アメリアの元世界転移旅 〜熊野古道編(1)
この話、一応本編315話エピローグの続きになります。
帝国の女帝様からの情報で遺跡調査に出かけたアメリアとタキリの、その後のお話。
予定では週2くらいのペースで最後まで投稿できると思います。
アメリアちゃんと一緒に旅行気分を味わってもらえるとうれしいです。
「うわぁ、はや! ねぇ、ねぇ、アメリアちゃん、この列車速すぎない!?
一体どういう仕組みなの!? 魔力じゃないんだよねぇ?
デンキ? マジ!? 魔法はほんとに使ってないの?」
さっきから興奮しっぱなしのタキリさんに辟易してくる。
「ねぇ、タキリさん。もうちょっと落ち着いてくれる?
これじゃあ、全然旅を楽しめないよ」
「だってぇ……」
「だってじゃない! 公共の場所で騒がない。これ、あっちの世界でも常識だったよねぇ?」
「うっ、ごめんなさい……」
ちょっとキツめに注意して、やっとタキリさんが大人しくなったところで、私は車窓を流れる風景を眺めながら、ここ数日のことを思い返す。
…………
「う〜ん、これはいわゆる“ゲート”ってやつでは?」
「げぇと? なにそれ? アメリアちゃん、これ、知ってるの?」
それは、タキリさんと二人でやって来た先史文明の遺跡で発見した門のような物で……。
ただ、門って言ってもそんなに大きな物じゃなくて、せいぜい部屋のドアくらいのもの。
それが、遺跡内の広い空間の真ん中にぽつんと鎮座している。
門だけが……。
そして、門の中心にはぐるぐる回る光の渦みたいのがあって、それはまるで小さなブラックホールのようにも見える。
これって、どう見ても転送ゲートじゃない?
前世のアニメやゲームで見た定番の転送ゲートそのままで……。
さぁ、どうしよう……。
潜る? 潜らない?
迂闊に潜ったら、どこに飛ばされるかわかったものじゃないよね。
一旦潜ったら、またここに戻って来れる保証もないし……。
それで、転送先が人の住めないようなとんでもない場所だったりしたら?
いや、そもそもの話、これは実は転送ゲートなんかじゃなくて、不用物なんかを投棄するための小型ブラックホールとかって可能性も……。
入った瞬間、私はひき肉にされてしまったりとか……。
そんな私の予想をタキリさんにも伝えて、私たち2人は未知のゲートを見つめながら暫し沈黙した。
どのくらい考えていたのか……。
この世界に赤ん坊として転生して、学校を作って街を作って、遂には国まで作ってしまった。
初めは魔力ゼロの自分がなんとかこの世界で生き残るために、ただ必死に頑張っていた。
私の立場がある程度安定したあとは、この世界を自由に旅することを目標にやっぱり頑張った。
そして、ようやくこの世界を自由に旅できるようになって、実際に自由に旅をして、世界中を回って……。
どうしよう? 既にこの世界を回り尽くしてしまった。
そもそも、この世界って前世の地球と比べて小さ過ぎるんだよ。
せいぜいオーストラリア大陸くらいしかない小さな大陸に、たった4つの……いや、今は5つか……の国しか存在しない。
そんな小さな世界なんて、あっという間に周れてしまう。
だからこそ、次は海の向こうを目指す!
そう考えていたんだけどね。
まぁ、そのためにはもっと長期遠洋航行に耐えうる船か、できれば飛行機の開発が必要かな、なんて思っていたんだけど……。
ここに来て、まさかの転移ゲートらしきものが発見されるとは!?
これはもう……。
「うん、ちょっと様子を見てくるから、タキリさんはここで待ってて」
だって、目の前に未知の世界へと繋がる(かもしれない)ゲートがあるんだよ?
登山家が目の前の山に登ろうとするように、旅人が未知の世界への扉を前に、飛び込まないなんて選択肢はないでしょう。
いや、もう少し慎重にって?
で、次に来た時にこのゲートが閉じていたらどうするのさ?
実際、私が学園都市で受け取ったこの遺跡の報告書には、こんなゲートの存在は記載されていなかった。
それって、最初にこの遺跡が発見された時には、このゲートは稼働していなかったってことでは?
次に来た時には既にゲートは沈黙していて、研究したらこのゲートは星の配列が云々カンヌンで、次に使えるのは300年後です、とかになってるかもしれない。
次があるなんて保証はどこにもないのだ。
一期一会。
チャンスの女神に後ろ髪はない!
だから、私は行く!
そう決意を込めて、タキリさんの方を見ると……。
「はぁ? なに言ってるの?」
そこには、不満を全身で伝えるタキリさんがいた。
まぁ、確かに、仮にも国家元首なんてやってる私が、安全も定かでないゲートを潜ろうなんて無責任だと思うよ。
でも、私の旅人の本能がここは進めって言ってるんだよ!
そう必死に言い訳する私にタキリさんは……。
「そうじゃなくて、私だけ留守番なんて嫌に決まってるでしょう?
私もアメリアちゃんと一緒に行くに決まってるし!」
「いや、でも、説明したよね? 最悪、死んじゃうかもしれないんだよ?」
「大丈夫! こんな不思議な魔道具? を試して死ぬことになっても、私は後悔しないから!
それに、こんなすごいゲートがあるなら、その先にはもっとすごいものがあるかもしれないでしょ?
研究者として、こんなチャンスは見逃せないよ!」
……これはダメだ。
ジャンルこそ旅と魔道具開発で違えど、その行動原理は私と全く変わらないタキリさんが止まるわけがない。
「じゃあ、行きますか」
私はタキリさんの手を取ると、握った手を離さないように注意しつつ、目の前のゲートの光の中へと飛び込んでいった。




