表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HUGスペース物語  作者: さゆまる
妄想編
9/26

第9話:現実という名の壁、理想という名の鍵

屋上で夜風に吹かれていたのは、黒いコートを着た青年、レンだった。彼はかつて、理想を追って挫折した元システムエンジニアであり、今は現実の厳しさを誰よりも知る「観測者」だった。

「光の回廊で攻撃をいなす……。アイデアは悪くない。だが、そんなもので現実の『お金』や『法律』、そして『偏見』という壁が壊せると思っているのか?」

レンの言葉は鋭く、少女の胸に突き刺さる。

少女は、自分がまだ茨城の小さな部屋で、物語を紡ぐことしかできていない現実を思い出した。東京への距離、準備のための内職、周囲の理解……。現実は、メタバースのように指先一つで色を変えられるほど甘くはない。

「……分かってる。今はまだ、私には何もない。この場所だって、私の頭の中にある『物語』でしかないのかもしれない」

少女は一歩、レンの方へ歩み寄った。

「でも、物語がなきゃ、設計図は書けない。設計図がなきゃ、ビルは建たない。私は今、一番大事な『一番最初のレンガ』を積んでいる最中なの」

少女の瞳には、迷いながらも消えない強い光があった。

レンは鼻で笑ったが、その目はどこか懐かしむように少女を見ていた。

「面白い。なら、そのレンガが本物かどうか、俺が試してやろう。……現実の壁を壊すには、ただの優しさじゃない、『技術』と『戦略』が必要だ」

少女は気づく。レンのような「現実を知る者」の厳しさこそが、自分の夢をただの妄想で終わらせないための、最後の一色になるのだと。

レンは一枚の古い、けれど緻密に書かれた「未完成の設計図」を少女に差し出した。

「これは、俺がかつて諦めた『理想のシェルター』のデータだ。君の物語と組み合わせれば、このビルはもっと強固なものになる」

少女がそのデータに触れた瞬間、HUGスペースの空気が一変した。

これまでのパステルカラーの光に、銀色の「構造体」が編み込まれていく。

「さゆまる、準備はいいか? 明日は、このビルの『核心部』……つまり、君自身の過去と未来が交差するフロアを解放する」

カイトの言葉に、少女は深く頷いた。

理想を現実に変えるための、本当の戦いがここから始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ