トラウマとの遭遇
「チルスと別れてから暇になるが、どうする?闘技場でも覗いてみるか?」
ザウリスの提案を断られるだろうと思っていたが案外賛同の意見があった、金級の試合なら技を盗めるかも知れないという良い案だが少し卑怯な考えだった。流石ルーダだ、ぬかりもない。
—いやほんとに。
闘技場の方を歩いていると色んな人に話しかけられた。
「どうやったら強くなるのー?教えて!教えて!」
「是非ともウチのギルドに入らないか?」
「あ!ザウリスさんだ!闘技場参加するんですか?」
子供から大人まで押し掛けられ困惑してしまった。
「わらわらと邪魔くさいぞ、雑魚共が」
知らぬ声が後ろから聞こえた。その声でサーニャがビクッとしていたのは気のせいだろうか。振り向くとそこには三人パーティーが居た。
「おや、不正していると噂のザウリス…とやらか?、そこは道なんだ、退いてくれないか?」
本来なら売られた喧嘩を買うべきなのだが、ルーダの方を見てみると首を振っていた。これは抑えるべきだと判断した。だが向こうは更に追い討ちを掛けた。
「む?サーニャじゃないか、匿ってもらったのですね、なんと可哀想なパーティーなのでしょうか、ただの無個性な雑魚を連れての旅はさぞ辛かったのでしょう」
オーバーリアクションで語ったそいつを許せなかった。こいつがサーニャを捨てた張本人なのだ。サーニャを見ると震えていた。
「お前さん、随分と言うじゃねえか。」
ルーダが身を乗り出した、姐御も相当お怒りのようだった。
「おや、気に障ってしまったなら申し訳ないお嬢様」
「売られた喧嘩を買ってやんよ、かかって来い。」
ルーダは拳を握りしめポーズを取った。
「おやおや、女を痛めつける趣味は無いのですがねえ、これも教育という事で」
そう言うと殴り掛かってきたがルーダは軽く避け、足払いをしクズを床に叩きつけ顔を殴った。
「お、お前!良くもこのわ、私を」
鼻血を出していた。
「さっさと帰んな坊や、これ以上うちのメンバーにちょっかい出したらタダじゃおかねえぞ。」
ドスの効かせた声で"クズ"を追い返した。その姿を見て、歓声が上がった。
「ごめんよザウリス、本来ならお前がやるべきだった所を私が横取りしちゃってよ。」
ルーダは照れていた。
「いや、良いですよ、サーニャの仇は取ったんですから」
サーニャを見ると震えが収まっていた。
—これでいいんだ。
闘技場を見終り、チルスと合流した。
「君らまた問題を起こしたそうだな?こっちの会議の方まで噂が広がったぞ。」
今回ばかりは自分らから吹っ掛けていないし、なんなら向こうが逆に喧嘩を売ったんだからセーフだろう、うん。悪くない。
「まあ、今回は目撃者が多かったから向こうが悪いってなったが、気を付けてくれな。あと、また俺は出向くからここに滞在するといい。一日だけなら宿代を出そう。」
本当にチルスには頭が上がらない、何から何までほぼ全て助けてもらってる気がする。
「いいえ、今回は自分が出しますよ。」
ウルスは引かなかった。
「いいや、俺が出す、連れてきたのは俺だしな。」
凄く後輩思いな人だ。
「ありがとうございます。そう言えば、何処へ出向くのです?」
「今年の魔軍進行を偵察しに行くんだ、俺がリーダーを務めてるからな。」
チルスは宝石級の顔で、魔軍進行の指揮官をしている。そんな方と旅をして成長しない訳がない。本当に貴重な体験だった。
「おっ、チルスそこに居たか。」
マールが手を振りながら来た、隣の男性は見た事が無かった。
「マールとデオル、一体どうしたんだ?」
「作戦会議があるので呼びに来ました。」
「分かった、すぐ行くと伝えてくれ」
マールは連絡を取り、すぐ行くという事を伝えていた。
「すまないザウリス達、用事が出来てしまった。」
チルスは組合の方へ向かって走っていった。
「そういや、デオルとは初めてだったか?紹介しよう、私の一番弟子のデオルだ。」
「デオルです、初めまして。」
「初めまして、二人は同じ部隊なんですか?」
「そうです、自分は副隊長を務めてます。」「頼れる副隊長なんだ。」
マールが笑顔で答えていた、その横に居たデオルは照れていた。
「やめて下さいマールさん、貴女には及びませんよ。」
「ハハッそうか!それじゃあザウリス殿、失礼する。」
彼女達はそう言うと戻っていった。
—聖都は街として成り立っている、とてもいい街だった。




