眉を動かす。


「強かったか」


Ninaが即座に言う。


「今のはよかったです」


Saraも頷いた。


「端的でした」


Yuiが言う。


「記録しました」


wataが目を丸くする。


「記録すんな!」


Miwaは、さっきまで泣きそうだったのに、もう少し前のめりになっている。


「いや、なんか、三人から強めに突っ込まれると、ちょっと嬉しいんですよね」


Kateが軽く咳払いをした。


「Miwa」


「すみません。でも、たぶん全員そうです」


Ninaが目を逸らした。


Saraが何も言わない。


Yuiがメモを見る。


沈黙。


wataがゆっくり言った。


「全員なんや」


Kateは、少しだけ困ったように笑った。


「……悪癖です」


mcRCは額に手を当てた。


「なんで強いツッコミで興奮するチームになってるんだよ」


Miwaが即答する。


「元をたどると、たぶん部長です」


「俺のせいにするな」


Ninaが笑う。


「でも、ちゃんと見てくれてる人に、ちゃんと突っ込まれるのって、安心するんですよ」


その言葉で、ふざけた空気が少しだけ変わった。


Saraが静かに続ける。


「無関心ではない、ということなので」


Yuiも頷く。


「見られている感じがします」


Kateが言った。


「だから、強く言われたいわけではありません。けれど、必要な時に止めてもらえる関係は、安心します」


mcRCは画面の五人を見た。


笑いながら、少し泣きそうになりながら、でも仕事をしに来ている五人。


この子たちは、会話の方がいい。


文字だけでは少し硬い。

メールでは整いすぎる。

でも、顔を見て話すと、昔の呼吸が戻る。


今の盛り上がりと、過去の記憶が混ざる。


それが、少し危ないくらい心を動かす。


特にMiwaは、もう目元が赤い。


mcRCは、少しだけ声を柔らかくした。


「Miwa」


「はい」


「泣くのはいいけど、泣きながら物販計画立てるなよ」


Miwaは一瞬止まって、それから涙目のまま笑った。


「それ、やります」


「やるな」


wataが机を叩いて笑った。


「最高やな、このチーム」


EGUIも、口元を少しだけ緩めている。


Kateが、笑いを整えるように背筋を伸ばした。


「では、口調も少し戻ったところで、本題に入ってよろしいでしょうか」


mcRCは頷いた。


「ああ。お願いします」


Kateの表情が少し明るくなる。


「はい」


彼女は、画面共有を始めた。


そこに映ったのは、Yuiが作った作業表だった。


タブが並んでいる。


問い合わせ一覧

物販在庫

告知予定

外部連絡

権利確認

三人判断待ち

リバックライン対応

保留

無理な時は無理と言う


wataが最後のタブを見て、眉を上げた。


「やっぱりあるんや、そのタブ」


Yui@庶務・作業表が真顔で頷いた。


「必要です」


EGUIが言う。


「必要やな」


wataがEGUIを見る。


「そこは乗るんや」


「乗る」


Miwa@物販が手を挙げた。


「まず確認なんですけど、リバクラブの件です」


mcRCが頷いた。


「ああ、そこ大事」


Miwaは少し姿勢を正した。


「私たちは、リバクラブを作りたいです。普通に、リバクラを応援するファンクラブとして」


Nina@告知販促が続ける。


「リバクルー全体に向けた場所です。五人だけのものではありません」


Sara@権利確認が補足する。


「有料化するか無料運用から始めるか、会員情報をどう扱うか、特典の範囲、名称の使用条件などは、確認が必要です」


Yui@庶務・作業表が言う。


「リバクラブは、運営設計が必要です。今すぐ始める場合でも、最初は仮運用が安全です」


Kate@秘書・外部連絡がまとめる。


「つまり、リバクラブはファンクラブとして作りたいです。ただし、正式運用には設計が必要です」


mcRCは、しっかり頷いた。


「そこ、俺ちょっと勘違いしてたかもしれない」


Miwaが首を傾げる。


「勘違い?」


「リバクラブって、五人のチーム名みたいにも聞こえてた」


Miwaが慌てて手を振った。


「違います違います!」


Ninaも笑った。


「そこは違います」


Saraが冷静に言う。


「五人の実務チーム名は、リバックラインです」


Yuiが作業表に一行追加する。


「整理:リバクラブ=ファンクラブ。リバックライン=実務支援チーム」


wataが笑う。


「整理早」


EGUIが頷いた。


「これは分かりやすい」


Kateが続けた。


「そして、リバクラブの中で、名誉番号のような形で一番から五番をいただけたら、というお願いです」


Miwaが小さく手を挙げる。


「ここは、できれば譲りたくないです」


Ninaも言う。


「ただし、番号をどう決めるかはまだ揉めています」


Saraが淡々と言った。


「感情面の調整が難航しています」


Yuiが画面共有の端で、別タブを開いた。


議題:リバクラブ名誉番号1〜5

状態:未決

候補:抽選/年齢順/役割順/五十音順/貢献内容順/永遠に揉める


wataが吹き出した。


「最後なんやねん!」


Yuiは真面目に言った。


「文化案です」


mcRCは笑いながら首を振った。


「永遠に揉めるのはやめろ」


Miwaが少しだけ不満そうに言う。


「でも、一番は大事なんです」


mcRCはその顔を見て、少しだけ優しく笑った。


「分かってる」


Miwaは、また目元を揺らした。


「分かってるって言われるの、だめですね」


「だめ?」


「泣きそうになります」


wataがすかさず言う。


「泣きながら一番を取りに行くなよ」


Miwaは涙目で笑った。


「行きます」


「行くんかい」


Ninaが笑いながら言う。


「Miwa、物販より番号で燃えてる」


Miwa@物販が胸を張る。


「物販も番号も大事です」


Sara@権利確認が言った。


「番号の権利確認は不要ですが、感情確認は必要です」


EGUIが小さく言う。


「新しい確認項目やな」


Yuiが真顔で打ち込む。


「感情確認」


wataが慌てる。


「入れるな!」


画面越しに、五人が笑った。


三人も笑った。


ビデオ通話なのに、部屋がひとつ増えたみたいだった。


リバクラボラトリーの机の向こうに、五つの画面。

それぞれ別の場所にいるのに、同じ机を囲んでいるような近さがある。


現代の文明の力。


何度も来てもらうのは手間だ。

彼女たちにも仕事がある。

夜の時間は限られている。


でも、顔を見て話すことはできる。


文字では硬くなる話も、声ならほどける。

表情が見えれば、冗談と本気を分けられる。

泣きそうな人には、少し待てる。

暴走しそうな人には、突っ込める。


mcRCは、少しだけ息を吐いた。


「じゃあ、整理するぞ」


その口調に、五人の表情が少し変わった。


昔を知っている顔だった。


mcRCは続ける。


「リバクラブは作る。これは、リバクルー全体のファンクラブとして考える」


五人が頷く。


「ただし、すぐに正式運用じゃなくて、仮設計から」


Kate@秘書・外部連絡が頷く。


「はい」


「リバックラインは、五人の実務支援チーム名」


Yui@庶務・作業表が打つ。


「確定事項に追加します」


「番号一から五は、リバクラブの名誉番号として扱う。ただし決め方は保留」


Miwa@物販が小さく拳を握る。


「保留……」


wataが笑う。


「悔しそう」


「悔しいです」


EGUIが言う。


「でも保留や」


Miwaは画面越しにEGUIを見た。


「その言い方、いいですね」


EGUIが眉を寄せる。


「何が」


Nina@告知販促が笑った。


「また出た。強めツッコミで喜ぶ悪癖」


Sara@権利確認が静かに言う。


「自覚はあります」


Yui@庶務・作業表が記録する。


「悪癖:強いツッコミに反応しがち」


Kate@秘書・外部連絡がすぐ止める。


「それは議事録から消してください」


Yuiが少し残念そうに言う。


「削除します」


wataが涙が出るほど笑っている。


「ほんま最高やな」


mcRCも笑ったあと、少しだけ真面目な顔に戻した。


「で、ここから仕事の話」


画面の向こうの五人も、すぐに表情を切り替えた。


その速さが、やはり仕事の人たちだった。


mcRCは、メモを見ながら話した。


「今、俺たちが抱えてる問題は大きく三つ」


指を三本立てる。


「一つ、音楽以外の作業が増えすぎて、曲を作る時間が削れてる」


五人が頷く。


「二つ、外部ライブや小箱の話が来始めてるけど、俺たちは会場選びや契約条件や導線に詳しくない」


Kateの目が少し鋭くなる。


「三つ、今後はリバクラブや物販、告知、問い合わせをちゃんと運用しないと、リバクルーにも迷惑がかかる」


Saraが頷く。


「はい」


mcRCは画面を見た。


「だから、リバックラインに仕事を渡す」


その一言で、五人の空気が変わった。


緊張ではない。


背筋が伸びる感じ。


Kate@秘書・外部連絡が最初に言った。


「受けます」


Miwa@物販も続ける。


「受けます」


Nina@告知販促が頷く。


「受けます」


Sara@権利確認。


「範囲を確認したうえで、受けます」


Yui@庶務・作業表。


「作業表に落とします」


wataが小声で言う。


「頼もしすぎる」


mcRCは続けた。


「まず外部連絡。今後、会場や外部の人とのやり取りは、一次窓口をKateにお願いしたい」


Kateは頷く。


「はい」


「ただし、重要なものは俺にCC」


その瞬間、Miwaが顔を伏せた。


Ninaも口元を押さえる。


wataがすぐに察した。


「言いたいやろ」


Miwaが震える声で言う。


「言いたいです」


mcRCは嫌な予感がした。


「言うなよ」


Miwaは、我慢しきれずに言った。


「部長にはCC飛ばします」


全員が笑った。


Kateまで、つい笑った。


mcRCは頭を抱えた。


「だから部長って呼ぶな」


Ninaが笑いながら言う。


「今のは仕方ないです」


Saraも、少しだけ口元を緩めている。


「文脈上、避けにくかったです」


Yuiが真剣に言う。


「外部メールでは使用禁止です」


wataが机を叩いた。


「内輪なら使用可みたいになってる!」


mcRCは、笑いをこらえながら言った。


「外部メールでも内輪でも基本禁止」


Miwaは少し残念そうに言う。


「基本」


EGUIが言う。


「例外を探すな」


Miwaの目がきらっとした。


「今のもいいですね」


EGUIが止まった。


Ninaが笑う。


「また反応してる」


Yuiが打ち込む。


「悪癖再発」


Kateが言う。


「Yui、それは消して」


「はい」


ひとしきり笑ってから、mcRCは話を戻した。


「Kateには、日程候補の整理、確認事項の洗い出し、メール文面の下書きをお願いしたい。判断はこっちに戻してくれ」


Kate@秘書・外部連絡は、きちんと頷いた。


「承知しました。外部連絡は私が一次窓口。重要事項はmcRCさんをCC。判断が必要なものは三人へ戻します」


mcRCは次に、Miwaを見る。


「Miwaは物販」


「はい!」


「今ある在庫、再販希望、商品化候補、ネタとして残すもの、扱い注意のものを分けてほしい」


Miwa@物販は、すでにメモを取っていた。


「READYタオル、赤ペン、リバ点呼ステッカー、逆さまクラウン系は優先確認します。リバクラーメンとリバクライスは、まず文化ネタ扱い。商品化は慎重に」


Sara@権利確認が頷く。


「食品は確認事項が多いので、その判断でよいと思います」


wataが言う。


「リバクラーメン、まだ食べるだけにしよう」


Miwaが真剣に言う。


「でも、いつかいけます」


「野望を捨てろ」


「捨てません」


Nina@告知販促が笑いながら言う。


「その会話、投稿にしたい」


mcRCがすぐ言う。


「まだ出すな」


Ninaは両手を上げた。


「出しません。未公開会話です」


Saraが頷く。


「未公開情報扱いです」


Yuiが作業表に入力する。


「未公開会話:投稿不可」


wataが感心したように言う。


「ちゃんとしてる」


mcRCは続けた。


「Ninaは告知。感想共有、次の動き、リバクルー文化、この三つに分けてほしい」


Nina@告知販促が頷く。


「はい。全部宣伝にすると疲れます。全部内輪ネタにすると初見が入れません。混ぜます」


EGUIが言う。


「初見向けの説明も必要」


「はい。リバ点呼、リバクラーメン、SMALL WINあたりは、知らない人にも意味が伝わる言葉を添えます」


「いいと思う」


Ninaは少しだけ嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます」


mcRCはSaraを見る。


「Saraは権利確認。音源提出、配信可否、会場ルール、切り抜き範囲。未確認は未確認で止めてほしい」


Sara@権利確認は、はっきり頷いた。


「はい。確認できていないものは断定しません。判断が必要なものは戻します」


「助かる」


Saraは少しだけ目を伏せた。


「助けます」


その短い返事に、wataが少し反応した。


「今のいいな」


Saraは少しだけ照れた。


「ありがとうございます」


Yui@庶務・作業表は、もう画面に作業表を出している。


mcRCが言う前に、彼女は言った。


「問い合わせ分類、作業表管理、進捗確認、作業時間記録、無理な時は無理と言うタブ、担当します」


wataが笑う。


「自己申告が完璧」


Yuiは真顔で頷いた。


「抜け漏れを減らします」


mcRCは、五人を見た。


それぞれが、それぞれの場所で画面の向こうにいる。


でも、もうただ話を聞いている人たちではない。


動き始めている。


リバックライン。


見えない支えを、見える線にする人たち。


mcRCは、少しだけ声を落とした。


「あと、これだけは最初に言っとく」


五人が画面を見る。


「無理するな」


Miwaが少しだけ表情を変える。


mcRCは続けた。


「好きだから、で無理するな」


Ninaが目を伏せる。


「夜だから少しなら、で積み上げるな」


Yuiの手が止まる。


「できない時は、できないって言ってくれ」


Saraが静かに頷く。


「こっちも、無理してそうなら止める」


Kateの表情が少し柔らかくなった。


mcRCは、昔の口調のまま、でも今のmcRCとして言った。


「リバクラを好きでいてくれる人に、リバクラでしんどくなってほしくない」


しばらく、誰も喋らなかった。


Miwaは、今度こそ目元を押さえた。


「……それ、だめです」


wataが優しく突っ込む。


「何がだめなん」


「泣くやつです」


EGUIが言う。


「泣いても作業表は進まんぞ」


Miwaが涙目で笑った。


「だからそういうの、やめてくださいってば」


Ninaが笑いながら言う。


「また喜んでる」


Miwaは否定しなかった。


「喜んでます」


mcRCは呆れたように笑った。


「悪癖すぎる」


Kateが、画面の向こうで軽く頭を下げた。


「ありがとうございます。無理な時は、必ず言います」


Saraも言った。


「言わない方が不誠実になるので」


Yuiが頷く。


「作業時間で見えるようにします」


Ninaが言う。


「楽しさと負荷を分けます」


Miwaも、鼻をすすりながら言った。


「泣きながら物販計画は立てないようにします」


wataがすかさず返す。


「絶対立てるやつやん」


「立てます」


「立てるな」


また笑いが起きた。


その笑いは、軽くなかった。


人が増えるということは、面倒も増える。

線も必要になる。

決めることも増える。

誤解も起きるかもしれない。


でも、こうして顔を見て笑えるなら、言葉を戻せるなら、強めに突っ込んでも壊れないなら、たぶんやっていける。


Kate@秘書・外部連絡が、最後に画面共有を切った。


「では、こちらで初回作業に入ります」


mcRCは頷いた。


「お願い」


その口調に、五人が少しだけ反応した。


「お願いします」ではなく、「お願い」。


昔の距離に少し戻った言い方。


Miwaがまた泣きそうになり、Ninaが横目でそれを見て笑い、Saraが静かに目元を和らげ、Yuiが議事録に何かを書き、Kateが代表して頷いた。


「任せてください」


wataが横から言う。


「頼もしいな、リバックLINE」


Yuiがすぐに訂正する。


「通称です」


EGUIが言う。


「でも、いい名前や」


Yuiの手が止まった。


「……ありがとうございます」


その反応を見て、wataが小さく笑った。


「Yuiちゃんも強めに褒められると弱いんやな」


Yuiは画面の向こうで少しだけ目を伏せた。


「記録しません」


Ninaが笑う。


「今のは記録しないんだ」


Kateが、笑いながらも会を締める。


「では、本日はここまで。作業は三十分だけ進めて、止めます」


mcRCが頷く。


「止めてくれ」


「はい」


「本当に止めてくれ。最初から飛ばしすぎるな」


Miwaが小さく手を挙げる。


「少しだけなら」


EGUIが即座に言った。


「だめ」


Miwaの目がまた輝いた。


「はい」


wataが叫ぶ。


「喜ぶな!」


画面の中も、リバクラボラトリーも、同時に笑った。


通話が終わる直前、Kateが言った。


「mcRCさん」


「ん?」


「昔みたいに話してくれて、嬉しかったです」


Miwaが小さく頷く。


Ninaも笑う。


Saraは何も言わずに軽く会釈した。


Yuiは、少しだけ画面に向かって頭を下げた。


mcRCは、一瞬言葉を探した。


それから、少しだけ照れたように言った。


「こっちも、ちょっと懐かしかった」


Miwaがまた泣きそうになった。


wataがすぐ突っ込む。


「Miwaちゃん、もう今日は涙腺閉店!」


「閉店できません!」


EGUIが言う。


「閉店作業しろ」


Miwaが笑いながら目元を押さえる。


「だから、そういうの!」


通話は、その笑い声の中で切れた。


画面が黒くなる。


リバクラボラトリーに、三人だけが残る。


でも、さっきまでとは違った。


机の上にある作業は、まだ消えていない。


物販も、告知も、問い合わせも、外部連絡も、権利確認も、作業表も、全部まだある。


ただ、それらはもう、三人だけの机には乗っていない。


画面の向こうにも、同じ机ができた。


wataは、しばらく黒くなった画面を見ていた。


「……ええな」


mcRCが頷く。


「うん」


EGUIが言った。


「これで、少し動ける」


mcRCは、ホワイトボードに向かった。


そこに、昨日書いた文字がある。


リバックライン


その下に、新しく一行を書き足した。


リバクラブは、リバクルーの場所。

リバックラインは、活動を支える線。


wataがそれを読んで、静かに言った。


「分かりやすい」


EGUIも頷く。


「これで混ざらない」

 

mcRCはマーカーのキャップを閉めた。


「よし。リバクラブは、リバクルーの場所。リバックラインは、活動を支える線」


wataがホワイトボードを見ながら頷いた。


「うん。これなら分かる」


EGUIも、少しだけ目を細めて文字を追った。


「五人の立ち位置も、リバクルー全体の場所も、ちゃんと分かれる」


mcRCは頷いた。


「ここを曖昧にしたら、たぶん後で混ざる」


wataがすぐに言う。


「混ざったら大変やな。リバクラブ一番争奪戦と、問い合わせ対応が同じ場所で始まる」


EGUIが静かに返す。


「開始三分で信用失う」


wataが笑った。


「それ、今日は多用してええやつ?」


「今のは必要やった」


「必要な開始三分」


mcRCは少し笑って、ノートパソコンの画面へ目を戻した。


通話はもう終わっている。


でも、リバックLINEにはすでに新しい通知が来ていた。


Kate@秘書・外部連絡:

本日の内容、議事録化します。

リバクラブとリバックラインの違いも整理しておきます。

こちらは現時点で、物販・告知・問い合わせ・権利確認・作業表を進めます。


mcRCは、その文章を見て、短く返信した。


mcRC:

ありがとう。頼む。


今度は、硬くなかった。


すぐにMiwaから返事が来た。


Miwa@物販:

「頼む」いただきました。

本日分の元気、回復しました。


wataが画面を見て笑った。


「燃費いいな」


EGUIが言う。


「でも飛ばすなよ」


すぐにYuiが返す。


Yui@庶務・作業表:

飛ばしすぎ防止のため、作業終了時刻を設定済みです。


Nina@告知販促:

文明の力で見張られてる。


Sara@権利確認:

見張りではなく、継続管理です。


Kate@秘書・外部連絡:

では、こちらは作業に入ります。

三人は三人の仕事をしてください。


mcRCは、その最後の一文を見て、少しだけ笑った。


三人は三人の仕事をしてください。


まるで、昔自分が彼女たちに言っていたみたいな言葉だった。


でも今は、その言葉を自分たちが返されている。


それが少しおかしくて、少しありがたかった。


wataが椅子の背もたれに体を預けた。


「三人の仕事、か」


EGUIが画面を見たまま言った。


「曲を作ることやろ」


「まあ、そうなんやけど」


wataは、机の上に散らばった資料を見た。


物販。

告知。

問い合わせ。

権利確認。

作業表。

リバクラブ。

リバックライン。


さっきまで全部、三人の机の上にあったものだった。


消えたわけではない。


でも、もう三人だけの机には乗っていない。


画面の向こうにも、同じ机ができた。


Miwaが物販を見ている。

Ninaが告知の温度を見ている。

Saraが確認すべき線を引いている。

Yuiが作業を表に落としている。

Kateが全体の連絡を整えている。


それぞれが、それぞれの場所で、同じ活動を横から支えている。


wataは、少しだけ声を落とした。


「……ええな」


mcRCが頷いた。


「うん」


EGUIも言った。


「これで、少し動ける」


mcRCは、ホワイトボードに向かった。


そこに、さっき書いた文字がある。


リバクラブは、リバクルーの場所。

リバックラインは、活動を支える線。


mcRCは、その下にもう一行書き足した。


三人は、三人の音楽に戻る。


wataがそれを読んで、しばらく黙った。


「戻る、か」


mcRCはマーカーを置いた。


「戻るというより、戻さないといけない」


EGUIが頷く。


「作業を分けた理由は、そこやからな」


wataは、少しだけ笑った。


「なんか、急に責任出てきたな」


mcRCが言う。


「元からあるやろ」


「あるけどさ。これで“忙しくて曲作れません”って言い訳、ちょっと減ったやん」


EGUIが静かに言った。


「減ったな」


wataがEGUIを見る。


「そこは優しくして」


「優しくするところじゃない」


「正論で逃げ道塞ぐなあ」


mcRCは笑った。


その笑いは、少し軽かった。


今までと同じ作業量がある。

次の予定もある。

考えないといけないこともある。


でも、ひとつだけ変わった。


三人だけで全部を抱えなくていい。


それは、甘えるということではない。


三人が三人の仕事をするために、必要なものを渡したということだった。


mcRCはノートパソコンを閉じた。


画面が黒くなる。


リバックLINEの通知は、まだぽつぽつと来ている。


でも、もう全部を今すぐ開かなくてもいい。


Kateが見ている。

Yuiが表に落としている。

Ninaが外へ出す言葉を考えている。

Saraが危ない線を止める。

Miwaが楽しい形を探している。


wataが立ち上がった。


「じゃあ、俺らもやるか」


mcRCが見る。


「何を」


wataは、少しだけ肩を回した。


「三人の仕事」


EGUIも立ち上がる。


「まず、次に何を歌うかやな」


mcRCは頷いた。


「うん」


リバクラボラトリーの外では、夜の街がまだ動いていた。


車のライト。

駅へ向かう人の影。

コンビニの白い看板。

少し湿った風。


机の上には、まだ資料がある。


それでも、部屋は少しだけ広くなったように見えた。


リバックラインの画面は消えた。


けれど、その線は残っている。


見えない支えに、名前がついた。


リバクラブは、リバクルーの場所。

リバックラインは、活動を支える線。


そして三人は、また三人の音楽へ戻っていく。


全部を抱えたままではなく。


横に来てくれた人たちの手を、ちゃんと見える場所に置いたまま。

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