4-5-3 君に会えてよかった feat. Reverse Crown
一週間後。
小さなミニライブハウスの扉には、何も書かれていなかった。
表向きには、ただの貸切。
告知もない。
配信予定もない。
客を呼ぶための夜ではなく、曲を確かめるための夜だった。
それでも、前回とは空気が違っていた。
あの時は、二組だけだった。
ReShiNaとReverse Crown。
互いに用意していた曲を聴かせ合い、互いに「入りたい」と言った。
君に会えてよかった feat. Reverse Crown。
君の音に憧れて feat. ReShiNa。
その二曲は、もう二組だけの秘密では終われなくなっていた。
だから今日は、少しだけ人を呼ぶ。
観客ではない。
ファンでもない。
でも、ただの第三者でもない。
リバックライン。
リバクラを裏側から支えてきた人たち。
外部連絡、物販、告知、権利確認、庶務。
音楽の表に立たないけれど、リバクラが前を向くために必要だった人たち。
今日は、その五人が来る。
そして、二曲を聴く。
コメントをする。
録画もする。
今後、販促や告知に使う可能性もある。
でも、最初から仕事の言葉にはしない。
まずは、感じたままを言う。
そのための夜だった。
ステージ上には、マイクが三本。
中央にReverse Crown用の立ち位置。
少し後ろに、renaのアコギ用の椅子。
左奥にshihoのピアノ。
そのそばに、バスクラリネットのケース。
右側には、natsuのフルートスタンドとローホイッスル。
照明は控えめだった。
けれど、ただのリハーサルではないことは分かる。
ステージの床は、いつもよりきれいに掃かれていた。
ケーブルは壁際に寄せられ、足元に絡まないようにテープで留められている。
客席には、椅子が五つ。
少し間隔を空けて並べられていた。
ReShiNa三人は、ステージ上で準備をしていた。
renaはアコギの弦を一本ずつ鳴らす。
音を確かめるたびに、少しだけ肩が上下する。
緊張している。
でも、弦に触れる手は逃げていない。
shihoは譜面台の位置を直していた。
譜面を真っすぐに置き直し、少し離れて見て、また角度を直す。
その動きは静かだったけれど、いつもより少しだけそわそわしていた。
natsuは、フルートを手に持ったまま、客席の椅子を見ていた。
「今日は、人がいる」
ぽつりと言う。
renaが振り返った。
「うん。リバックラインの皆さんだけだけど」
「でも、人」
shihoが静かに聞いた。
「怖い?」
natsuは、少し考えた。
「怖い」
短く答えてから、フルートを胸の前で抱え直す。
「でも、見たい」
renaは、その言葉に少しだけ笑った。
「うん。私も」
怖い。
でも、見たい。
その二つが同時にあることを、もう無理に片方へ寄せなくてもいい。
そんなふうに思えるようになったのが、自分でも少し不思議だった。
奥の扉が開いた。
入ってきたのは、Reverse Crownの三人だった。
mcRC、wata、EGUI。
三人とも今日はサングラスをしていない。
ライブでも配信でもない。
けれど、服装は少し整えている。
人を迎える側であり、ReShiNaの隣に立つ側でもあるからだった。
wataは、入ってすぐステージを見上げた。
「うわ、ちゃんと二曲ぶんの配置や」
mcRCが頷く。
「そりゃそうやろ。今日は二曲やるんやから」
EGUIは、ReShiNa三人に軽く頭を下げた。
「一週間、早かったな」
shihoが頷く。
「早かったです」
renaは、アコギを抱えたまま笑った。
「でも、濃かったです」
natsuが短く言う。
「濃い風」
wataが反射的に口を開きかけた。
でも、何も言わずに一度飲み込んだ。
mcRCがそれを見逃さなかった。
「今、何か言おうとしたやろ」
wataは目を逸らした。
「いや、濃い風って何やろとは思ったけど」
natsuが真面目に答える。
「水分多め」
wataが負けた顔をする。
「返しが強い」
shihoが小さく笑う。
renaも笑った。
空気が少しだけほどける。
その笑いが落ち着いたところで、mcRCが客席の椅子を確認した。
「リバックライン、そろそろ来ると思います」
renaの指が、アコギの弦の上で止まった。
「リバックラインの皆さん」
「はい」
mcRCは頷いた。
「うちの裏方というか、支えてくれてる人たちです。音楽に口を出しすぎない。でも、ちゃんと聴く人たちです」
wataが付け足す。
「あと、めちゃくちゃ段取りします」
EGUIが続ける。
「細かいところまで見てくれる」
shihoは、少しだけ背筋を伸ばした。
「お会いするの、初めてですね」
「はい」
mcRCが言う。
「Kateが窓口で、最初に話すと思います」
renaは、その名前を聞いて、小さく頷いた。
これまで文章のやり取りの中に、その名前は何度か出てきた。
丁寧で、短くて、必要なことを外さない文面。
ReShiNaに無理をさせないように、でも確認すべきことはきちんと確認する人。
その人に、今日初めて会う。
怖くないわけではない。
でも、少し会ってみたかった。
数分後。
入口の方で、控えめなノックがした。
mcRCが扉へ向かう。
その足取りが、ReShiNaと話す時よりも少し軽かった。
扉を開ける前に、mcRCはいつもの調子で声をかけた。
「Kate、そこ段差あるから気をつけて。Miwa、水こっち置いといてくれる? Nina、入ってすぐ右、ケーブル踏まんように」
扉の向こうから、すぐに返事があった。
「分かってます」
「水、こっちでいいですか?」
「はいはい、踏みません」
そのやり取りを見て、renaが少しだけ目を瞬いた。
mcRCの口調が、砕けている。
乱暴ではない。
雑でもない。
でも、ReShiNaに話す時のような丁寧な距離ではなかった。
近い。
自然に近い。
mcRCは、扉を開けた。
入ってきたのは、五人の女性だった。
先頭に立っていたのが、Kate。
背筋がすっと伸びていて、表情はやわらかい。
けれど、目はかなりよく見ている。
入室した瞬間に、ステージの配置、ケーブルの位置、ReShiNaの立ち位置、リバクラ三人の表情まで確認したように見えた。
その後ろに、Miwa、Nina、Sara、Yui。
それぞれ雰囲気は違う。
でも、全員に共通しているものがあった。
場を荒らさない落ち着き。
そして、ただ見に来た人ではなく、支える側の身体の使い方。
mcRCは、Kateの持っていた資料袋を見て言った。
「また増えた?」
Kateは涼しい顔で答えた。
「必要分です」
「それ、いつも必要分って言って多いやつやん」
「足りないよりはいいです」
wataが横から笑う。
「Kateさんの必要分、だいたい業務用サイズ」
Miwaが、ペットボトルの袋を置きながら言った。
「mcRCさんも、結局あとで助かってるじゃないですか」
mcRCは少しだけ肩をすくめた。
「それはそう」
EGUIが短く言う。
「負けたな」
「何に?」
「正論に」
「今日、味方おらんの?」
その軽いやり取りに、リバックラインの五人が少し笑った。
ReShiNa三人は、その様子を見ていた。
ただ仕事でつながっているだけではない。
距離がある。
けれど、壁ではない。
長い時間の中で自然にできた距離。
そういう空気だった。
Kateが、改めてReShiNa三人に向き直った。
「初めまして。Kateです。今日はお招きいただきありがとうございます」
renaは、少し緊張した顔で頭を下げた。
「初めまして。ReShiNaのrenaです」
shihoも続く。
「shihoです。よろしくお願いします」
natsuは、フルートを胸の前で抱えたまま、小さく頭を下げた。
「natsuです」
Kateは、三人を見て、すぐには次の言葉を出さなかった。
ほんの一拍置いた。
値踏みではない。
驚きを、失礼にならないように整えるための一拍だった。
Kateは、声を少し落として言った。
「まず、確認してもよろしいですか」
renaが、少しだけ身構える。
「はい」
Kateは、慎重に言葉を選んだ。
「女性から容姿を褒められるのは、問題ありませんか?」
その質問に、ReShiNa三人は一瞬止まった。
リバクラ三人も止まった。
wataは、目だけでmcRCを見る。
mcRCも、ほんの少し驚いた顔をしていた。
でも、すぐに納得した。
Kateらしい。
踏み込む前に、ちゃんと扉を叩く。
renaは、少しだけ目を伏せた。
それから、ゆっくり答えた。
「男性よりは、平気です」
Kateは頷いた。
「ありがとうございます。では、失礼にならない範囲で言います」
一拍。
「むちゃくちゃ綺麗ですね」
空気が止まった。
renaの顔が、ぽん、と赤くなった。
shihoも、少しだけ目を見開く。
natsuは、真顔のまま固まった。
リバクラ三人も、同時に微妙な顔をした。
wataが小さく言う。
「Kateさん、直球」
EGUIが低く返す。
「確認した上での直球や」
mcRCは、顔を少し横に向けて笑いをこらえている。
Kateは、真面目な顔のまま続けた。
「画面で拝見するより、ずっと空気があります。綺麗、という言葉だけだと少し足りないですが」
その瞬間、Miwaが後ろで小さく頷いた。
「分かります。なんか、音が出る前から音がある感じです」
Ninaも目を輝かせた。
「衣装じゃなくて、佇まいが綺麗なんですよね」
Saraは、少し冷静に言う。
「これは確かに、写真の扱いには気をつけないといけませんね」
Yuiは、素直にぽつりと言った。
「妖精みたい……」
wataが、すぐに反応しかけて口を押さえた。
mcRCが小声で言う。
「お前が言ったら怒られるやつ」
wataも小声で返す。
「Yuiさんが言ったら許されるのずるない?」
EGUIが言う。
「日頃の行い」
「俺の行いそんな悪い?」
「雑」
「短い言葉で刺すな」
その横で、renaはまだ顔を赤くしていた。
けれど、以前のように固まって逃げる感じではなかった。
恥ずかしい。
でも、受け取ろうとしている。
renaは、少しだけ笑った。
「ありがとうございます」
声が小さい。
でも、ちゃんと届いた。
そのあと、少しだけ首を傾げる。
「でも……それをあなた方が言いますか?」
Kateが瞬きをする。
「え?」
renaは、少しずつ表情を取り戻しながら言った。
「全員、とんでもない美人なんですけど……」
今度は、リバックライン側が止まった。
Miwaが目を丸くする。
Ninaが口元を押さえる。
Saraが、珍しく少しだけ視線を逸らした。
Yuiは、素直に赤くなった。
Kateも、ほんの少しだけ動揺した。
「……ありがとうございます」
shihoが、少しだけ笑った。
「本当に。入ってこられた時、こちらが緊張しました」
natsuも短く言う。
「光、多い」
Ninaが思わず笑った。
「光、多い」
Yuiが、小さく言う。
「嬉しい……」
Miwaが、ReShiNa三人を見て言った。
「いやでも、これは褒め合いが終わらないやつですね」
wataがすかさず言う。
「女子会、始まりました?」
mcRCが小声で止める。
「お前、余計なこと言うな」
EGUIも言う。
「今日は引っ込んどけ」
wataは両手を上げた。
「はい」
でも、その一言で、場が少し笑った。
硬さがほどける。
初対面の空気が、ほんの少しだけ人の温度を持った。
Kateは、改めてReShiNa三人を見た。
「先ほどの確認ですが、嫌でしたらすぐ言ってください。私たちは、褒めたいから褒めますが、受け取る側がしんどいなら控えます」
renaは、その言葉を受け取って、ゆっくり頷いた。
「ありがとうございます」
少しだけ、胸元に手を置く。
「まだ、慣れてはいないです。でも……今日は、大丈夫です」
shihoも頷いた。
「女性からなら、というより、確認してから言ってくださったのが大きいです」
natsuが言う。
「扉、叩いた」
Kateの表情が少しやわらかくなる。
「はい。勝手に開けないようにします」
natsuは、短く頷いた。
「それなら、大丈夫」
mcRCは、そのやり取りを見ながら、少しだけ息を吐いた。
リバックラインを呼んでよかったと思った。
場が壊れない。
相手の痛みに触れる前に、ちゃんと確認する。
それは、リバクラが大事にしてきたことと同じだった。
その時、renaがふと、mcRCとリバックラインの距離を思い出したように言った。
「あの」
mcRCが見る。
「はい」
renaは、少し言いにくそうにしながらも、リバックラインの五人を見た。
「皆さんは、長いんですか?」
Kateが少し首を傾げる。
「長い?」
shihoが、言葉を補うように言った。
「関係というか、付き合いというか」
natsuも、mcRCを見る。
「砕けてた」
mcRCが一瞬止まる。
wataが、すぐににやっとした。
「見られてるで、mcRC」
mcRCは咳払いをした。
「いや、まあ」
renaは、少しだけ笑って言った。
「結構、砕けた口調だったので」
Kateは、mcRCを見てから、少しだけ笑った。
「そうですね。昔からの関係はありますね」
Miwaも頷く。
「仕事の前から知っている部分もありますし、今もかなり近い距離で支えています」
Ninaがにこっと笑う。
「でも、恋愛関係は今のところありません」
空気が一瞬止まった。
wataが吹き出した。
「今のところ!?」
Yuiが、思わず口元を押さえる。
Saraが冷静な顔で言う。
「今後の可能性を完全否定すると、表現として不正確かもしれません」
EGUIが、低く言った。
「仕事みたいに言うな」
Miwaが、笑いながら続ける。
「恋ではあります」
mcRCが固まる。
「なに言ってるん!?」
Ninaが笑いをこらえきれずに肩を揺らした。
「いや、恋愛じゃなくても、推しとか、尊敬とか、信頼とか、そういう意味の恋です」
wataがすかさず言う。
「ほら、モテてるやん」
mcRCが振り向く。
「お前、黙っとけ」
EGUIも、少しだけ口元を緩める。
「否定は遅いな」
「またそれ言う」
ReShiNa三人も、とうとう笑った。
renaは、口元を押さえながら笑っていた。
shihoも、静かに肩を震わせている。
natsuは、mcRCをじっと見た。
「恋の人」
mcRCが、頭を抱えた。
「やめて、その新しい呼び方……」
wataは、腹を抱えて笑いそうになっている。
Kateが、少しだけ真面目に戻して言った。
「ただ、距離が近いのは事実です。だからこそ、言いにくいことも言いますし、確認もします。遠慮しすぎると支えられないので」
renaは、その言葉を聞いて、少しだけ表情を変えた。
近いから、言う。
近いから、確認する。
近いから、支える。
それは、ReShiNaにとってまだ少し新しい距離だった。
怖い。
でも、少し羨ましい。
そんな気持ちが、胸の奥で動いた。
shihoが、静かに言った。
「私たちにも、砕けて話してくれません?」
mcRCが、少し驚いた顔をする。
「え」
renaも頷いた。
「いつもすごく丁寧なので」
natsuが言う。
「硬いです」
wataが、すぐに笑った。
「natsuさん、直球」
mcRCは、少し困ったように笑った。
「そりゃあ……かまいませんが」
natsuがすぐに言う。
「硬いですよ」
その場に笑いが起きた。
mcRCは、軽く手を上げた。
「分かった。じゃあさぁ、君たちも砕けてくれよ」
その言い方は、さっきまでより少し柔らかく、少し近かった。
renaの目が少し丸くなる。
shihoも、少しだけ笑う。
natsuは、頷いた。
「うん」
Kateが、タイミングよく言った。
「そうです。私たちも女性同士、仲良くしましょう」
Miwaが頷く。
「ただし、無理に距離を詰めすぎない仲良しで」
Ninaが笑う。
「いいですね。安全な女子会」
Saraが冷静に補足する。
「境界線を尊重する女子会です」
Yuiが、少し嬉しそうに言う。
「でも、お菓子はあります」
wataが反応した。
「お菓子あるんですか?」
Miwaが袋を持ち上げる。
「あります」
EGUIが言う。
「今日いちばん反応速かったな」
wataは真顔で頷いた。
「お菓子は大事や」
natsuも、真面目に頷いた。
「大事」
wataがnatsuを見る。
「ですよね」
natsuは頷く。
「はい」
shihoが小さく笑う。
renaも笑った。
その笑いで、場はかなりほどけた。
初対面。
褒め合い。
距離の確認。
mcRCの妙なモテ疑惑。
安全な女子会。
お菓子。
大事な曲を聴く前にしては、ずいぶん人間くさい導入だった。
でも、それがよかった。
感動だけで詰めると、息ができない。
笑いがあるから、深いところまで降りられる。
Saraが、カメラの横に立った。
「では、録画確認に入ります」
その声で、少しだけ空気が仕事に戻った。
ただし、さっきより硬くはない。
Saraは、カメラの位置を微調整した。
「録画、回します。使用目的は、確認用と今後の販促素材候補。公開前には必ず本人確認。ここは事前同意済み、で間違いないですね」
ReShiNa三人は頷いた。
renaが言う。
「はい。大丈夫です」
shihoも頷く。
「確認してからなら」
natsuは短く言った。
「大丈夫」
mcRCも頷いた。
「リバクラ側も大丈夫です」
wataが続ける。
「ただ、俺が変な顔してたら使わんといてください」
Ninaがすぐに言った。
「変な顔も販促になる場合があります」
wataが止まった。
「え、こわ」
Miwaが少し笑った。
「でも、wataさんは変な顔じゃなくて、いい顔してる時に変なこと言いますよね」
wataは胸を押さえた。
「Miwaさん、今日もう刺してくるやん」
EGUIが静かに言う。
「正確や」
「味方おらん」
その小さなやり取りで、場がまた少しゆるんだ。
けれど、空気の底には緊張が戻っていた。
今日は遊びではない。
でも、仕事だけでもない。
録画はする。
コメントは使う。
今後の販促にもつながる。
だから、リバックラインはコメント係として来ている。
でも、Kateが最初に言った。
「今日は、最初から整えた言葉を出そうとしなくていいと思っています」
全員の視線がKateへ向いた。
Kateは、膝の上のノートを閉じたまま続ける。
「もちろん、私たちは仕事として来ています。録画もしますし、販促に使える言葉も後で整理します。でも、最初から宣伝文句を作ろうとすると、たぶん曲の芯を取り逃がします」
Ninaが静かに頷いた。
「うん。まずは、感じたままの方がいい」
Saraも言う。
「後で使うコメントは整えられます。でも、最初に感じた言葉は作れません」
Miwaは、もう少しだけ不安そうにステージを見ていた。
「私、泣いたらすみません」
Yuiが、隣で小さく言った。
「泣いていいと思います」
Miwaは、少し笑った。
「ありがとう」
Kateが、ステージへ視線を戻す。
「なので、今日はこうしましょう。曲が終わった直後は、仕事モードを一度捨てます。感じたまま言う。そのあと、必要なら言葉を整える」
mcRCは、その言葉に少し深く頷いた。
「それ、ありがたい」
renaも、アコギを抱えたまま小さく頷いた。
「私たちも、整えすぎた感想より……たぶん、その方が嬉しい」
shihoが静かに続ける。
「うまい言葉じゃなくても、受け取れます」
natsuは、少し考えてから言った。
「生の音には、生の言葉」
Ninaが、ふっと笑った。
「それ、もう使いたい」
Saraが即座にメモを取る。
natsuは少し目を丸くした。
「使うの?」
Kateが真面目に答える。
「許可があれば」
natsuは、少しだけ考えた。
「いいです」
wataが小声で言う。
「natsu語録、公式素材化」
EGUIが低く返す。
「価値がある」
wataは頷いた。
「それはある」
ReShiNa三人も、少し笑った。
そうやって、少しずつ場があたたまっていく。
怖さは消えない。
でも、怖さだけではなくなる。
録画ランプが赤く点いた。
Saraが静かに言う。
「録画、開始しました」
その瞬間、空気が少しだけ締まった。
mcRCが、ステージ中央のマイクの前に立つ。
wataがその右に立つ。
EGUIが左に立つ。
ReShiNa三人は、少し斜め後ろにいる。
主役がどちらか、という並びではない。
曲の構造上、前に立つのはReverse Crown。
でも、この曲を最初に作ったのはReShiNa。
だから、三人は後ろではなく、音の内側にいる。
renaがアコギを構える。
shihoがバスクラリネットのマウスピースを確認する。
natsuはフルートを手に取った。
客席のリバックライン五人は、自然と姿勢を正した。
Kateはペンを持たない。
Miwaは両手を膝の上で重ねている。
Ninaは、いつもの明るさを少し抑えている。
Saraは、録画画面を確認したあと、顔を上げた。
Yuiは、目を大きく開いてステージを見ていた。
mcRCが、ゆっくり言った。
「一曲目です」
少しだけ、息を置く。
「君に会えてよかった feat. Reverse Crown」
wataが、マイクの位置を少し直してから、客席を見る。
「先に少しだけ言うと、この曲は、もともとReShiNaが書いてくれた曲です」
renaが、少しだけ目を伏せた。
shihoも静かに頷く。
natsuは、フルートを持ったまま、じっと床を見ている。
wataは続けた。
「そこに俺らReverse Crownが入っています。だから、俺らが歌ってるところでも、視点が少し女の子側っぽく聞こえるところがあるかもしれません」
mcRCが頷く。
「でも、それも含めて、この曲だと思っています」
EGUIが静かに言う。
「誰の視点かをきれいに分けるより、二組の気持ちが混ざった曲として聞いてください」
wataが少し笑った。
「俺らが、ちょっとReShiNaの言葉を借りてるところもあります。逆にReShiNaが、俺らの言葉を受け取ってくれてるところもある。そういう混ざり方も楽しんでください」
Kateが、ほんの少しだけ目を細めた。
今の説明は良い。
販促にも使える。
でも、今はメモしない。
まず聴く。
mcRCは、客席へ一度だけ軽く頭を下げた。
「では、聞いてください」
一拍。
「君に会えてよかった feat. Reverse Crown」
照明が変わるわけではない。
歓声もない。
でも、そのタイトルが置かれた瞬間、場の温度が変わった。
最初に入ったのは、natsuのフルートだった。
短く、明るすぎず、でも前を向いた音。
そこにrenaのアコギが重なる。
shihoの低い音が、床を作る。
そして、Reverse Crown三人の声が入る。
≫ 君に会えてよかった
≫ 強がりでもそう言うよ
≫ I met your sound, I found my light
≫ 届かなくても消えない night
Miwaの目元が、最初のHookで揺れた。
まだ早い。
自分でもそう思った。
でも、揺れた。
君に会えてよかった。
それは、綺麗な言葉だった。
でも、この六人が歌うと、ただ綺麗なだけではなかった。
強がりでもそう言うよ。
その一行が、Miwaの胸に引っかかった。
本当は痛い。
本当は寂しい。
本当は届かなかったものがある。
でも、それでも「よかった」と言う。
その大人の苦しさに、息が詰まった。
mcRCのVerseに入る。
仕事帰り。
ほどくネクタイ。
画面の向こうに流れるフルートライン。
疲れた部屋に差す月明かり。
それは、特別なドラマではない。
でも、生活の中でふと音に救われる瞬間だった。
≫ 仕事帰り ほどく necktie
≫ 画面の向こう 流れた flute line
≫ 疲れた部屋に差した moonlight
≫ 耳から心へ抜ける good night
Miwaは、ハンカチを膝の上で握った。
自分にも、そういう夜があった。
仕事帰り。
誰にも言わずに疲れて。
何かを買うでもなくコンビニの棚の前で止まって。
帰って、スマホを開いて。
たまたま流れてきた音に、少しだけ救われる夜。
その小ささを、mcRCは景色にしていた。
Ninaは、目を細めた。
「仕事帰り」という入口が、うますぎると思った。
恋愛曲なのに、いきなり夢の世界へ連れていかない。
画面の向こう。
部屋。
疲れ。
月明かり。
その生活の手触りがあるから、音に出会う瞬間が嘘にならない。
Ninaは、心の中で思った。
これは、切り抜きの見出しにできる。
でも、まだ書かない。
今は仕事モードを捨てる時間だった。
曲は、近いほど遠いという感覚へ入っていく。
触れそうなくらい近いのに。
世界が違うと分かった時。
近いほど遠いと知る。
その言葉が、客席に静かに落ちた。
≫ 触れそうなくらい近いのに
≫ 世界が違うとわかった時
≫ 近いほど遠いって知った story
Kateは、ゆっくり息を吐いた。
これは、相手を手に入れたい曲ではない。
でも、手に入らないから綺麗に諦めた曲でもない。
近い。
でも、遠い。
届かない。
でも、消えない。
その未整理な状態を、曲が無理に整理していない。
だから、痛い。
wataのVerseで、空気が少し変わった。
言葉が跳ねる。
けれど、軽くはならない。
loveじゃない。
たぶん違う。
ただのadmire。
そう言い聞かせても、心は黙らない。
≫ これは love じゃない たぶん違う
≫ ただの admire そう言い聞かす
≫ でも bass が dive 胸まで vibe
≫ 理屈じゃ heart は黙らない
wataの声なのに、どこか女の子側の揺れも混ざっているように聞こえた。
ReShiNaが書いた原型の視点が残っているからだ。
でも、それが変ではなかった。
むしろ、wataがその言葉を歌うことで、視点の境界が少し溶けていた。
男の言葉。
女の言葉。
ラップの言葉。
ケルトの言葉。
そういう線引きが、曲の中で少しずつほどけていく。
Saraは、そこを冷静に見ていた。
これは説明が必要かもしれない。
ただし、過剰に説明すると野暮になる。
「もともとReShiNaが書いた曲にReverse Crownが参加しているため、視点の混ざり方も魅力」
そんな言葉が、頭の端に浮かんだ。
でも、今はまだ書かない。
shihoの声が入った。
≫ 急がなくていい
≫ 名前をつけなくていい
≫ 聴いてくれたその距離も
≫ ひとつの優しさだった
そこで、Miwaの涙が落ちた。
一滴だけ。
本人も少し驚いたように目を伏せた。
急がなくていい。
名前をつけなくていい。
その言葉が、優しすぎた。
恋なのか、憧れなのか、友情なのか、救いなのか。
名前をつけなければ不安になる気持ちはある。
でも、名前を急ぐことで壊れるものもある。
shihoの声は、その壊れやすいものに布をかけるようだった。
Miwaは、もう一度ハンカチを握った。
Yuiは、そんなMiwaを横目で見て、少しだけ泣きそうになった。
曲はHookへ戻る。
今度は、ReShiNaの音が少し前に出る。
natsuのフルートが、言葉の間を通り抜ける。
Saraは、録画画面を確認しながら、思わず画面から目を離した。
記録することも大事。
でも、これは画面越しだけで見る音ではない。
直接見なければ、後で販促文にしても薄くなる。
そう思った。
EGUIのVerseに入る。
深夜の机。
コード探し。
スマホのメモに残した声。
君を思うと詩になる。
EGUIの声は、派手ではない。
でも、一直線に届く。
≫ 実は俺も曲を書いてる
≫ 深夜の机でコード探してる
≫ スマホのメモに残した声
≫ 君を思うと詩になるね
誰かを思って書いた歌が、自分を救ってしまうこと。
その言葉が、リバックライン全員に静かに刺さった。
仕事として誰かを支えること。
段取りを整えること。
言葉を作ること。
その全部が、相手のためのはずなのに、結局自分も救われている。
Kateは、そこで初めて少し目を伏せた。
この曲は、音楽家だけの話ではない。
誰かのために動く人間の話でもある。
自分の手が、誰かの曲に少しでも役立った時。
その曲が届いた時。
自分の中にも、確かに何かが返ってくる。
それを、EGUIはまっすぐ歌っていた。
renaの声が入る。
≫ 君がくれた歌だから
≫ 少しだけ私になれた
≫ 借りものでも嬉しかった
≫ 声にしたら私の今だった
Yuiが、口元を押さえた。
その声があまりにやわらかかった。
借りものでも嬉しかった。
声にしたら私の今だった。
誰かが作った歌でも、自分の声で歌えば、その瞬間だけは自分になる。
Yuiは、胸の奥がきゅっとなった。
裏方として用意したものが、誰かの手に渡って、その人のものになる瞬間。
それに似ている気がした。
Bridgeで、三人のラップとReShiNaの声が重なる。
画面の向こう。
ライブの向こう。
触れた距離から、また遠い場所。
言えない想いも音にして。
小さな詩でも抱きしめて。
本気も嘘も混ざってる。
強がりだってわかってる。
でも、出会う前には戻れない。
その音をもう知ってしまった。
≫ 本気も嘘も混ざってる
≫ 強がりだってわかってる
≫ でも出会う前には戻れない
≫ その音をもう知ってしまった
Miwaは、もう完全に泣いていた。
肩が震えるほどではない。
でも、涙は止まらなかった。
Ninaがそっとハンカチを差し出す。
Miwaは、小さく受け取る。
仕事モードは、とっくに捨てていた。
メモも取っていない。
販促文も考えていない。
ただ、聴いていた。
誰かに会えてよかったという言葉が、こんなにも痛くて、こんなにもあたたかいことを、今、初めて知ったみたいに。
Final Hook。
六人の音が重なる。
≫ 君に会えてよかった
≫ 強がりでもそう言うよ
≫ I met your sound, I found my light
≫ 届かなくても消えない night
≫
≫ 君に会えてよかった
≫ 一瞬でも宝物
≫ Say goodbye, still in my heart
≫ あの日の音が鳴ってる
最後にReShiNaの声が、そっと後ろから重なる。
≫ 君に会えてよかった
≫ あの日の音が鳴ってる
フルート。
アコギ。
バスクラリネット。
三つの音が残る。
そして、消える。
曲が終わった。
誰もすぐには喋らなかった。
録画の赤いランプだけが、小さく点いている。
Saraは、カメラを止めなかった。
この沈黙も、必要だと思った。
使うかどうかは別として、この沈黙は記録されるべきものだった。
最初に動いたのは、Miwaだった。
両手で顔を覆う。
そして、小さく言った。
「……無理」
Ninaが、そっと背中に手を置く。
「Miwa」
Miwaは、首を振った。
「仕事モード、無理」
その言葉に、wataが少しだけ笑いそうになった。
でも、笑わなかった。
Miwaの涙は、茶化すものではなかった。
Miwaは、顔を上げた。
目元は赤い。
でも、ちゃんとステージを見ていた。
「すみません。コメント係なのに、最初のコメントがこれで」
Kateが静かに言った。
「それでいいと思う」
Miwaは頷いた。
そして、涙を拭きながら言った。
「君に会えてよかった、って、こんなに苦しい言葉でしたっけ」
その場の空気が、少し揺れた。
Miwaは続ける。
「もっと、きれいな言葉だと思ってました。ありがとうとか、出会えて嬉しいとか、そういう……でも、この曲の『会えてよかった』は、届かなかったものも、言えなかったことも、少し悔しいことも、全部抱えたまま言ってる」
声が震える。
「だから、泣きました」
renaの目元が揺れた。
mcRCも、静かにMiwaを見ていた。
Miwaは、少しだけ笑おうとして失敗した。
「すみません。販促に使えるコメントじゃないかも」
Ninaが言う。
「いや、使えるよ」
Miwaが見る。
Ninaは、涙を少しこらえた顔で言った。
「今の、そのまま使える。『君に会えてよかった、がこんなに苦しい言葉だと思わなかった』って、すごく届く」
Saraも頷いた。
「かなり強いです。整えれば、ちゃんと使えます」
Kateは、まだノートを開いていなかった。
でも、言葉は聞き逃していない顔だった。
「Miwaの言葉は、曲の芯をかなり正確に掴んでいます」
Miwaは、恥ずかしそうに下を向いた。
「泣いただけです」
natsuが、ステージからぽつりと言った。
「泣いたのも、コメント」
Miwaは、泣きながら笑った。
「ありがとうございます」
その笑いで、場が少しだけほぐれた。
次に口を開いたのはKateだった。
「私からは、少しだけ整理して言います」
mcRCが頷く。
Kateは、ステージを見た。
「この曲は、恋愛曲に見えるけれど、恋愛だけに閉じないと思いました。誰かの音、誰かの仕事、誰かの存在に出会って、自分の世界が変わってしまった経験の曲です」
リバックラインの全員が、静かに聞いている。
Kateは続ける。
「特に良かったのは、“届かないなら届かないでいい”と言いながら、本当は少し痛いところです。綺麗に諦めきれていない。でも、その未整理さごと、会えてよかったと言っている」
EGUIが、少しだけ目を伏せた。
Kateの言葉は、やはり正確だった。
「販促文としては、軽く恋愛曲と打ち出すより、“名前をつけられない出会いの曲”にした方がいいと思います」
Ninaがすぐに頷く。
「それ、いい」
wataが小さく言う。
「名前をつけられない出会いの曲」
shihoの表情が、少し変わった。
それは、自分が歌った言葉ともつながっていた。
急がなくていい。
名前をつけなくていい。
その距離も優しさだった。
Ninaが続ける。
「私は、聴きながらずっと映像が浮かんでました。仕事帰りの部屋、イヤホン、ライブハウス、ステージ脇、深夜の机。全部バラバラなのに、音でつながってる」
Ninaは、いつもの広報の顔になりかけて、少しだけ止まった。
そして、笑った。
「ごめん。仕事モード出そうになった」
wataが言う。
「出てました」
Ninaは笑う。
「でも、ちゃんと感じて言ってる。これ、切り抜きは一発で強いシーンを取るより、短い景色をつないだ方がいいと思う」
Saraがすぐに補足する。
「映像使用する場合、本人確認必須。特にReShiNa側の表情が強いので、使う範囲は慎重に」
renaは、その言葉に頷いた。
「お願いします」
Saraは、柔らかく頷き返した。
「もちろんです」
Yuiは、少し迷ってから手を上げるように指を動かした。
「あの」
mcRCが、優しく言う。
「お願いします」
Yuiは、ステージを見た。
「私は、最後の“あの日の音が鳴ってる”が好きでした」
少しだけ、言葉を探す。
「人と会うって、会った日だけじゃなくて、そのあとも続くんだなって思いました。もう一緒にいない時間でも、その人の音が自分の中で鳴ってるなら、会ったことは終わってないんだなって」
renaは、目を伏せた。
Yuiの声は、派手ではない。
でも、曲の余韻にとても合っていた。
Yuiは、少し恥ずかしそうに続けた。
「だから、さよならの曲なのに、終わりの曲じゃない感じがしました」
natsuが、小さく頷いた。
「終わらない音」
Yuiは、ぱっとnatsuを見る。
「はい。それです」
natsuは、少しだけ笑った。
「じゃあ、合ってる」
Yuiは、嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、Miwaがまた少し泣いた。
Ninaが小声で言う。
「Miwa、追い泣きしてる」
Miwaは、ハンカチで目元を押さえた。
「Yuiちゃんのコメントがよすぎる」
Yuiが慌てる。
「え、すみません」
Kateが静かに言う。
「謝らなくていいです。今のも使えます」
wataが言った。
「リバックライン、コメント係として強すぎません?」
mcRCも頷いた。
「強い」
EGUIが低く言う。
「全員、ちゃんと聴いてる」
その言葉に、リバックラインの五人は少し照れた。
でも、嬉しそうだった。
仕事として来ている。
録画もしている。
コメントも使う。
販促にもつなげる。
けれど、いまこの瞬間は、それだけではなかった。
曲を聴いて、心が動いて、それを自分の言葉で返している。
その場にいる全員が、それを分かっていた。
Saraが、最後にカメラの録画時間を確認した。
「このコメント部分も、記録として残っています。使うかどうかは別途確認します」
Miwaが、涙を拭きながら言った。
「私の泣き顔は、できれば……」
Ninaが笑う。
「泣き声だけなら?」
Miwaが振り向く。
「もっと嫌かも」
wataが言う。
「でも、Miwaさんの“無理”は最高でした」
Miwaは、また顔を赤くした。
「あれを使うんですか?」
Kateが、真面目に言った。
「候補です」
Miwaが絶望した顔をする。
その瞬間、場に笑いが起きた。
ReShiNaも笑った。
リバクラも笑った。
リバックラインも笑った。
涙のあとに笑いがある。
感想のあとに仕事がある。
仕事の奥に、ちゃんと感情がある。
それが、この場の強さだった。
mcRCは、マイクから少し離れて、リバックラインを見た。
「ありがとう。めちゃくちゃ助かる」
Kateは首を横に振った。
「まだ一曲目です」
wataが、少しだけ背筋を伸ばす。
「そうやった」
EGUIが言う。
「次がある」
その言葉で、場の空気がまた少し変わった。
君に会えてよかった feat. Reverse Crown。
一曲目は、確かに届いた。
でも、今日はもう一曲ある。
君の音に憧れて feat. ReShiNa。
今度は、Reverse CrownがReShiNaに向けた曲に、ReShiNa自身の音が入る。
Miwaは、泣いたあとで少しぼんやりした顔のまま言った。
「次、私、大丈夫かな」
Ninaが笑う。
「たぶん大丈夫じゃない」
Yuiが真面目に頷く。
「私も自信ないです」
Saraが、録画画面を確認しながら言った。
「録画は続けます」
Kateは、ノートを開いた。
「では、次もまず感じたままいきましょう」
natsuが、ステージの上でフルートを持ち直した。
「次は、憧れ」
shihoが静かに頷く。
「うん」
renaは、アコギを抱えたまま、リバクラ三人を見た。
「お願いします」
mcRCは、頷いた。
wataも、少しだけ深呼吸した。
EGUIは、静かにマイクの前へ戻る。
一曲目の余韻が、まだ部屋に残っている。
でも、次の音はもう、すぐそこまで来ていた。




