第10話 劇
本日2話目です。
聖教国を観光し始めて三日目、朝早く、オーダーメイドを頼んだ武器屋に来ていた。
「できたぞ、坊主」
「本当に!?」
「ああ、いい仕事をさせてもらったぜ」
アルベルトは、店主から短剣を受け取り、視てみた。
=緋剣=
緋色金を素材に使った、最上位の短剣
よし、これであとは俺の魔力を流し込むだけだな。
「ありがとう、おじさん!」
「いいってことよ」
お金を払い、店を後にした。
「ただいま〜」
宿の部屋に戻ると、アイナが迎えてくれた。
「どこ行ってたの?」
「これだよ」
アイナに短剣を渡しながら言った。
「あ、これすごい手に馴染む」
「ならよかった」
あのおじさん相当腕が良かったな。
「あと、いくつか素材を混ぜたいからさ、ちょっといい?」
「ええ、お願いするわ」
よし、なら短剣の形はそのままで、今持っている太古の魔石と魔力を素材に・・・・・
「あ、そういえば属性つけたりする?」
「属性?そうね・・・・・」
アイナはしばらく考え、思いついたように答えた。
「”雷”とか?」
「雷か・・・・・・」
雷というと、遺物から読み取れた英雄の過去で見たあの落雷が思い出される。
あれは、凄まじかったな・・・・・。
「アル?」
「いや、なんでもないよ」
雷をイメージし魔力を流し込みながら、短剣に魔石を溶かし込んだ。
「よし、完成!」
出来上がった短剣は、バチバチ言っていた。
=雷霆・ケラウノス=
その一振りは、全てを斬る。切り口は、雷で焼かれる。
破壊不可。
「おお〜、すごいのできたな」
「こんなの使っていいの?」
アイナも詳細を聞いて、使えるのかどうか悩んだ。
「大丈夫だよ。ちょっと手かして」
アイナの手をとって、彼女の魔力を注ぎ込んだ。
=雷霆・ケラウノス=
その一振りは、全てを斬る。切り口は、雷で焼かれる。
破壊不可。アイナ専用武器。
「これでよし」
「相変わらずすごいわね」
そう言いながら短剣を受け取り手に馴染ませていた。
「試しにスキル使わず、これ切ってみて」
緋色金を出し、試し切りをしてもらうことにした。
「ええ」
アイナは、ゆっくりと緋色金の上に短剣を触れさせ、そのまま上に振り上げた。
”スパッ”
「「え?」」
アイナが振り下ろす前に緋色金は斬れていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ま、いいか」
世界最強の鉱石は、刃が触れただけで斬れた。
この短剣の強さに加え、”捌くもの”があるのだ。
これで、おそらくアイナにきれないものは無くなった。
◆◆
その後、食材を大量に買ってきたアリスたちと朝食を取っていた。
「今日はなにするの?」
「どうしようか・・・・・」
なにも決めていなかった。
短剣を受け取りに行くことが今日1日の最大イベントであったため、それ以降は考えてなかった。
「あ、そういえば、劇がやってるらしいぞ」
セナが、教えてくれた。
劇か・・・・・。
前世でもそういうのは見たことなかったな。
「いいな、それ。行ってみようよ」
「よし、行こうか」
最低限のものだけを持ち、他は、アイテムボックスに入れ宿を出た。
「どこに行くんじゃ?」
聞いてなかったのかよ。
「劇だよ、劇」
「劇?」
「そう、劇」
「劇ってなにをするんじゃ?それは美味いのか?」
食いもんのことしか書いてないのかよ。
「あー、そう言えばそうだなぁ」
なにするか知らねーや。
「劇ってなにするの?」
提案をしてくれたセナに聞いた。
「聞いた話では、『英雄物語』を演じるらしいぞ」
『英雄物語』か・・・・・。
俺は、読んだことがないっていうか、『英雄の真実』にしか見えないからな〜。
「あー、あれをやるのか」
ラキナも何か思うところがあるのかな。
「ラキナは『英雄物語』を読んだことあるの?」
「いや、ないな」
そうか、ここに『英雄物語』を知らない人、読めない人が二人。
そう考えると、意外と楽しめそうだな。
「お、ここじゃないか?」
結構でかいな。こんなに大きな舞台とは思わなかった。
「すごいね、ここ」
アリスも驚いていた。
確かに、でかいが・・・・・。
でかすぎじゃないか?
「とりあえず入ろうか」
「だね」
セナに促され、会場に入った。
セナが今までで一番テンションが高い気がする。
「セナ。もしかして、楽しみだったの?」
「!?。そ、そんなことは・・・・・」
「えー、楽しみにしたのに〜」
「あ、アリス!?」
あっさり、暴露されていた。
「別に隠さなくてもいいのに」
「い、いや、私みたいなのが、このような・・・・・」
「別におかしなことはないと思うけど」
「そ、そうか?」
そうだ。このイケメン美女が劇を誰よりも楽しみにしているのは、なにもおかしなところはない。
むしろ、いい。
「ここら辺でいいかな」
一番見やすそうな位置を選び、5人分の席を取った。
「楽しみだね、アル君」
「だね」
「私も劇は始めて見るわね」
「そうか、なら全員初めてで良かったな」
「セナも初めてなの?」
「ああ、いつか見てみたかったんだが、行く機会もなくてな」
そうか、今日のテンションは、その我慢が溢れ出ていたのか。
「申し訳ございません、隣よろしいですか?」
一番通路側に座るアルベルトの隣に座らせて欲しいと、フードで顔を隠した女性が声をかけてきた。
「いいですよ」
どうぞと、着座を促す。
「ありがとうございます」
にしても、上品さが一足一頭足から溢れ出てるんだけど・・・・・。
どこかの貴族か?
「どうされました?」
「いえ、なんかやけに上品だなと」
「ああ、そういうことですか。まあ、それなりに教育されてきましたので」
やはり貴族か。
「む?なんじゃ、セリカじゃないか」
「ラキナ知り合いなの?」
意外だ。こんなところでラキナの知り合いに会うとは。
「ええ、お久しぶりです。ラキナさん」
「元気じゃったか?」
「ふふ、最近は少し忙しいですね」
「そうか」
二人は、結構長い仲らしいな。
「あの〜、ラキナとはどういったご関係で・・・・・」
このラキナと知り合いだ、何かあるはず。
「わたくし、この国で聖女をやらせてもらってます」
聖女?聖女ってあの?
「なんでこんなところに?」
「ふふ、抜け出してきちゃいました」
てへっ、とはにかみ笑顔を見せる。
「まったく、かわっとらんのお主も」
「そういうラキナさんは、変わりましたね」
「そうかの」
「ええ、そうですよ。みなさん変わっていきました」
二人の間に、過去を懐かしむような雰囲気が流れた。
俺を挟んで、そんな空気を醸し出さなくても。
アリスたちにも紹介をし、世間話をしていると、劇が始まった。
この劇は、三部構成になっており、少年期から最終決戦まで、分けて行うらしい。
「それでは、これより英雄となった少年の始まりの日々をお楽しみください」
垂れ幕が上がっていくと同時にアナウンスが流れ、壮大な演劇が始まった。
◆◆
「やあ、イリア!」
「おはよう、マルス!」
そんな、セリフとともに始まったが、初っ端から違和感しかなかった。
なんだこのセリフは、あの時のマルスはこんなんじゃなかったぞ。
「クク・・・・・・」
声が聞こえ、隣を見るとラキナが笑いを堪えていた。
「おまえ・・・・・ここで笑うなよ」
「わかっておるわ・・・・・・く・・・・」
実際に見てきた人にとって、本物とのギャップに悶え苦しむことになるだろうと予想した。
セナは、目を輝かせ見ており、アリスとアイナも、興味深く見ていた。
「お師匠様!私に魔法を教えてください!」
「先生!私にも!」
お師匠並びに先生ことラキナが劇に登場した。
これには、思わず・・・・・
「誰だあれ・・・・・」
目の前でラキナをイメージし、彼女を演じているのは、妖艶な美女だった。
本人と美女を何度も往復し、確かめた。
「全然似てねぇ」
「おい、ラキナ。おまえすごいイメージで伝わってるぞ」
詐欺じゃねえのか?
「良いではないか」
「は?だってあれ明らかに・・・・・」
「良いではないか」
同じセリフが返ってきた。
ん?こいつ・・・・・・。
「おまえ、自分があんなふうに思われてると知って喜んでるな?」
「!?」
「まさか・・・・・・」
「そ、そんなわけあるかい!」
劇の邪魔にならないように、気を遣っているため静かに言い争いを繰り広げていた。
「まあ、いいじゃありませんか、それぞれが楽しめれば」
セリカ様の言葉で、落ち着くことができたが、ラキナの演者を見るだけで、笑いが出てくる。
「おまえ、あとで覚えてろよ?」
「はいはい」
言い争いをしている中、劇は、まもなく一部終了近づいていた。
「お、あれって、クレアって人じゃない?」
マルスたちのそばにいたエルフは、彼女しか知らない。
「そうじゃな」
「ですね・・・・・」
ラキナも聖女もあまりいい話ではないようだ。
気まずい雰囲気にはなったが、第一部がちょうど終わった。
「これで、第一部を終了します。第二部については、このまま、上演をさせていただきます」
「みんなどうする?見ていく?」
「うん!」
「せっかくだから見ていきたいわね」
「私も、最後までぜひ」
ラキナ以外は、見ていくらしい。
「ラキナは?」
「・・・・・・ん?」
「いや、劇。このまま見ていく?」
「ああ、そうしようか」
「では、私はここで失礼しますね」
聖女様だけが帰るようだ。
「見ていかないんですか?」
「ええ、あまり長居しますと見つかっちゃいますので」
「そういうことですか。では、また機会があれば」
「ええ、また」
そう言って、彼女は会場を後にした。
「それでは、第二部『裏切り』を開演します。皆様、席におつきください」
◆◆
「いかがでしたか?聖女様」
「ええ、楽しめたは、彼にも会えたことだし」
セリカは、会場を外から見ながら笑顔を見せた。
「そうですか。それは良かったです」
「帰りましょうか」
セリカと侍女は、その場から消えるようにして街から姿を消した。
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