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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
俺たちがリバースクラウンだ

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20/60

1-6-3 アンコール、許可あり

mcRC「この小説の歌は実際に聴けるから、聴きながら読んでみてくれよな」

聴く場合はこちら:

コピペしてブラウザに貼り付けて、、、。とぶぞ。


take off

https://youtu.be/s-Ze1LLThko?si=9eDgv3Tk8Q5c4uBT


ATTACK

https://youtu.be/tRSOHKXvij8?si=xqiYugwdtS0mTWMu


SAY IT TO ME

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM


ORIGIN

https://youtu.be/v7r3_l4mYQM?si=l1vPLtDcNWjW9O6H


nofake

https://youtu.be/oV7c-3TJMgM?si=WDW85lU6iqQsmqZy


決めろ!はコチラ

https://youtu.be/P_2d3hcx3Uw?si=hvvTW3RMB2adTtwN


RUN IT

https://youtu.be/ptZZJdr_2hc?si=1Fw9cRYCdJAd1so4


ORDER

https://youtu.be/AdAhmiHwxfM?si=BMBopJs6y9S6hLWM



歓声が、まだ止まらなかった。


ATTACKの最後の音が落ちてから、もう何秒経ったのか分からない。


ステージの上に立っていると、時間の流れ方が少しおかしくなる。


一瞬の無音は、やけに長く感じた。

その後に返ってきた歓声は、逆に全部が一気に来た。


「ATTACK!」


「やばい!」


「もう一回!」


「リバクラ!」


「今の何!?」


「後ろまで来た!」


「もう一曲!」


声が混ざる。


リバクルーの声。

初見の声。

SAY IT TO MEから来たらしい、少し高い女性の声。

さっきまで腕を組んでいた男の、妙に太い声。

前の出演者のファンだったはずの誰かの声。


その全部が、ステージへ向かっていた。


mcRCは、頭を下げたまま、床を見ていた。


ステージの床には、靴の跡がいくつもついている。

照明の熱で少しだけ白く光っている場所がある。

自分の汗が、首の後ろを流れる。


胸が苦しい。


疲労ではない。


あまりにも多くのものが、こちらへ向かってきている。


嬉しい。

怖い。

ありがたい。

重い。


全部が同時に来る。


wataが隣で息を整えている。


呼吸は荒い。

でも、目は笑っている。


EGUIは、いつもより少しだけ口元を引き締めていた。


たぶん、あいつも感じている。


今のATTACKは、ただ盛り上がっただけではない。


会場の奥まで、何かが届いた。


それは勝ちだった。


でも、勝ちすぎた。


mcRCには、その感覚があった。


会場の熱が、明らかにリバクラに寄りすぎている。


さっきまでこのイベント全体に散っていた空気が、今は一本の線みたいにステージへ集まっている。


それは、ライブとしては最高だ。


でも、対バンイベントとしては、少し危うい。


前回の夜を思い出す。


アンコールの声。

やれるのに、やらなかった判断。

次の出演者へ熱を渡したこと。

「人の場所を潰すな」とEGUIが言ったこと。


あれは正しかった。


たぶん、今でも正しい。


だからこそ、mcRCはすぐにマイクを上げられなかった。


「もう一曲!」


「リバクラ!」


「TAKE OFF!」


その声に、mcRCの肩が少し動いた。


TAKE OFF。


誰かが曲名を知っている。


いや、まだ披露していない。


配信の雑談か、切り抜きの隅か、どこかで匂わせた言葉を拾われたのかもしれない。


「飛べ!」


「撃ったなら飛べ!」


「飛ばせろ!」


wataが、少しだけ笑った。


「飛ばせろって何」


EGUIが低く言う。


「日本語が荒い」


その短いやり取りが、マイクに少しだけ拾われた。


前の方の客が笑う。


「日本語が荒いw」


「EGUI先生!」


「飛ばせてください!」


wataが客席へ向けて言う。


「いや、飛ばせてください、もまあまあ荒い!」


笑いが広がる。


その笑いで、熱がほんの少しだけ柔らかくなる。


mcRCは、その隙間で袖を見た。


スタッフがいる。


進行表を持ったスタッフ。

音響。

主催者。

次の出演者。


主催者の男性が、時計を見ている。


その顔だけでは読めない。


OKなのか。

無理なのか。

時間は押しているのか。

次の転換に影響するのか。


mcRCは、マイクを下ろしたまま、ほんの少しだけ頭を下げるようにして、袖へ目で確認した。


勝手にはやらない。


ここは、自分たちだけの場所ではない。


歓声はまだ続いている。


「もう一曲!」


「リバクラ!」


「飛べ!」


「TAKE OFF!」


主催者が、スタッフと短く何かを話した。


次の出演者の方を見る。


次の出演者は、バンドだった。


ボーカルの男が、肩にギターをかけたまま、少し笑っている。


前回のように困った顔ではない。


その男が、mcRCと目を合わせた。


そして、ゆっくり親指を立てた。


袖の主催者も、小さく丸を作った。


時間はある。


場も、許している。


次の出演者も、渡してくれている。


mcRCの中で、何かが一段落ちた。


怖さが消えたわけではない。


でも、やっていい怖さになった。


勝手に奪うのではない。

許可をもらって、受け取る。


その違いは大きい。


wataが、横から小さく聞いた。


「どう?」


mcRCは、まだ客席を見たまま答えた。


「許可あり」


wataの顔が、一瞬で変わった。


笑うというより、点火した。


「まじか」


EGUIが言う。


「飛ぶか」


mcRCは頷いた。


「飛ぶ」


その短いやり取りだけで、三人の中のスイッチが切り替わった。


ATTACKの熱がまだ残っている。


だが、次は撃つ曲ではない。


飛ぶ曲だ。


止まった空気を撃ち抜いた後、その穴から外へ出る。


mcRCはマイクを上げた。


歓声が少しずつ落ちていく。


完全には静まらない。


でも、聞く準備はできていた。


「ありがとう」


声が少し震えた。


自分でも分かった。


でも、それを隠す気にはならなかった。


「ほんまに、ありがとう」


客席から声が返る。


「ありがとう!」


「最高!」


「飛んで!」


wataが横で小さく言う。


「圧がすごい」


EGUIが言う。


「飛行機飛ばす側の圧やな」


wataが吹き出す。


「管制塔かよ」


そのやり取りに、また笑いが起きる。


mcRCも少し笑った。


笑えたことで、少しだけ呼吸が戻った。


「前回は、アンコールを断りました」


客席が静かになる。


「今日も、勝手にはやりません」


mcRCは袖を見た。


主催者が頷いている。

次の出演者のボーカルも、もう一度軽く手を上げた。


mcRCは、そちらへ向かって深く頭を下げた。


「でも今日は」


客席が息を吸う。


「主催の人も、次の出演者も、ここにいるみんなも」


「行っていいって言ってくれてる」


フロアが揺れた。


「だから」


wataがマイクを上げる。


「撃ったなら?」


客席から返る。


「飛べ!」


wataが目を丸くする。


「いや、揃いすぎやろ!」


EGUIが低く言う。


「準備してきたな」


客席が笑う。


mcRCは、その笑いの中で言った。


「じゃあ、アンコール」


「新曲です」


声が爆発する。


「うおおおお!」


「新曲!?」


「TAKE OFF!」


「ほんまに!?」


「飛ぶ!」


mcRCは一歩前に出た。


「これは、浮ついて飛ぶ曲じゃないです」


「地に足つけたまま、飛ぶ曲です」


wataが続ける。


「今日まで働いたやつ」


「準備したやつ」


「まだ準備中のやつ」


「怖いけど行きたい場所があるやつ」


EGUIが言う。


「下向く暇ないぞ」


客席から声。


「ない!」


EGUIが少しだけ笑った。


「ある時もある」


wataがすぐ突っ込む。


「急に現実に戻すな!」


EGUIは真顔で続ける。


「でも今はない」


その一言で、歓声が上がる。


mcRCは、マイクを握り直した。


「TAKE OFF」


音が落ちる前。


一瞬だけ、会場が止まった。


そして、ビートが走った。



最初のキックは、ATTACKより明るかった。


でも、軽くはなかった。


低音はしっかり床を押している。

クラップは前へ跳ねる。

シンセは少しだけ上に抜ける。


会場の空気が、撃ち抜かれた後の緊張から、上昇へ変わった。


Hook。


「いくぞ 行っちゃうぞ テイクオフ」


前列が即座に返す。


「テイクオフ!」


「まだまだ上がるぞ テイクオフ」


中ほども返す。


「テイクオフ!」


「下向く暇ない we take off」


今度は奥まで声が届く。


「風を切って higher, we don’t stop」


SAY IT TO MEから来た女性客が、最初は少し戸惑った顔をしていた。


でも、すぐに笑った。


さっきのATTACKで胸の奥を撃たれたあと、今度は手を上げていいのだと分かったような顔だった。


隣の友人が、彼女の手首を軽く持ち上げる。


彼女は笑いながら、手を上げた。


mcRCは、それを見た。


嬉しかった。


怖がらせていない。


置いていっていない。


熱はちゃんと、連れていく形になっている。


Verseに入る。


mcRCの声が、少し地面に戻る。


「朝から積み上げたタスクの塔

汗と責任で磨いた今日の顔」


客席の中に、仕事帰りらしい人たちが何人かいた。


シャツの袖を少し捲った男性。

肩掛けバッグの女性。

名札の紐を外し忘れたような人。


その人たちが、少しだけ笑った。


自分のことだ、という笑いだった。


「ただ稼ぐだけじゃない 背負う意味

誰かの明日まで灯してる daily」


この曲は、ただ「遊ぼうぜ」ではない。


日々を積んでいる人の曲だ。


仕事。

責任。

生活。

家族。

誰かの明日。


それを滑走路にする。


「スーツの皺にもストーリーある

逃げずに立つたび景色が変わる」


客席の奥で、さっきまで腕組みだった男が、今度はしっかり手を上げていた。


表情は笑っていない。


でも、目が明るい。


「一歩ずつでも嘘なく gain

しんどい日々さえ燃料に change」


wataが横で、小さく頷いている。


mcRCは、歌いながら自分にも刺さっていた。


自分たちもそうだ。


配信をして。

コメントを拾って。

曲を作って。

外のイベントに出て。

怖くなって。

それでも立って。


その全部が滑走路だ。


派手な夢だけで飛ぶのではない。


地味な日々で飛ぶ。


Hookに戻る。


「いくぞ 行っちゃうぞ テイクオフ」


今度は会場全体が分かっている。


「テイクオフ!」


「そのまま朝までテイクオフ」


wataが合いの手を入れる。


「朝までは無理な人も、気持ちだけ!」


客席から笑い。


EGUIが低く言う。


「終電は見ろ」


さらに笑い。


mcRCも歌いながら少し笑ってしまった。


こういうところがリバクラだった。


上げる。

でも生活を忘れない。


飛ぶ。

でも終電を見る。


夢を見る。

でも飯を食う。


それがいい。


wataのVerse。


「キー回す city to seaside

beatにsyncして deepなmidnight」


一気に景色が変わる。


街から海辺へ。

車の窓。

夜風。

仲間の声。

隣の誰か。


wataの言葉は、音で走る。


「smoothにmove, goodなgroove

仕事が回れば守れるルール」


客席が首を振る。


韻が気持ちいい。


でも、ただの遊びではない。


「守れる people, 守れる future

となりの彼女も笑えば super」


その瞬間、女性客の一角から笑いと歓声が起きる。


「彼女!」


「そこ拾う!?」


「wataー!」


wataはすかさず反応する。


「彼女おる人も、おらん人も、未来形で!」


客席が笑う。


EGUIが低く言う。


「嘘はつくなよ」


wataが崩れそうになる。


「夢を見させろ!」


mcRCも笑う。


だが、wataはすぐにVerseへ戻る。


「遊びも本気 だからぶれない

稼ぎと優しさは敵じゃない」


このラインで、少し空気が変わった。


大人の客が反応する。


稼ぐこと。

優しくあること。

遊ぶこと。

責任を持つこと。


それらを敵にしない。


wataの軽さの中に、そういう現実が入る。


「“行けるとこまで”じゃなく“連れてく”

この夜ごと景色ごと全部連結」


ここで、客席の声が大きくなる。


連れていく。


今日のリバクラがやっていることそのものだった。


ATTACKで撃ち抜いたあと、TAKE OFFで連れていく。


wataが叫ぶ。


「ね、彼女 その目で見てな!」


客席から悲鳴みたいな声。


「きゃー!」


「言われたい!」


「ずるい!」


wataは一瞬だけ得意げな顔をした。


EGUIが横から言う。


「調子乗るな」


wataが返す。


「今は乗らせろ!」


客席が笑う。


でも、最後のラインはちゃんと落とす。


「まだ途中でも夢は realだ

追い風に変える every hard knock

笑って言うのさ baby, we take off」


Hook。


もう会場は完全に分かっていた。


「いくぞ 行っちゃうぞ テイクオフ!」


「テイクオフ!」


「まだまだ上がるぞ テイクオフ!」


「テイクオフ!」


前列だけではない。


中ほども、奥も、横も。


全員ではない。


でも、さっきまで遠かった場所が、明らかに近い。


ステージと客席の距離が縮んでいる。


EGUIのVerse。


音が少しだけ落ち着く。


勢いの中に、静かな芯が入る。


「俺はまだスタンバイ

でも止まってるわけじゃない」


この一行で、空気が変わった。


まだ飛べていない人の声。


準備中の人の声。


声を出して跳ねている人だけが、この曲の対象ではない。


「静かな部屋で磨いてる inside

呼ばれたらいつでも行ける状態」


客席の奥にいた若い男が、少しだけ目を伏せた。


「READYじゃないんだよな」


誰かが小さく言った。


「でも準備してる」


その声は、ステージまでは届かない。


でも、その人の中では確かに鳴っていた。


EGUIは続ける。


「無理に飛ぶより 狙うタイミング

焦りじゃなくて見てる landing」


焦るな。


でも止まるな。


EGUIの言葉は、そこを間違えない。


「いや、ほんとは少し怖いさ

飛んだ先で変わることもあるから」


コメント欄なら、ここで「わかる」が流れただろう。


ライブハウスでは、その代わりに、少し静かになる。


盛り上がっていた客席が、一瞬だけ聞く姿勢になる。


EGUIの声が届いている証拠だった。


「でもそれでいい 変化は gift

閉じたままじゃ届かない dream」


wataが小さく「gift」と口を合わせる。


mcRCはその横で、胸の奥が少し熱くなった。


変化はgift。


怖い。


でも、それは贈り物でもある。


リバクラも、変わっている。


最初の配信から。

ストリートから。

外部イベントから。

SAY IT TO MEから。

ATTACKから。


そして今、このTAKE OFFで。


「飛ばせてくれる? なんて半分 joke

だけど半分 本気の talk」


客席が笑う。


「飛ばす!」


「行け!」


「飛べ!」


EGUIが、少しだけ笑った。


珍しいくらい柔らかい顔だった。


「ひとりじゃ空は広すぎる

君がうなずけば羽は意味を持つ」


その一行で、会場の熱がまた変わる。


単独の成功ではない。


客席がうなずくから、羽に意味が出る。


聞く人がいるから、飛ぶ意味がある。


mcRCは、そこで思った。


俺らだけでは曲にならない。


リバクルーがいるから、届く。

知らない客がいるから、広がる。

他の出演者がいるから、場になる。

スタッフがいるから、鳴る。

主催者がいるから、今日がある。


自分たちだけで飛んでいる気になったら、たぶん落ちる。


そのことを、今日の会場は教えてくれていた。


Final Hook。


音が一段上がる。


照明が明るくなる。


三人が前へ出る。


「いくぞ 行っちゃうぞ テイクオフ!」


会場が返す。


「テイクオフ!」


「ここから始まるぞ テイクオフ!」


「テイクオフ!」


「昨日の迷いごと全部 drop

下向く暇ない we take off」


手が上がる。


前列から奥まで。


初見も、リバクルーも、女性客も、腕組みだった男も、他の出演者のファンも。


完璧に一つではない。


でも、確かに同じ方向を向いていた。


「いくぞ 行っちゃうぞ テイクオフ

夏ごとさらうぞ テイクオフ

地盤も仲間も勇気も連れて

君も一緒ならもっと high, take off」


最後の「take off」で、三人の声が重なった。


音が伸びる。


照明が上に抜ける。


客席の手が上がったまま、少しだけ止まる。


そして、音が切れた。


今度の無音は、ATTACKの後とは違った。


撃ち抜かれた後の重い無音ではない。


飛び上がった後、一瞬だけ体が空中に浮くような無音。


足が地面から離れたかどうか分からない。


でも、確かに軽くなったような無音。


次の瞬間。


会場が爆発した。


「うおおおおおお!」


「TAKE OFF!」


「やばい!」


「最高!」


「飛んだ!」


「これ新曲!?」


「音源くれ!」


「もう一回!」


「終電見るけどもう一回!」


wataが笑い崩れそうになる。


「終電見るけどもう一回、めっちゃ現実的!」


EGUIがマイクを上げる。


「終電は見ろ」


また笑いと歓声。


mcRCは、客席を見ていた。


もう、怖いくらいだった。


でも、さっきとは違う。


ATTACKの後は、熱がこちらに寄りすぎて怖かった。


TAKE OFFの後は、熱が会場全体に広がっている。


自分たちだけに集まるのではなく、みんなの体の中に散っている。


それが分かった。


だから、少しだけ安心した。


mcRCはマイクを上げた。


「ありがとう」


声が震えそうになる。


でも、今度は逃げなかった。


「今日、アンコールをやらせてくれてありがとう」


客席から拍手。


「主催の方、次の出演者の方、スタッフの方」


mcRCは袖へ向かって深く頭を下げた。


「本当にありがとうございます」


wataも頭を下げる。


EGUIも下げる。


客席からも拍手が起きた。


次の出演者に向けた拍手でもあった。


mcRCは、それを聞いて、また少し胸が熱くなった。


ちゃんと渡せる。


今日の客席は、リバクラだけを見て終わる客席ではない。


熱を持ったまま、次の音へ向けることができる。


それは、前回の小さな勝ちが育った形だった。


wataがマイクを上げる。


「ということで、ほんまに最後です」


客席から「えー!」の声。


wataがすぐ返す。


「いや、えー!ちゃうねん!俺らも終電見る側やねん!」


笑い。


EGUIが言う。


「飯も食う」


さらに笑い。


「飯!」


「飯食え!」


「EGUI飯bot!」


EGUIが少し嫌そうな顔をする。


「botちゃう」


wataが笑う。


「最後に飯で締めるな」


mcRCは、笑いながらも、ちゃんと客席を見た。


「ほんまにありがとう」


「この後もイベント続きます」


「さっきの熱、次に渡してください」


「俺らも袖で見ます」


EGUIが短く言う。


「最後まで参加」


wataが続ける。


「途中で帰る人も、気をつけて。終電見て。水飲んで。飯食って」


客席から笑い。


mcRCは締めた。


「Reverse Crownでした」


三人で深く頭を下げる。


拍手。


歓声。


「リバクラ!」


「ありがとう!」


「TAKE OFF最高!」


「ATTACKやばかった!」


「また来る!」


三人は、ステージを降りた。


袖に入った瞬間、音が少し遠くなる。


でも、客席の熱はまだ背中に当たっていた。


wataが壁にもたれかかった。


「……飛んだな」


EGUIが水を飲んで言う。


「飛んだ」


mcRCは、まだ何も言えなかった。


胸の中で、いろんなものが渦巻いている。


成功した。


それは間違いない。


でも、成功したからこそ、次の問題が来る。


さっきの歓声。

TAKE OFFの反応。

ATTACKの爆発。

アンコールの許可。

次の出演者が笑って手を上げてくれたこと。


嬉しい。


でも、重い。


ここから先、もう「たまたま盛り上がった」では済まない。


リバクラは、外で戦える。


それが今日、証明されてしまった。


wataが、mcRCの顔を覗き込んだ。


「また考えすぎてる」


mcRCは少し笑った。


「今日は考えるやろ」


EGUIが言う。


「後で考えろ」


wataも頷く。


「今は水飲め」


mcRCは、渡されたペットボトルを受け取った。


「……ありがとう」


水を飲む。


ぬるい。


でも、妙にうまかった。


その時、さっき親指を立ててくれた次の出演者のボーカルが近づいてきた。


ギターを持ったまま、少し笑っている。


「やばかったですね」


wataがすぐ頭を下げる。


「ありがとうございます。さっき、ほんま助かりました」


mcRCも言う。


「アンコール、許可してくれてありがとうございました」


ボーカルの男は首を振った。


「いや、あれは行く流れでした」


少し笑う。


「むしろ、あそこで止めたらこっちが悪者みたいになる」


wataが苦笑する。


「それはそれで困る」


男は続けた。


「でも、最後にちゃんと渡してくれたんで」


「こっちもやりやすいです」


mcRCは、深く頭を下げた。


「お願いします」


男は、ステージの方を見た。


「正直、だいぶ上げられたんで」


少しだけ、笑いながら言う。


「こっちも負けてられないです」


その声には、苦さよりも火があった。


mcRCは、その火を見て、少し救われた。


自分たちの熱が、誰かを潰したのではない。


次の人の火も強くした。


少なくとも、この人はそう受け取ってくれている。


EGUIが短く言った。


「お願いします」


ボーカルの男が笑う。


「はい。行ってきます」


その背中がステージへ向かう。


客席から拍手が起きる。


リバクラの残響を、次の出演者が受け取る。


mcRCは袖から、その一曲目の始まりを見た。


ギターの音が鳴る。


客席がちゃんと前を向いている。


さっきまで「TAKE OFF!」と叫んでいた人たちが、今度は次の音を聞こうとしている。


mcRCは、小さく息を吐いた。


「……よかった」


wataが隣で言う。


「な」


EGUIも短く。


「渡った」


それだけで、今日のアンコールは成功だった。


ただ盛り上がったから成功ではない。


熱が、次へ渡ったから成功だった。


それでも。


mcRCの胸の奥には、まだ別の震えが残っていた。


この夜は、たぶんここで終わらない。


イベントが終わった後。


誰かが声をかけてくる予感があった。


今日のステージを見た誰かが、リバクラに次の言葉を投げる。


そんな予感。


wataが、水を飲みながら言った。


「なあ」


「ん?」


「TAKE OFF、音源出したら伸びるんちゃう?」


EGUIが即答する。


「まず飯」


wataが笑う。


「お前ほんま飯やな」


EGUI。


「飛んだら腹減る」


mcRCは、そこでようやく笑った。


「それはそう」


wataが両手を広げる。


「じゃあ今日の結論、飛んだら腹減る」


EGUI。


「浅い」


wata。


「でも真実」


mcRCは笑いながら、ステージの方を見た。


音が鳴っている。


客席が揺れている。


リバクラの熱は、まだ会場の中に残っている。


でも、もう自分たちだけのものではない。


次の音に混ざっている。


次の拍手に混ざっている。


次の出演者の背中を押している。


それが、少しだけ誇らしかった。


そして、少しだけ怖かった。


今日、自分たちは飛んだ。


でも、飛んだ先には、次の場所がある。


もう、見えてしまった。


そこへ行くには、もっと曲がいる。

もっと場数がいる。

もっと覚悟がいる。

もっと、リバクルーと一緒に作る景色がいる。


mcRCは、客席の奥を見た。


さっきまで遠かった場所。


今は、少し近く見える。


でも、その先はまだ遠い。


それでいい。


飛んだからこそ、遠さが見えた。


mcRCは小さく呟いた。


「まだ、ここからやな」


wataが聞き逃さなかった。


「何?」


mcRCは少し笑った。


「いや」


「まだ、ここからやなって」


wataは、少しだけ真面目な顔になった。


「うん」


EGUIも頷く。


「ここから」


三人は、ステージ袖で並んで、次の出演者の音を聞いた。


客席の熱は、まだ高い。


でも、それはもうリバクラだけのものではない。


会場全体の熱だった。


その中に、さっき飛んだ三人の息も、まだ混ざっていた。

mcRC「この小説の歌は実際に聴けるから、聴きながら読んでみてくれよな」

聴く場合はこちら:

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ATTACK

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ORIGIN

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