第11話 裏切り
「それでは、これより『英雄物語』第二部『裏切り』を開演します!」
「へー、英雄の旅も順調じゃなかったんだな〜」
「・・・・・・そうじゃな」
ラキナは知っているのか、それしか言わなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・。
「おい!クレア、どういうことだ!!」
舞台は、森の中。比較的開けたところだった。
成長し、巨人と戦っていたマルスと同じくらいになった時だ。
マルスとイリアの演者は、多くの魔人役に囲まれており、その魔人たちを誘導したのがクレアというエルフの人らしい。
「ごめんなさい、マルスさん。こういうことなんですよ」
エルフらしからぬ、黒い翼を広げ言わんとすることをアピールする。
「なんでそんな・・・・・・」
イリアも悲しそうな表情でクレアに尋ねる。
「初めから、この瞬間のためにあなた方について行ってたんですよ」
クレアは、イリアの表情を気にすることなく、淡々と事実を突きつける。
「では、お話はこの辺で、彼らは”あの方”の精鋭部隊ですので、生きてたらまた会いましょう」
「待って!クレア!」
イリアが叫ぶが、クレアは答えない。
「マルスさん。あの日あなたに聞きましたよね。なんのために戦うのか」
「ああ・・・・・」
「私は、”あの方”のために戦う。ただそれだけです」
そう言って彼女は姿を消した。
「なんで・・・・・・」
イリアは、悲しみで今にも泣きそうだったが
「イリア、行くよ」
マルスの言葉でなんとか堪えていた。
「ええ」
二人は、その言葉を合図に大量の魔人に攻撃を仕掛けた。
◆◆
そして、劇の舞台は、クレアにスポットライトを当てた。
「ふふふ、これも全て”あの方”のため・・・・・」
自らの胸にある魔石に手を当て空を見上げる。
「さて、どうなったかなー。あの二人・・・・・」
ドンッ、と二人を嵌めたところで光の柱が上がった。
「あーあ、あれだけ集めても敵わないか・・・・・」
クレアは、自重気味に笑った。
「まあ、いいか。報告しなきゃ」
そこで、クレア役の人は、舞台から消えた。
そして、マルスとイリア役が出てくる。
「「はぁはぁはぁ・・・・・」」
二人は、100を超える魔人を相手にして疲れ切っていた。
「これは流石に、疲れた・・・・・」
「だね・・・・・。でも・・・・・」
イリアは、疑問を口にした。
「クレアがこんなに魔人を集めるなんて・・・・・」
「ああ、少し出来すぎてる気がする。一体いつから・・・・・」
『裏切り』を・・・・・。
「とりあえず、仲間たちに知らせに行くか」
「そうね」
仲間。
『英雄物語』では描かれ、『英雄の真実』とは全く違う内容。
どんなふうに描かれているのか・・・・。
◆◆
「みんな、聞いてくれ」
マルスが、いかにも英雄という感じで”仲間”に話しかけていた。
「どうしたんだ?」
男の一人が、答えた。
あれって、父さんか?
マルスの言葉に返事をした役者の衣装と雰囲気は、遺物の記憶の中で見たザックハードに似ていた。
「クレアが裏切った」
「なに?」
『裏切り』、その事実に仲間たちは、憤っていた。
妖艶な女性が演じているラキナも同じだった。
ふと、隣の本人を見ると
「おい、どうした?」
彼女は、唇を噛み血を流していた。
その手は、握りしめられ、震えていた。
「大丈夫か?」
その手を握り、もう一度聞いた。
「・・・・!!ああ、すまんな・・・・・」
「そうか」
手を離し、劇に集中した。
マルスが、仲間達と今後のことを話し、全体の意思が決まったところで第二部は終了した。
「続きましては、最終部『英雄誕生』を上演させていただきます。しばらくお待ちください」
「いや〜、劇というものは素晴らしいな」
セナが興奮して、感想を言っていた。
「うん、ものすごく楽しい」
アリスも気に入ったようだ。
「う〜ん、私は、違和感を感じるわ」
アイナは少し違うようだ。
「どこに違和感を感じた?」
ラキナがその違和感について聞いた。
「そうですね。王家に伝わる内容とは、少し違うような感じがします」
「ほう・・・・・、そうか」
「先程の『裏切り』のところに少し疑問が残りますね」
「そうじゃな・・・・・」
ほんと、ラキナは教えてくれる気がしない。
まあ、いいか。
遺物を辿れば、全てがわかるらしいからな。
「少しお手洗いに行ってくる」
みんなに伝え席を離れた。
「ふぅ・・・・・」
用を済ませ、会場内をぶらついていた時、数人の声が聞こえてきた。
「準備は整ってるか?」
次の部の話だろうか。
「ああ、全て整っている。あとは実行するだけだ」
「そうか。・・・・・いよいよだな」
「だな。この国から聖女を引きづり降ろしてやる」
おーっと、物騒な内容すぎたな。
今日初めて会ったとはいえ、ラキナの知り合いだ。
「”あの方”に知らせろ」
また、”あの方”かよ。
今日だけで、何回聞いたことやら。
とりあえず、なんの準備か視てみるか。
聖教国全体を眼で捉え悪意あるものを視てみる。
「お?なんだよこの国は・・・・・」
アルベルトの眼に写るこの国は、真っ黒に染まり、悪意で埋め尽くされていた。
その中で、一際黒が濃い地点を視た。
「魔石か?」
その地点には、ある施設があり、その最深部と思われる場所に黒い魔石が置いてあった。
「とりあえず、あの魔石の魔力をもらうか・・・・」
眼で座標を指定し、魔力を掌握し、吸収を始めた。
「これって、あの巨人と同じ魔力?」
なんで、こんなところに?
マルスによって討ち取られた巨人の魔石がそこにはあった。
「ん?」
魔力を吸収しながら、国の悪意を視てみた。
「あれ、減ってる?」
魔石の地点を中心とし、国中の悪意が減っていた。
これが原因だったのか?
魔石の中を吸収し終わった時、魔石は砕け、完全に悪意は無くなっていた。
「なんで、魔石からあんなに悪意が?」
魔石は基本意思を持たない筈。
それとも、あの時代は違ったのか?
魔石のあった施設を詳しく視ていると・・・・・
「え?聖女様?」
先ほど会った、聖女様と瓜二つの女性が鎖で繋がれ気を失っていた。
「魔力が吸い取られてる?」
聖女様に繋がれている鎖から魔力が吸われ、巨人の魔石と思われるものが置いてあった台座に注がれていた。
「聖女様の魔力で維持していたのか?」
でもなんで聖女様が二人?
なんか、見てはいけない物を見ちゃったな〜。
「助けるか」
座標を聖女様の前に指定し転移した。
「おいっ、緊急事態だ!!」
アルベルトが転移した直後、数人の者たちが騒ぎ出した。
「どうした」
「魔石の魔力が無くなったとの報告が!!」
「なに・・・・・・・・!!」
「急げ!!速やかに施設に戻るぞ!!」
そこにいた全員は、施設へ全力で戻った。
「う〜ん、近くで見るとほんとそっくりだよな〜」
彼らが気づいた頃には、すでに転移していたアルベルトは、とりあえず鎖から解放させ宿の布団に寝かせた。
「魔力不足がひどいな」
呼吸の荒い聖女様の手を取り、神聖属性の魔力を流し込んだ。
「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・・」
呼吸が落ち着いたのを確認して、施設に戻った。
「めぼしいものはもらって行こうかなー」
強盗らしいセリフとともに、最深部にあるめぼしいものをアイテムボックスに収納し劇の会場に戻った。
「ただいま〜」
「長かったの」
「とびっきりのが出たんだよ」
間違いじゃない。
聖女様の暗殺っぽいセリフに、巨人の魔石らしきものに、二人目の聖女様。
これ以上でかい物はない。
「そうか」
見事に突っ込まれなかった。
「それよりラキナ」
「なんじゃ?」
第二部以降あまり乗る気じゃないラキナは声だけこちらに返事をした。
「聖女様って二人いんの?」
「な訳なかろうが」
「だよね」
「なぜそんなことを?」
「実は・・・・・・・」
アリスたちも交え、先ほど会ったことを話した。
「そうか、そういうことか」
ラキナは、何か納得したのか、スッキリした顔になっていた。
「どういうこと?」
「おそらく先ほど会ったのは、奴らの仲間じゃろう」
「ソロモンの」
「ああ」
なぜ、そいつらの仲間が聖女様になってんだ?
「アイナよ、顔が友人の的にあったと言っておったな」
「はい」
「おそらくそいつの魔法じゃろう」
つまり、奴らの仲間が今宿で寝ている聖女様を拉致して、偽物の顔を本物と同じ顔にかえ、この国の頂点に立ったということか。
「なんでそんなことを?」
「この国の信仰は、誰に向いておる?」
「最高神様だよな」
「ああ、そして神は信仰心が多ければ多いほどその力を増す」
なるほど、だから頂点に立つことで最高神様の信者を増やそうとしているのか。
ていうことはつまり?
「敵の黒幕って最高神様ってこと?」
「そうじゃ、全ての元凶は最高神・オリジンじゃ」
ああ、勝てる気がしなくなってきた。
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