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アメリアの元世界転移旅 〜熊野古道編(6)

 すっかり海の温泉を満喫した私たちは、紀伊勝浦駅からバスに乗って新宮市を目指した。


 今日の予定は熊野速玉大社と神倉神社。


 八咫烏のお告げも気になるし、まずは熊野速玉大社に行ってみるか……。


 そう思ってたんだけどね。


 バスの席から見上げた山の中腹には写真で見た神倉神社が!


 そして、次のバス停はちょうど神倉神社前。


 どうせ新宮駅に着いてから熊野速玉大社に行って、そのあと神倉神社にも行く予定だったのだ。


 だったら、先にこちらに行っちゃえ!



 ピンポーン、次、止まります。



 こうして私たちは、熊野速玉大社よりも先に神倉神社に挑むことになった。


 そう、()()……。



「……なに、これ?」



 神倉神社へと向かう参道の階段を見上げ、タキリさんがそう呟く。


 うん、気持ちはわかるよ。


 こんなの、全然階段じゃないよね!


 いや、確かに聞いてはいたんだよ。


 神倉神社の参道の階段は急勾配で、年に一度そこを男どもが駆け降りるお祭りでは、怪我人も出る程だって……。


 でもさぁ、逆に集団で駆け降りれる程度の階段なんだから、きついのはきついかもしれないけど、ただそれだけだよね?


 と、ところがである。


 ふもとの鳥居から見上げる石積みの階段は、もう階段なんてものではなくて……。


 こんなの、ちょっと足を滑らせただけで滑落死するから!


 こんなの高難度の登山じゃん!


 私の中で、前世の旅で登ったウルルでの記憶がフィードバックされる。


 あの時も、下から見える頂上(下から見た時はそこが頂上だと思っていた)までは、ちゃんとチェーンも張られてるし、人が死ぬ事故が起きているとか言ったって、所詮はたかが知れてるって思ってたんだよね。


 でも、実際に登ってみると、下から見えていた場所は頂上ではなくて……。


 もうちょっと、もう一山越えたらって登り続けた結果、私はロープなどの安全対策もなく、ただ順路に白線が引いてあるだけの絶壁で、恐怖に足を竦ませる羽目に陥ったのだ。


 あの頃は若かったって、いや、逆に今の方が若い……のか?


 とにかく、他にも何度も痛い目を見た結果、私は無謀な挑戦を控える知恵を身につけた。



「……これは、無理だね」



 最初の数十段を登ったところで石段の下を見つめ、私はそう結論を出したよ。



「賛成。こんなとこ、足が震えてとても安全には登れないよ」



 そう言って、タキリさんも賛成してくれる。



「それにしても、さすがヒノモトの人たちは違うよね。

 あんなお年寄りや女の人がさぁ、こんな危険な場所を平気な顔して登っていくんだよ。

 こんなの私たちの世界じゃ考えられないよ」



 そう、元々私は高いところが苦手だからってのもあるんだけど……。


 あっちの世界基準で考えると、こんな場所を人が無防備に登っていくのって考えられないことなんだよね。


 元々あっちの世界には山自体が少ないってのもあるんだけど、崖とか急斜面の山とかって大抵空を飛ぶ魔物の縄張りになっているから……。


 そんな満足に戦えないような危険な場所に、敢えて挑もうなんて酔狂な人間はいないんだよ。


 もちろん、そんな場所に神殿だのお城だのを建てようとする人もいないし、そもそも人は近づかない。


 まぁ、そんなわけで、今回みたいなちょっと足を踏み外すだけで死に繋がるような場所なんて、もう恐怖以外のなにものでもないってわけ。



「でも、どうしようか……」



 正直、あの階段は無理!


 ネット情報によると、この石段は六百段くらいあるらしいし、その1割も登らず根を上げた私たちに、とても踏破できるとは思えない。


 でも、そんな私たちの元に耳寄りな情報がもたらされる。



「この階段は急だから……。でも本当に急なのは途中のお社までで、そこから先はそうでもないのよ。

 一応、鳥居のすぐ横に山道になってる迂回路もあるんだけどねぇ。

 でも、前に使った時は苔で足を滑らせちゃって。

 それに、そこ。マムシ注意ってあるでしょ? だから、私は使わないのよ」



 途中まで(五十段くらい?)登ったところでギブアップし、そこから座り込んだ姿勢で下山を試みる私たちに、横を元気に登っていくおばさんがそんなことを教えてくれる。



『『マジか!?』』



 こうして一時は断念した神倉神社への参拝を私たちは無事達成したのでした。


 えっ? マムシ?


 そんなもの、魔物に比べればかわいいいものですよ。


 いや、別に出なかったけどね。


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