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ラップ付き小説 ReversCrown 元気ないやつこっちおいで  作者: egubi
reshina編

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4-5-4 君の音に憧れて feat. ReShiNa



一曲目の余韻が、まだ部屋に残っていた。


君に会えてよかった feat. Reverse Crown。


曲が終わってから、もう数分は経っているはずだった。


でも、ミニライブハウスの空気は、まだ少し湿っていた。


Miwaは、ハンカチを握ったまま、目元を押さえている。


Ninaは、そんなMiwaの背中に手を添えたまま、まだ少し黙っていた。


Saraはカメラの録画時間を確認していたが、表情は完全に仕事だけではなかった。


Kateはノートを開いた。


けれど、まだペン先を紙につけていない。


Yuiは膝の上で手を重ねて、ステージを見ていた。


さっきの曲で、何かを受け取ってしまった顔をしていた。


ステージ側も同じだった。


ReShiNa三人は、まだ完全には戻っていない。


renaはアコギを抱えたまま、リバクラ三人を見ていた。


shihoは静かに譜面を整えているが、何度も同じ端を揃えていた。


natsuはフルートを持ち直して、短く息を吹きかけるでもなく、ただ銀色の管を見つめていた。


そして、Reverse Crown三人。


mcRCは、マイクの前で少しだけ目を伏せている。


wataは、深呼吸をした。


EGUIは、足元のケーブルを一度だけ見て、それから客席を見た。


次の曲がある。


一曲目が届いたからこそ、次が怖い。


wataが、小さく言った。


「次、俺ら側やな」


mcRCは頷いた。


「うん」


EGUIも短く言う。


「行こう」


その声で、ReShiNa三人の顔が上がった。


今度は、Reverse CrownがReShiNaへ向けて書いた曲。


でも、一週間前にReShiNaが言った。


あたしたちも、その曲に入りたい。


その言葉で、この曲も変わった。


君の音に憧れて feat. ReShiNa。


リバクラの曲であり、ReShiNaの曲でもある。


mcRCは、リバックライン五人へ向いた。


「二曲目です」


Miwaが、少しだけ身構えた。


Ninaがそれを見て、小さく笑う。


「Miwa、まだ始まってない」


「分かってる」


Miwaは、鼻を少しすすった。


「でも、タイトルだけで嫌な予感がする」


wataがマイク越しに言う。


「嫌な予感って」


Miwaは、真面目に返した。


「泣く予感です」


wataは一瞬止まって、それから少しだけ笑った。


「それは……たぶん当たります」


Miwaが絶望したような顔をした。


Yuiが小さく言う。


「私も当たりそうです」


Saraが録画画面を確認しながら、淡々と言った。


「記録は継続中です」


Miwaがそちらを見る。


「泣き顔の追撃録画……」


Kateが静かに言った。


「使うかは確認します」


「候補にはなるんですね」


「候補にはなります」


Miwaがまた顔を覆う。


そのやり取りで、場に少しだけ笑いが落ちた。


でも、その笑いの奥で、全員が分かっていた。


次の曲は、たぶん軽くない。


mcRCは、マイクの位置を少し直した。


「この曲は、俺たちがReShiNaに向けて書いた曲です」


少し間を置く。


「一週間前、二組だけで聴き合った時は、俺たちだけで歌うつもりでした」


renaが、静かに目を伏せた。


shihoも、ゆっくり頷く。


natsuはフルートを胸の前で抱えている。


mcRCは続けた。


「でも、聴いてもらったあとに、ReShiNaが『私たちも入りたい』って言ってくれました」


wataが、少しだけ照れたように笑った。


「あれ、かなり嬉しかったです」


EGUIが言う。


「この曲は、音に憧れた曲です。誰かを手に入れたいとか、守ってやりたいとか、そういう曲じゃないです」


客席のリバックライン五人が、静かに聞いている。


EGUIは続けた。


「その音が続いてほしい。なくならないでほしい。そういう曲です」


shihoの目が、少しだけ揺れた。


natsuは、フルートを持つ手に少しだけ力を入れた。


renaは、アコギのボディに指を添えた。


wataがマイクに少し近づく。


「あと、今回はReShiNaにも入ってもらってます。声も、楽器も。だから、俺らが憧れた音が、そのまま曲の中で返事をしてくれる形になってます」


Ninaが、小さく息を吐いた。


「それ、もう説明で強い」


Saraが頷く。


「販促文に近いです」


wataが少し焦る。


「え、今の使われる?」


Kateが淡々と言う。


「候補です」


wataが遠い目をした。


「候補、多いな」


natsuが、ぽつりと言う。


「候補の箱」


Yuiが小さく笑った。


「候補の箱、かわいい」


mcRCも少し笑った。


その笑いのあと、空気がまた静かに締まる。


mcRCは客席へ向いた。


「では、聞いてください」


一拍。


「君の音に憧れて feat. ReShiNa」


最初の音は、ビートではなかった。


natsuのフルートでもなかった。


renaのアコギが、一音だけ鳴った。


ぽん、と。


乾いた木の音。


そこに、shihoの低いピアノがそっと重なる。


そのあとで、natsuの短いフルートが空気を開いた。


リバクラ三人が息を吸う。


声が重なる。


≫ 君の音に憧れて

≫ 好きより先に聴いていた

≫ I hear your sound, I feel your light

≫ 触れるより前に respect your life


Miwaは、すでに危なかった。


好きより先に聴いていた。


その一行だけで、さっきとは違う角度から胸を掴まれた。


一曲目は、会えてよかった、だった。


出会ってしまったあとに残る痛みと宝物。


でも、二曲目は違う。


もっと前。


好きと名前をつける前。


近づく前。


触れる前。


相手をどうにかしたいと思うより先に、音を聴いていた。


その順番が、ひどく美しかった。


Kateは、口元に指を添えていた。


この曲は、かなり重要だと思った。


ReShiNaにとっても、Reverse Crownにとっても。


そして、おそらく今後の見せ方としても。


「音に先に惚れた」


そう言えば分かりやすい。


でも、それでは少し軽い。


恋より先に、尊敬がある。


欲より先に、憧れがある。


触れるより前に、相手の人生を尊重する。


その順番を、曲がかなり丁寧に置いている。


mcRCのVerseが始まった。


リハ室の隅。


開くフルートケース。


寝ぐせのままで鳴らす新しいフレーズ。


パーカーの袖。


譜面に触れる指。


一音目で空気が晴れていく。


≫ リハ室の隅 開く flute case

≫ 寝ぐせのままで鳴らす new phrase

≫ パーカーの袖 譜面に触れて

≫ でも一音目で空気が晴れてく


natsuは、視線を落とした。


自分のことだと分かっている。


でも、思っていたより近い。


寝ぐせ。


パーカーの袖。


譜面に触れる動き。


そういう、音以外の細かいところまで拾われている。


けれど、嫌ではなかった。


見られている。


でも、見世物にされているわけではない。


音に向かう身体ごと、見てくれている。


それが分かった。


≫ 俺にはない その透明度

≫ 雑な日々から抜ける one note

≫ 笛があればいいって笑う横顔

≫ その強さにちょっと黙る午後


natsuの指が、フルートのキーにそっと触れた。


笛があればいい。


たしかに、そういうことを言った気がする。


自分では、たいした言葉ではなかった。


でも、mcRCはそれを覚えていた。


その強さに黙る午後。


その表現で、natsuの胸の奥が少し熱くなった。


強いと思われていた。


自分では、逃げたり迷ったりしてばかりなのに。


でも、笛を持つことは、たぶん自分にとって確かに強さだった。


Miwaは、natsuを見ていた。


表情が大きく変わるわけではない。


でも、耳の先が少し赤い。


フルートを握る手が、少しだけ強くなっている。


その小さな反応が、胸に来た。


mcRCの声が、少し強くなる。


≫ でも自分の価値を安く見るな

≫ 軽い拍手に預けきるな

≫ 守るとかじゃない 奪う気もない

≫ 君の音だけは薄めたくない


Yuiが、小さく息を吸った。


守るとかじゃない。


奪う気もない。


君の音だけは薄めたくない。


それは、natsuだけでなく、ReShiNa全体に向けられた言葉のように聞こえた。


守りたい、と言えば優しい。


でも、それは時々、相手を弱いものにしてしまう。


奪いたい、ではない。


縛りたい、でもない。


ただ、薄めたくない。


その距離が、とてもリバクラらしかった。


Hookが戻る。


今度は、renaのアコギが少し前へ出た。


ReShiNaの音が、ただ後ろで飾るのではなく、リバクラの言葉に返事をしている。


≫ 君の音に憧れて

≫ 違う夢まで見えてきた

≫ Three hearts, one melody

≫ その音が続けばいい


その音が続けばいい。


Kateは、その一行を心の中で繰り返した。


これは、曲の芯だ。


人気が出ればいい、ではない。


売れればいい、でもない。


そばにいてほしい、ですらない。


その音が続けばいい。


相手の存在を、自分の都合より上に置いている。


それが、この曲をただのラブソングにしていない。


wataのVerseに入る。


空気が少し深く沈む。


Bass clarinet。


黒いcase。


低いbreath。


揺れる照明。


pain in the phrase。


隠す証明。


≫ Bass clarinet 沈む low tone

≫ 黒い case から立ち上がる zone

≫ breath in the basement 揺れる照明

≫ pain in the phrase 隠す証明


shihoは、膝の上の手を握った。


自分の低音が、こんなふうに見られていた。


沈む音。


でも、ただ暗いのではない。


黒いケースから立ち上がる場。


痛みを隠すフレーズ。


言葉にすると少し怖い。


でも、wataの声だと、それが音のかたちをして届く。


自分でもうまく説明できなかったものが、ラップの中で輪郭を持っていく。


≫ piano touch 指先で talk

≫ vocal の奥 ほどけない chord

≫ friendship なら近い距離

≫ love になると閉じる melody


Ninaは、思わず前のめりになった。


このVerseは強い。


音楽の言葉で関係性を語っている。


piano touch。


ほどけないchord。


friendshipなら近い距離。


loveになると閉じるmelody。


恋愛に寄せすぎないのに、感情の逃げ場も残さない。


wataらしい。


でも、そこにshihoの低音が入ることで、言葉が浮かずに床を持っている。


wataのラップの隙間に、shihoのバスクラリネットが短く入った。


低く、深い音。


それは返事だった。


「分かってる」とも、「そこにいる」とも言わない。


でも、確かにそこにいる音。


Miwaの涙がまた出そうになる。


「次、大丈夫かな」と言った自分は、やっぱり大丈夫ではなかった。


≫ 傷の name なら聞かないまま

≫ refrain だけが胸打つ drum


Saraは、そこで少しだけ目を細めた。


傷の名前を聞かないまま。


これは扱いに注意がいる。


でも、とても大事な距離だった。


傷の名前を聞きたがることは、時に暴力になる。


説明させることで、相手をもう一度その場所へ戻してしまうことがある。


でも、聞かないままでも、音に敬意を払うことはできる。


この曲は、そこをかなり慎重に歩いている。


Saraは、ようやくノートに小さく一行だけ書いた。


「踏み込まない敬意」


EGUIのVerseに入る前に、natsuのフルートが短く上へ抜けた。


空気が少し開く。


次に置かれるのは、renaの景色だった。


駅前ライト。


アコギケース。


小銭の音より強いフレーズ。


音楽学校の帰り道。


未完成のlyric。


≫ 駅前ライト アコギケース

≫ 小銭の音より強い your phrase

≫ 音楽学校の帰り道

≫ ノートに増える未完成の lyric


renaは、目を伏せた。


自分の姿が歌われている。


でも、かわいいとか、綺麗とか、そういう言葉ではない。


アコギケース。


小銭の音。


未完成のlyric。


危なっかしい夜。


それが、自分の音楽として見られている。


見た目ではなく、音に向かう途中の自分を見られている。


そのことが、泣きそうなくらい嬉しかった。


≫ こうと決めたら曲げない eyes

≫ 危なっかしくて笑えない night

≫ だけどマイク前 目を閉じたら

≫ 人混みの音まで静かになる


Miwaは、またハンカチを目元に当てた。


人混みの音まで静かになる。


その一行で、renaがステージに立つ姿が見えた。


普段は少し危うい。


でも、音が始まると空気が変わる。


それを見ている人の言葉だった。


EGUIの声は、まっすぐだった。


≫ 似てるからこそ心配で

≫ 似てるからこそ信じたくて

≫ 強がりだけで傷つくなよ

≫ 君の声ならちゃんと届く


renaの涙が落ちた。


今度は、静かに。


強がりだけで傷つくなよ。


君の声ならちゃんと届く。


それは、慰めではなかった。


信じている人の言葉だった。


似ているから、心配する。


似ているから、信じる。


その両方を、EGUIは隠さずに置いた。


≫ 下手な夢でも胸張って歌え

≫ 風に消えてもまた拾って鳴らせ

≫ 俺が欲しいのは答えじゃない

≫ その希望が続いてく未来


Yuiの目が潤んだ。


下手な夢でも胸張って歌え。


この言葉は、ReShiNaだけでなく、たぶんリバックラインにも刺さっていた。


支える側の夢は、表に出にくい。


でも、夢がないわけではない。


誰かが続いていく未来を見たい。


そのために、手を動かしている。


Kateは、深く息を吐いた。


これは、販促でどう扱うか難しい。


いい曲です、だけでは足りない。


泣けます、だけでも足りない。


この曲は、相手の未来を自分の所有物にしない祈りだ。


そんな言葉が浮かんだ。


3MC Bridgeに入る。


mcRCが透明な音を歌う。


wataが知らない夜を開く低音を歌う。


EGUIが路上の灯りに揺れる影を置く。


その隙間で、natsuのフルートが透明な線を引く。


shihoのバスクラリネットが夜を支える。


renaのアコギが路上の灯りを揺らす。


三組、いや、二組の音が、互いの言葉を支え合っていた。


≫ 好きと呼ぶには軽すぎて

≫ 憧れだけじゃ足りなくて

≫ 奪いたいんじゃない

≫ 縛りたいんじゃない

≫ その音が続けばいい


Miwaは、もう泣いていた。


でも、今度は顔を覆わなかった。


ステージを見ていた。


泣きながら、ちゃんと見ていた。


奪いたいんじゃない。


縛りたいんじゃない。


その音が続けばいい。


それが、あまりにも美しかった。


Final Hook。


六人の音が重なる。


Reverse Crownの三つの声。


ReShiNaのアコギ、ピアノ、低音、風。


そして、ところどころに重なるrenaとshihoの声。


natsuは歌わない。


でも、フルートの返事が、どの声よりも雄弁に聴こえる瞬間があった。


≫ 君の音に憧れて

≫ 好きより先に聴いていた

≫ I hear your sound, I feel your light

≫ 触れるより前に respect your life

≫ 君の音に憧れて

≫ 違う夢まで見えてきた

≫ Three hearts, one melody

≫ その音が続けばいい


最後の「その音が続けばいい」のあと、natsuのフルートがすっと伸びた。


長くはない。


でも、遠くまで届く音。


それを、shihoのバスクラリネットが低く受け止める。


renaのアコギが、最後に一度だけ鳴る。


音が消えた。


誰も動かなかった。


さっきとは違う沈黙だった。


一曲目は、痛みを抱えて「会えてよかった」と言う沈黙だった。


二曲目は、誰かの音が続いてほしいと願ったあとの沈黙だった。


録画ランプだけが、赤く光っている。


Saraは、今回も止めなかった。


止められなかった。


最初に声を出したのは、Yuiだった。


「……綺麗」


本当に小さな声だった。


でも、全員に届いた。


Yuiは、少し慌てたように口元を押さえた。


「すみません。今、勝手に」


Kateが静かに言う。


「いいです。最初の言葉です」


Yuiは、ステージを見た。


「綺麗でした。でも、飾ってる綺麗じゃなくて」


少し考える。


「誰かの音を、汚さないように手を伸ばしてる感じがしました」


natsuが、フルートを下ろした。


その言葉を受け取ったように、少しだけ目を伏せる。


Yuiは続けた。


「好きって言うより前に、ちゃんと聴いてる。近づく前に、ちゃんと敬意を置いてる。それがすごく綺麗でした」


Miwaが、もう一度泣いた。


Ninaがすぐに言う。


「Miwa、もうハンカチ足りる?」


Miwaは、泣きながら頷いた。


「足りないかも」


wataが、ステージ上で小さく笑う。


でも、目元は少し赤かった。


Miwaは、涙を拭きながら言った。


「一曲目は、会えてよかったが苦しかったんですけど」


少し息を吸う。


「二曲目は、憧れが優しすぎて苦しいです」


mcRCが、静かにMiwaを見る。


Miwaは続ける。


「相手の音が続けばいい、って、簡単に言えないじゃないですか。だって本当は、近くにいてほしいとか、自分のものになってほしいとか、もっと聴きたいとか、いろいろ出ると思うんです」


声が震える。


「でも、この曲は、それを全部持ったまま、最後に“その音が続けばいい”って言う。そこが……すごく、よかったです」


renaの目元がまた赤くなった。


shihoは、静かに頷いた。


natsuは、フルートを胸の前で抱え直した。


Kateが、ここでようやくノートにペンを置いた。


「今のMiwaのコメントは、かなり使えます」


Miwaが、泣きながら笑った。


「またですか」


「はい」


Ninaが、前のめりになった。


「私も言っていい?」


mcRCが頷く。


「もちろんです」


Ninaは、ステージ全体を見た。


「これ、ビジュアルとしてもすごくいいです。3MCが前にいて、ReShiNaが後ろで支えるんじゃなくて、音の内側にいる感じ。前後じゃなくて、レイヤーになってる」


Saraが頷く。


「配置の説明として良いです」


Ninaは続ける。


「切り抜きにするなら、natsuさんのフルートからHookに戻るところと、最後の“その音が続けばいい”ですね。そこ、見せたい」


natsuは、少しだけ目を丸くする。


「私?」


Ninaは笑った。


「はい。めちゃくちゃ大事でした」


natsuは、フルートを見る。


「歌ってないのに」


EGUIが言う。


「歌ってないから、入れる場所が見える時もある」


natsuは、その言葉を少し考えた。


「歌わない声」


wataが小さく言う。


「また強いこと言う」


Kateが即座にメモを取った。


natsuがそちらを見る。


「使う?」


Kateは真面目に頷いた。


「候補です」


natsuは、少しだけ困った顔をした。


「候補の箱、また増えた」


その言葉で、場に笑いが起きた。


笑いながらも、Ninaは目元を拭いていた。


Saraは、録画画面から目を離さずに言った。


「私からは、実務寄りのコメントになりますが」


wataが少し身構える。


「はい」


Saraは冷静に続ける。


「この曲は、ReShiNaの扱いがとても慎重です。natsuさんを歌わせすぎず、楽器で存在感を出している。shihoさんの低音も、ただの雰囲気ではなく構造として効いている。renaさんのアコギは、リバクラの言葉を柔らかくする役割になっている」


shihoが、少しだけ驚いた顔をした。


Saraはさらに続ける。


「なので、告知文で“女性ボーカル参加”とだけ書くとズレます。ReShiNaは声だけではなく、音色と空気で参加している。そこを出した方がいいです」


mcRCが深く頷いた。


「それ、めちゃくちゃ大事ですね」


EGUIも言う。


「ReShiNaをゲストボーカル扱いだけにしたら違うな」


renaは、小さく頷いた。


「嬉しいです。そこ、見てくれて」


Saraは少しだけ表情をやわらかくした。


「見えました」


Kateが続ける。


「私からは、全体の打ち出し方です」


全員の視線がKateへ向く。


「一曲目が“名前をつけられない出会いの曲”だとしたら、二曲目は“相手の音が続くことを願う曲”です」


Ninaがすぐに反応する。


「いい」


Kateはノートを見ずに言った。


「恋愛に見える要素はあります。でも、最終的に相手を所有しない。むしろ、相手が相手のまま音を続けることを願っている。そこが、この二曲の品の良さだと思います」


品の良さ。


その言葉に、ReShiNa三人は少しだけ黙った。


リバクラ三人も黙った。


Kateは続ける。


「だから、煽りすぎない方がいいです。泣けるとか、尊いとか、そういう言葉も使えるとは思います。でも中心は、相互尊重です」


EGUIが、低く言った。


「相互尊重」


「はい」


Kateは頷いた。


「会えてよかった。音に憧れている。どちらも、相手を自分のものにする言葉ではない。相手の存在を認めて、自分も変わったと認める言葉です」


mcRCは、少しだけ目を伏せた。


それは、この二曲で一番大事にしたかったことだった。


助けた、助けられた。


救った、救われた。


それだけではない。


見た。


見られた。


聴いた。


聴かれた。


憧れた。


憧れられた。


そして、お互いの音に入れてほしいと思った。


そこに、上下はない。


あるのは、横に並ぶ関係だった。


Miwaが、涙を拭きながら小さく言った。


「友情ですね」


その一言で、部屋が静かになった。


Miwaは少し慌てる。


「すみません、なんか、普通の言葉すぎるかもしれないですけど」


Kateは首を横に振った。


「普通の言葉で合っています」


Yuiも頷いた。


「友情でした」


Ninaも言う。


「でも、子どもっぽい友情じゃないですよね」


Saraが続ける。


「互いの境界線を守った友情です」


EGUIが、少しだけ笑った。


「それ、かなりいいな」


wataが頷く。


「境界線を守った友情」


mcRCは、ReShiNa三人を見た。


renaは、涙を拭きながら笑っていた。


shihoは、静かに頷いている。


natsuは、フルートを胸の前で抱えながら言った。


「線があるから、風が通る」


全員が一瞬止まった。


wataが、ゆっくりnatsuを見る。


「……それ、今日いちかもしれん」


natsuは少し困る。


「いち?」


Kateは、もうペンを走らせていた。


「候補です」


natsuは、諦めたように頷いた。


「箱へ」


その言い方で、また笑いが起きた。


涙のあとに笑い。


仕事のあとに感情。


感情のあとに、また仕事。


でも、それは冷めることではなかった。


むしろ、感情をちゃんと外へ届けるために、仕事がある。


リバックラインは、そのことを知っている人たちだった。


mcRCは、マイクから少し離れた。


「ありがとう。二曲とも、ちゃんと聴いてもらえてよかった」


Kateは、静かに頷いた。


「かなり良いです」


Ninaが言う。


「これは出したい」


Miwaが、まだ目元を押さえながら言った。


「出してほしいです」


Yuiも頷く。


「聴いてほしいです」


Saraは、録画を確認しながら言った。


「素材確認後、許可取りと使用範囲の整理をします。感想コメントも、本人確認を取ってから使います」


wataが、少し笑った。


「仕事モード戻ってきた」


Saraは淡々と返す。


「戻します。必要なので」


EGUIが頷いた。


「それがありがたい」


renaは、リバックライン五人を見た。


「今日、来てもらえてよかったです」


声はまだ少し湿っていた。


でも、逃げていなかった。


「知らない人が増えるの、怖かったんですけど」


少しだけ笑う。


「でも、見てもらえてよかったです」


Miwaがまた泣きそうになる。


Ninaがすぐに言う。


「Miwa、三回目」


Miwaは、もう諦めたように笑った。


「だって」


Yuiが、やさしく言った。


「分かります」


Kateは、ReShiNa三人へ向き直った。


「こちらこそ。見せてくださって、ありがとうございました」


natsuが短く言う。


「見られた」


Kateは頷いた。


「はい。見ました」


natsuは、少しだけ考えてから言った。


「大丈夫だった」


その一言に、ReShiNa三人の中で何かが静かにほどけた。


見られた。


でも、大丈夫だった。


その実感は、どんな大きな拍手よりも、今のReShiNaには大きかった。


mcRCは、その言葉を聞いて、少しだけ目を細めた。


wataも黙っていた。


EGUIは、静かに頷いた。


二曲は、もう二組だけのものではない。


でも、雑に外へ投げられたわけではない。


信頼できる人たちに、まず渡した。


泣いて。


笑って。


言葉にして。


仕事に戻して。


大事に外へ運ぶ準備が、少しずつ始まっていた。


小さなミニライブハウスの中で、録画ランプが静かに消える。


Saraが言った。


「録画、停止しました」


その音が、今日の区切りになった。


でも、誰もすぐには立ち上がらなかった。


二曲の余韻が、まだ部屋に残っている。


君に会えてよかった。


君の音に憧れて。


その二つの曲は、友情という言葉に少しずつ形を与えながら、次の場所へ向かい始めていた。

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