表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閲覧禁止フォルダ  作者: 影野 紡


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/14

第八話 一対の絵 [2]

変態した白蛇は人々に紛れ、獲物を探していた。


血を求め、夜の街を彷徨い歩く。


酔った男がフラフラと近づき、


「ねえ、俺と付き合わない?」


赤い顔をして、酒臭い息を吐きながら言った。


白蛇の目が一瞬光った。

が、男はそれに気づかない。


白蛇は無言で暗い路地裏に誘い込んだ。


男を壁に押し付け、かっと牙を向いた。


逃げようとした時には、すでに男の喉に牙が食い込んでいた。


生暖かい血が男の喉から流れ落ち、白いシャツを染めていく。


白蛇は乾いた喉を血で潤すかのように、ゴクゴクと飲みこんだ。


血を吸い終わると、さっきまで金色に光っていた瞳は落ち着きを取り戻し、黒い細長の目に変わっていった。


「腹が減る……もっと……」


一人、また一人と血を吸うごとに、白蛇の身体は人間の女性に近づいていく。


チョロチョロと顔を出していた二股の舌。

鱗の残っていた手足の皮膚。


それらは、完璧に人間の女性へと変わっていた。


真っ黒な長い髪。

細長の目。

物憂げな唇。

しなやかな腰つき。

白く透き通った肌。


もうすぐ完全体になろうとしていた。


だが、数日前から視線を感じ、青い影を見たような気がしていた。


物音がして、嫌な気配を感じた。


振り返ると、そこには僧侶に姿を変えた青蛇がいた。


白蛇は青蛇に襲い掛かろうとしたが、僧侶がそれを許さない。


すぐに弾き返されてしまった。


――もうすぐ完全体になれるのに、こんなところで邪魔が入るなんて……。今は争っている時じゃない。


白蛇は蛇の姿へ変わると、物凄い勢いで逃げていく。


それを青蛇が追いかけていった。


白蛇は人気のない港へ誘導した。


たどり着いた二人は、命をかけて最後の戦いに挑む。


「私は命懸けであなたを愛した。それなのに、あなたは何も答えてくれない。泣き疲れて身を投げた私を、天は白蛇に変え、あなたの元に送った。そんな私をカゴに閉じ込め、自由を奪った。今、自由になった私は、すべてを支配する怪物になってやる」


「私は僧侶、仏に仕える身。娶ることはできない。あなたの愛には答えられない。だから天に祈り、青蛇になってあなたを見守った。あなたの思いを知った天が、私たちを一対の絵にしたのだ。どうかそんな考えは捨てて、絵に戻ろう」


白蛇は最後まで聞かず、襲い掛かってきた。


僧侶は天に向かって祈り始めた。


空は暗くなり、もくもくと黒雲が覆い、稲光が走る。


蛇たちを連れ去りそうな勢いで、海が波立ち始めた。


その時、一筋の稲妻が白蛇の身体を貫いた。


白蛇はのたうち回り、やがて動かなくなった。


僧侶は白蛇を抱きしめ涙した。


「すまない。こうするしかなかった。あなたを怪物にしてしまったのは、愛してると言えなかった私だ。許してくれ……」


激しかった嵐が嘘のように静まる。


夜明けの光の中、僧侶は白蛇を抱きしめたまま立ち尽くした。


やがて二人の姿は淡い光に包まれていく。


天は二人をかわいそうに思い、一枚の絵にしたためた。


大木には、白蛇と青蛇が静かに絡み合っていた。


まるで最初から、そこにいたかのように。


後にこの絵は、幸福をもたらすと伝えられている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ