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【書籍、コミック発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko(湖森遼)
〜SS作品〜

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アメリアの元世界転移旅 〜熊野古道編(5)

 その夜、安めの民宿に宿を取った私たちは、今後のことについて話し合ってみた。



「今日見た魔物? いや、えっと、神? 八咫烏だっけ? あれってどう思う?」


「う〜ん、少なくとも転生前、私が日本にいた時には、あんなのはいなかったよ。

 昼間もちょっと話したけど、どう見てもあれは八咫烏で、私たちだけに見える存在なんだと思う」


「まぁ、私たちは異世界人だし、それはそういうものだと飲み込むことにして……。

 問題はアメリアちゃんの聞いた“声”の方だよ。

 あれって、どういう意味だと思う?」


 そう問いかけてくるタキリさんに、昼間の動揺は見られない。


 昼間、八咫烏に遭ったばかりの頃はだいぶ混乱してたけど、いくら前世の姿をしていても、タキリさんの言うとおり私はこの世界に本来いるべき存在じゃない。


 そんな私なら、この世界の理の外にいる存在が見えるのもある意味当然だろう。


 そう割り切れたことで、私にとってもこの現象は想定の範囲内の問題に落ち着いた。


 で、そうなると……。


 問題は八咫烏の存在云々の方ではなく、その言葉のほう。



『三山を詣でよ。されば導かん』



「アメリアちゃんはなに言ってるかわかる?」



 そう質問するタキリさんに改めて熊野三山について説明する。



「相手は熊野三山に祀られている八咫烏だからね。三山っていうのは熊野三山のことで間違いないと思うよ」



「そうなると、とにかく残りの2つ、熊野速玉大社と熊野本宮大社に行ってみることだね。

 よし、今日は早く寝て、明日は早く出発しよう」



 と、そんなふうにやる気になっているタキリさんに、私は待ったをかける。



「いや、その前に、私たちには行かなきゃいけないところがあるんですよ」


「ん?」



 八咫烏の言葉には何かまだ他に含むところでもあったのかと、疑問を顔に貼り付けるタキリさん。


 でも、そうじゃない!



「明日の朝は、まず先に温泉に行きます!」



 私は、そう高らかに宣言した。



 ……



「で、ここがアメリアちゃんオススメの温泉ってわけね」



 ちょっとだけ呆れた顔で、そう聞いてくるタキリさん。


 でも、ちょっと待ってほしい。


 ここは、本当に行く価値のある温泉なんだから!


 そして、そんな私の言葉に間違いはなく、2人でやってきた竜宮旅館の日帰り入浴は、文句のつけようのない素晴らしいものだった。


 洞窟のような空間に作られた露天風呂からは、海の景色が一望できる。


 忘帰窟とはよく言ったもので、本当にずっと浸かっていたくなる温泉だった。


 実際、最初こそ散々文句を言っていたタキリさんも、この温泉の魅力にすっかり取り憑かれてしまって、私たちは朝の入浴時間ギリギリまで、時間を忘れて温泉を楽しむことができた。


 ちなみに、この旅館。港の桟橋から旅館まで亀をデザインした遊覧船で送迎をしてくれるんだよね。


 こういった浦島太郎のお話を意識したちょっとした演出も面白くて、これなら日帰り入浴料2500円というのも納得できる。


 忘帰窟以外の温泉にも入浴できるし、朝の時間帯での入浴は掃除の関係であまり余裕がなく……。


 だからこそ、日帰り入浴の他のお客もいないし、温泉を利用する宿泊客の数もとても少なかったのだ。


 おかげで、下界のことなど忘れて、のんびり気分で温泉を堪能することができたってわけ。



「さて、温泉にも入って英気を養ったし、それでは次の熊野三山を目指しますか」


「ほんと、リョウコちゃんになってもマイペースなのは変わらないねぇ……」



 言葉とは裏腹に、お肌を艶々させたタキリさんが、たいへん満足そうに見えるのは気のせいではないと思う。



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