31. 5日目 臆病
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……ルーナ。
「今の話を聞いて涙を流さない者は薄情者ではなく、心のない化け物だ。……すまなかった。まさか君にそのような過去があったなんて思いもしなかったんだ。考えの至らない主で…本当に……」
あぁ、だめだ。自分の馬鹿さ加減に嫌気がさすよ…まったく、涙が止まらないじゃないか。
「私は本当に不出来な王女だ。……いつも君に苦労をかけて、それに飽き足らず誰にも触られたくない傷をまた開くような真似をして…表情から君の心の声を汲み取るべきだったのに、私はしなかった。……いや、すまない。こんなのは言い訳でしかないな。…私はしなかったのではくて、出来なかったんだ。なにしろ私は、兄上達とは比べようもないほどの出来損ないだからな」
…心が弱っているのは彼女である筈なのに、これでは私が傷ついて心の内を吐露してるみたいじゃないか。ハハ…情けない。
「自分を卑下なさらないで下さい、ライリー様。貴女の涙を見たくてこのお話をしたのではないんです。まぁ、他の方からすれば確かに最悪な家庭環境と言えるでしょうけれど……分別のつかなかった当時の私にとってはあれが当たり前だったのです。誰かと比べる機会もありませんでしたから……それにこの出来事のおかげで私は貴女とお会いすることが出来ましたし、自分が不幸だとは思っていませんよ?」
先程とは反対に、今度はルーナが私の頬を触り、その指で零れ落ちる涙を拭ってくれる。そんな優しい彼女の言葉は私を想ってのものだと理解はできる。けれど、『当たり前だった』という発言に……私は彼女が体験した虐待の影響がとても恐ろしいモノであると感じてしまった。
「ルーナは…私の侍女となって幸せか?」
不安に駆られたのか、つい、そんな言葉が口から漏れた。
彼女は一瞬、キョトンとした表情を見せたが、すぐに口角を上げて柔らかい声音で一言。
「はい」
嘘偽りのない返答に私は、『そうか』と相槌を打ち、ルーナと共に眠りについた。
未だにマクシミリアン以外の王子・王女の話を出していない事に気付き、絶望中の作者ですが、これからも本作品をよろしくお願い致します。




