母
ザウリスが待ち合わせに遅れ、走っていた。「くっそお、寝過ごした。」走っていると人にぶつかりかけた。
「おっと、すみません。」お姉さんはニコッとした。「あらら、いいのよ。元気ねえ。」優しい笑顔だった。「急ぎなの?」「はい、寝過ごしまして。」「フフッ若いわねえ。」照れてしまった。いや、優し過ぎて表情がふわっとしてしまう。
彼女はそういう全てを包み込むような優しさを持っていて、喋り方から何まで上品だ。護衛も居ないのに一人で居るのが逆に変だ。
「護衛とか居ないんですか?」「フフッ、そんな遠出じゃないからいいって断ったの。貴方優しいわね。私の護衛にならない?値段は任せるわ。」「申し訳ないですが、お断りします。冒険者だし、旅に出なきゃいけないので。」
彼女の目が変わった、欲しがるような目になった。物欲なのだろうか。「いいえ、貴方は私の護衛、いえ私専用の物になるの。」肩を掴まれ、力が抜けていった。何かの魔法だろうか?耐えられず、気絶してしまった。
「ザウリスさん、遅いですね。」「寝過ごしたかあ?ったくあいつは。」「確かに遅過ぎますね、何かあったんでしょうか?」「何かあったのでしょうか、心配ですね。」三人はザウリスを待っていたが、一向に来なかった。
「宿に行ってみるか、寝てたら叩き起こしに行こう。」宿へ向かい、宿の主人に聞いてみた。「えええ!?1時間前に走って出ていったって!?」「その話は本当かい?」主人は答えた。「ああ、寝過ごしたって言って走って行ったよ。」三人は表へ出て、街中を探したが、見つからなかった。
「あいつ、攫われたか。いや攫われるようなタマじゃないだろうから何かあったんだな。」「何かしらの魔法で攫われたのかも知れません、目的は分かりませんが、住人から聞いてみましょう。」ウールスの提案に賛成し、聞き回った結果、ほんの少しだが情報を入手出来た。屈強な男や幼い子供を連れている商人が居ると。
その商人を調べてみると黒い秘密がドンドンと出てきた。奴隷商人で自分を"母"と思わせる催眠魔法を掛けて、それを育て売り飛ばす極悪非道な事をしている情報を入手した。「これが本当なら、あいつヤバいんじゃないか?」「そうですね、母が居ない彼がその催眠魔法を受けたら二度と自分達と旅が出来なくなるでしょう。」「見つけましょう!これからの為に!」三人は商人になりすまして、その女のアジトである建物に侵入した。




